クロマグロの漁獲規制が国際的に強まるなか、卵からの完全養殖のクロマグロが家庭の食卓にまで広がりそうだ。近畿大学(大阪府東大阪市)と豊田通商(名古屋市)は7月16日、共同でクロマグロ稚魚の生産事業や海外での事業化に本格的に進出する覚書を締結した。

図1. クロマグロ完全養殖の事業領域(提供:近畿大学、豊田通商)

近畿大学水産研究所(和歌山県白浜町)は2002年に世界で初めて、卵から成魚までクロマグロを完全養殖することに成功し、「近大マグロ」として世に出して、生産量を少しずつ伸ばしてきた。今回の覚書で、近畿大のクロマグロ稚魚の年間生産量は現在の約40万匹から、2020年に合計70~80万匹まで拡大する。この稚魚生産量はクロマグロの国内消費量の1割を賄うことに相当する。養殖クロマグロの量産化では世界初の産学連携となる。 豊田通商は近畿大と協力して現在、長崎県五島市のいけすで、体長5cmの稚魚から体長約30cmまで育てる中間育成を実施している。しかし、近畿大の養殖拠点がある和歌山県から、東シナ海の五島市まで稚魚を長距離輸送する間に、約半数が死んでいた。

図2. 長崎県五島市のロケーション(提供:近畿大学、豊田通商)

図3. クロマグロ稚魚生産の流れ(提供:近畿大学、豊田通商)

今回、豊田通商は五島市に新しい子会社「ツナドリーム五島種苗センター」を設立した。近畿大が専門スタッフを派遣して、量産技術を指導する。現地で受精卵から稚魚を育てる事業を新たに行って、生育過程での完全養殖クロマグロの生存率を上げ、養殖業者への安定的な出荷を実現する。

近畿大は引き続き研究・技術開発、豊田通商は量産化の役割を担い、クロマグロの完全養殖事業を推進する。また、豊田通商は、近畿大の養殖技術を生かし、海外での事業化も検討していることも明らかにした。