富士通は4月14日、元社長 野副州旦氏の社長辞任の経緯に関する記者説明会を開催。当時「病気」としていた同氏の辞任理由が結果的に株主や投資家、東証に対して迷惑をかける事態となったことについて間塚会長が謝罪するとともに、野副氏が辞任に至った背景に「グループ11万人の従業員を預かる企業のトップとしてのリスク感覚の欠如」があったことを明らかにした。

富士通 代表取締役会長 間塚道義氏

今回の記者会見は、野副氏が横浜地方裁判所川崎支部に申し立てていた「取締役への地位保全の仮処分」について、野副氏側が一方的に取り下げたことを受けて開催されたもの。

野副氏は4月7日に都内で株主代表訴訟などに関する記者会見を開き、「取締役への復帰は求めていない」「外部調査委員会を設置して辞任の経緯を明らかにしたい」と主張している。しかしその後、同氏が求めていた仮処分手続きが結審し、4月6日(つまり、同氏の記者会見の前日)に同氏が裁判を取り下げていたことが判明した。

同社は「野副氏の取り下げについては非常に疑問を感じている」とし、客観性・公平性が担保された"究極の外部調査委員会"の結審後の取り下げに対して遺憾の意を表明。その上で、同氏が社長を辞任することになった理由を説明した。

「病気」とされていた辞任理由については、「当時野副氏が体調を崩していて通院していたことは事実であり、書面も残されている」(同社)としてあらためて事実であることを示し、辞任に至った大きな要因として「反社会的勢力との関係が疑われるファンドとの付き合いを、度重なる注意にもかかわらず継続したこと」があったと説明した。

同社は当時のこのような状況を受けて、「社長としての適格」「(野副氏自身が)"怪しげ"と語ったファンドとの付き合い」「風評による第三者の企業や個人への被害」などを考慮し、「グループで11万人の従業員(家族を含めるとその何倍もの人々)を預かる企業のトップとしては著しくリスクへの感覚が欠如していた」と判断。「万が一(当該ファンドの)風評・評価が事実であった場合に生じるリスクが極めて大きい」として役員全員で協議し「解職」も想定していたそうだが、最終的には「同氏の名誉と当社の風評」を考慮して、野副氏自身が辞任を決意したとしている。

なお野副氏は3月30日に、間塚取締役会長、秋草相談役の2名を被告として、株主代表訴訟を前提とした提訴請求を行っている。この提訴における争点は「野副氏の社長辞任によって実現できなくなったニフティの売却による利益機会の損失」だが、この点について同社は「提訴請求の内容は把握しており、法律に従って監査役会で対応している」としている。

また、ニフティの売却について同社は「社内でも経営会議や取締役会などで機関決定したことはなく、ニフティの売却が決定間近であるとの認識はまったくなかった」という見解を示している。また、間塚会長は「この件に関する野副氏とのやりとりについては録音テープにも記録が残っているため、(今回の提訴請求については)非常に驚いている」と語り、今後の状況によっては逆提訴を行うことも視野に入れているとの考えを示した。