日立製作所は7月28日、同社の上場連結子会社5社を完全子会社化することを発表した。

日立製作所 執行役副社長 三好崇司氏

対象となるのは、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービス、日立プラントテクノロジー、日立マクセルの5社。各社の株式は、公開買付けにより取得する予定で、買付け金額は5社合計で2822億400万円に上る。

買付け期間はいずれも2009年8月20日~2009年10月8日まで。2009年10月16日より決済が開始される。買収資金については、「当面は構造改革向けのコミットメントラインにより捻出できる」(日立製作所 執行役副社長 三好崇司氏)としている。

各社の1株当たりの買付け価格、買付け予定株数、買付け合計金額は次のとおり。

企業名 1株当たりの買付け価格 買付け予定株数 買付け合計金額
日立情報システムズ 2900円 2090万5832株 606億2700万円
日立ソフトウェアエンジニアリング 2650円 2968万5236株 786億6600万円
日立システムアンドサービス 2150円 1219万9822株 262億3000万円
日立プラントテクノロジー 610円 6312万1235株 385億400万円
日立マクセル 1740円 4492万9356株 781億7700万円

公開買付けが行われる5社の売上高、営業利益、日立製作所持株比率は以下のスライドのとおり。

5社の売上高、営業利益、日立製作所持株比率

今回の完全子会社化は、日立製作所の「社会イノベーション事業の強化」という方針の下に決断された。

日立製作所 執行役会長兼執行役社長 川村隆氏

日立製作所 執行役会長兼執行役社長の川村隆氏は、「昨今では、ライフサイクル全般をカバーする高付加価値なソリューションが求められるようになってきている。例えば、英国運輸省の高速鉄道車両の案件でも、車両の製造だけでなく、運用システムまでを含めたトータルな提案が必要とされていた」と説明。そのうえで、「そうした要望に応えられる組織を作りあげるべく、社会イノベーション事業の中核となる5社を完全子会社化してグループの総合力を向上させ、その力をグローバルに展開していく」と続けた。

上記5社のうち、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービスの3社は、情報通信システム事業の強化を目的として完全子会社化される。同分野の重点戦略としては、「グリーンデータセンタ事業」、「アウトソーシング、クラウドコンピューティング関連事業」、「グローバル事業拡大」、「システムインテグレーション体制/提案力強化」、「組み込みソフト等の開発体制強化」といった点が挙げられた。

情報通信システム事業の強化

また、日立プラントテクノロジーは、社会インフラ事業で貢献が見込まれている。同事業に関しては、「新興国では必要基盤の整備、先進国では高付加価値/低環境負荷な社会/産業インフラへのリノベーションという点で需要が見込まれている」(川村氏)と言い、「発電プラント」、「水循環関連機器/システム」、「データセンタ事業における省エネソリューション」、「交通システム事業」の4つが重点戦略として掲げられた。

社会インフラ事業の強化

そして、日立マクセルに関しては、リチウムイオン電池事業の強化が主要な目的とされている。川村氏は、リチウムイオン電池について、「モータ、インバータ、パワー半導体と並ぶ社会イノベーション事業の重要なキーデバイス」と説明。加えて、同社を含む日立グループのリチウムイオン電池は、「累計6億セルを出荷しているにもかかわらず、リコールゼロという実績を持つ」(川村氏)と言い、重点戦略としては、「グループ会社との連携強化による高信頼性リチウム電池関連事業の強化/差別化」、「他のキーデバイスとの一体化したソリューション提案力の強化」などが挙げられた。

リチウムイオン電池事業の強化

日立グループでは、社会イノベーション事業のグローバル展開を強化していく方針で、川村氏は「現在41%という海外売上の割合を近いうちに50%以上へ持っていきたい」と抱負を語った。