お国柄の違いといえばそれまでだが…監禁されたほうはたまったもんじゃない!?

フランス人の55%が「リストラした社長を監禁してもよい」と回答した調査結果がこのほど明らかになった。

この結果は、フランスの経済紙『Les Echos(レ・ゼコー)』がフランスの調査機関BVAと共同で行った世論調査によるもの。こうした調査が行われたのは、実はフランスでは、景気悪化による工場閉鎖に伴う解雇に抗議した労働者が、経営者幹部を監禁し譲歩を迫るという事件が今年3月以降、相次いでいることが背景にある。

フランス南西部の町、ポントン・シュール・ラドゥール(Pontonx-sur-l'Adour)では、3月12日から13日にかけて、ソニーの工場でSerge Foucher社長ら2人が労働組合に軟禁される騒ぎが起きた。同工場では1980年代からビデオテープを生産してきたが、2008年12月に翌2009年4月17日をもって閉鎖することを決定。事件のあったこの日は、社長らは従業員に対する説明のために工場へ向かったが、他の工場の閉鎖時よりも条件が悪いとして反発した組合員たちが、工場の入り口を封鎖し、条件交渉のために軟禁した。その他、これに続いて3月25日には米医薬品大手3Mの工場長、同月31日には米建設機械大手キャタピラー社の管理職、4月7日には英接着剤メーカーScapa社の幹部らが従業員に工場に監禁される事件が起きている。

フランスメディアでは、現在こうした企業の経営者幹部が監禁される行為について"kidnapping"をもじった"bossnapping"と称して報じている。レ・ゼコー紙による今回の調査では、これを「容認すべきではない」と考える人は39%に留まり、3人に2人は「罰するべきではない」とも回答しており、大多数がbossnappingを正当化していることになる。また、ソニー・フランスでは「このような事態は外国では驚くべきことなのかもしれないが、フランスではそれほど珍しいことではない」と述べ、告訴しない方針を表明している。

日本ではバブル崩壊以降"ストライキ"という言葉すらほとんど聞かれなくなり、労使間の関係は協調姿勢となり、どちらかと言えば被雇用者が泣き寝入りすることが多くなった。それに対し、民間だけでなく公共機関でも年中ストやデモが繰り返されるフランスでは、世界同時恐慌の余波が犯罪行為をも容認する世論へと国民を突き動かし、日本人とは対称的な国民気質や労働者意識の違いが改めて窺い知れる。

もっとも国家主席であるサルコジ大統領は「フランスは法治国家だ。このような行為に対しては強く断罪していく」と宣言し、強硬姿勢を崩さない構えを示している。