そもそも「封水」って何?
便器の中央にあるくぼみに溜まっている水のことを「封水」と呼びます。その名の通り、悪臭や害虫の侵入を封じる水のこと。特にトイレ特有のアンモニア臭は水に溶けやすいため、排水管から上がってくる悪臭をせき止めるのに、とても重要な役割を果たしています。
何かの拍子に封水が切れてしまうと、悪臭をせき止めるフィルターがなくなってしまう状態に。強烈な臭いがトイレに充満しますから、そのありがたみを痛感することでしょう。
ただ、排水口をしっかり塞ぐ程度の水が残っていれば、水位が下がっていても臭いや害虫に困ることはないため、つい放置してしまいがち。ところが、この現象が起こる場合、放置すると被害が大きくなる可能性も潜んでいます。
トイレの水位が下がるのはなぜ?
トイレの水位が下がる原因は、大きく分けて6種類あります。
- 水が蒸発した
- 自宅周辺の「誘引現象」
- 「流せるもの」によるトイレのつまり
- 「流せないもの」によるトイレのつまり
- トイレタンクから流入する水が減った
- 便器の破損による漏水
トイレの「つまり」が原因でも水位が下がる?
トイレがつまった場合、便器の水位が急上昇して溢れそうになる状況を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。確かに水位が上がることもありますが、「毛細管現象」を起こすことによって、水位が下がることもあります。
「毛細管現象」とは?
便器の奥の排水路で、トイレットペーパーや排泄物などがつまっている場合、特に紙類が封水を吸い取って、その排水管に流してしまっている可能性があります。
水を入れたコップの縁に紙や布を引っ掛けておくと、コップの外に水がポタポタと流れ出てしまうのと同じ現象です。
「毛細管現象」が起こっている場合、何がつまっているかを探ることで、自分で対処できるのか、何も触らずプロを呼ぶべきなのかを見極めます。
ではまずは、自分でもう一度水を流せば復旧できるケースから見ていきましょう。
長期間トイレを使用せず水が蒸発した
もし、長期間の出張や旅行から帰宅したばかりで、数ヶ月も使用しなかったトイレの水位が下がっていたら、封水が蒸発してしまっただけの可能性が高いです。
家中に悪臭が漂っている場合もありますが、水を流せば再び便器のくぼみが封水で満たされて、すぐに解決するでしょう。
もし今後も長期間家を空ける予定があるなら、出かける前にコップ1杯程度の水を足しておくと良いですよ。
別荘などたまにしか使わない建物のトイレには、「封水蒸発防止剤」というアイテムを使うのもおすすめ。価格は3,000円前後ですが、悪臭に加えて害虫の侵入も防げますから、検討してみてくださいね。
台風が来るとトイレが臭くなる?
台風が来るとトイレが臭くなることはありませんか?実はこれも、封水が関係しています。
台風などの豪雨に見舞われた際、トイレやその配管から「ポコポコ」「ゴボゴボ」「コポコポ」といった音がするのを聞いたことはないでしょうか。
下水管に大量の水が流れ込むと、空気が逆流し、押し上げられることがあります。
それがトイレまで勢いよく到達し、アンモニア臭が封水に溶ける間も無く通過してしまうと、室内に悪臭が漂うことになるのです。
このケースは、空気が押し込まれて逆流する力が強いため、戸建てやアパート、高層マンションなど、建物の種類を問わず、発生する可能性は十分に考えられます。
もし、荒天になると毎回、トイレの悪臭に悩まされているなら、トイレのフタを閉めておくだけでも臭いは軽減されるでしょう。その上で、トイレ内に消臭剤を置いておくとベストです。
集合住宅の場合は自宅以外の「誘引現象」が原因かも
自宅のトイレが不調になったら、そのトイレに原因があると考えがち。ですが、アパートやマンションなどの集合住宅に住んでいる場合、一概にそうとも言い切れません。
それは「誘引現象」が原因の場合。これは、集合住宅の排水管に勢いよく大量の水が流れると、その勢いが圧力となり、排水管でつながっているほかの家の、トイレの水を吸い込んで流してしまう現象です。
例えば上の階に住んでいる人が、一度に大量の水を流した場合。また、まれに戸建て住宅でも、近所で行われている水道工事が原因で発生することもあります。
このケースは、頻繁に起こることではないので、通常通りトイレを使用しており、つまらせるなどの心当たりがない場合は、一度水を流して、水位が元に戻れば、心配する必要はないでしょう。
ただ、頻繁に誘引現象が起こるなら、建物内の排水管が汚れの蓄積で狭くなっている可能性が考えられます。この場合は個人では対応できないので、管理会社などに連絡し、相談してみてくださいね。
「流せるもの」によるトイレのつまりが原因の場合
さてここからは、少し知識が必要になりますが、自分で復旧を試みることが可能なケースを解説します。
トイレがつまるなどの不具合が起きた場合、「流せるもの」が原因の場合のみ、自分で対処することが可能。
「流せるもの」がつまると聞くと意外かもしれませんが、一番多いといわれるつまりの原因が、許容量を超えて一度に流してしまったトイレットペーパーなのです。
実は、どのトイレでも、一度に流せるトイレットペーパーの目安が決まっています。TOTOのトイレであれば、シングルで10mまで、ダブルなら5mまでが目安。
うっかり許容量を超えてしまうことは、さほど珍しいことではありません。
トイレタンクの水量は一般的に13L程度入るとされていますが、最近人気のタンクレスタイプだと4L程度しか入らない場合も。
タンクに溜められる水が少なければおのずと、一度に流せるトイレットペーパーの量も少なくなりますから、使っているトイレのタイプによっては、より気を付ける必要があります。
節水のしすぎに注意
つい多くのトイレットペーパーを使ってしまった場合、つまりの原因にならないようにするためには、しっかりとした水量で流し切ることが大切。
目の前の便器から排泄物が消え去れば、流れたと安心しがちですが、「屋外の下水管まで流し切る」ということが、トイレのつまりを予防する重要なポイントなのです。
しかも最近のトイレは節水仕様が基本。日常的に水量の使い分けをせず、「エコモード」や「小」ばかりを使ってきた場合は、排泄物が流れ切らないまま、排水管に蓄積している可能性があります。
また、新しいタイプのトイレで、タンクにペットボトルなどを入れて節水している場合も、すぐにやめることをおすすめします。
節水を優先しすぎると、水圧不足でつまりやすい状況をつくってしまいますので、注意してください。
トイレに「流せる製品」が原因の場合もあり
最近は、トイレに流せる製品のバリエーションも増えてきました。おしりふきや掃除シート、生理用品やペットのトイレ砂などがありますが、これらはトイレットペーパーと同じような感覚で流すと、つまりの原因になることがあります。
トイレットペーパーはJIS規格などで、溶けやすさの基準が明確に定められ、紙の繊維が非常に水に解れやすくつくられている一方、これらの製品には共通の基準がありません。
そのため、屋外の下水管まで流し切るのに、トイレットペーパーよりも多くの水を必要とすると考えておいたほうが無難です。
特に吸水性のある生理用品(流せるタイプ)やペットのトイレ砂は、より多くの水量で流すことを心がけると良いでしょう。
また、細かい粒を大量に流すトイレ砂は、一度に流そうとせず、小分けにしたり固まりをほぐしたりする工夫をすることをおすすめします。
もし、日常的に「流せる製品」を節水モードで流していた覚えがあるなら、これらが排水管などで蓄積し、ついにつまってしまった可能性が考えられます。
「流せるもの」でつまったトイレの対処法
トイレのつまりが、これらの「流せるもの」であることが明確な場合は、自分で対処できる方法があります。
下記の記事で具体的な方法を細かく解説していますから、参考にしてチャレンジしてみてくださいね。
嘔吐による吐瀉物(としゃぶつ)や食品を流した場合
本来、食品はトイレに「流せるもの」ではありませんが、体調不良による嘔吐なとは致し方のないものですし、1度トイレに流したからといって、すぐに重度のつまりを引き起こすことはないでしょう。
ただし、消化不良の大きな塊や、大量の油分が便器や排水路にこびりつくことによって、一時的に管が狭くなっている可能性があります。
この場合は、「流せるもの」と同様に、下記の記事にある対処法を試してみると良いでしょう。
トイレ掃除を長い間やっていなかったら「尿石」が原因かも
もし、トイレ掃除を一度もしたことがないなど、長期間、お手入れをしてこなかった場合は、尿に含まれるカルシウムなどの成分が、化学反応を起こすことによって石化した「尿石」の蓄積が原因の可能性も考えられます。
このケースは、本来白いはずの便器が黄色く変色していたり、アンモニア臭が漂っていたりすることが多いです。
ちなみに、トイレ特有のアンモニア臭は、この「尿石」から発生します。この黄ばみを放置しておくと、便器の奥の排水路やそのさきの排水管にもどんどん蓄積し、狭くなった菅に排泄物などがつまってしまうのです。
この場合、「尿石」に対応したお手入れ用の薬剤を使うことで、つまりが軽減されるかもしれません。蓄積具合が重症な場合は、市販されているプロ仕様のトイレ専用洗浄剤を使ってみても良いでしょう。
「尿石」の除去方法も、こちらの記事で詳しく解説していますから、参考にしてみてください。
「何も触らず」プロを呼ぶべきなのは?
ここからは、闇雲に触らず、早めにプロを呼んだほうが良い場合を解説していきます。
自分で対処できるのは、トイレに「流せるもの」が原因の場合のみと説明しましたが、それ以外のケースでは事態を悪化させ、余計な時間や費用を必要とする可能性が非常に高いのです。
「毛細管現象」は、前途のように「流せるもの」のほかにも、固形物などの本来トイレに「流せないもの」でも起こる場合があります。
原因が「流せるもの」なのか「流せないもの」なのかは、自分で対処できるかどうかの重要な判断基準になりますから、どちらが原因か慎重に見極めることをおすすめします。
「流せないもの」でトイレの水位が下がるワケ
例えば、掃除用のスポンジやカイロなど、変形しやすく水を吸いやすいものであれば、「流せるもの」と同じように「毛細管現象」で便器の水位がさがることがあります。
また、子どものプラスチック製のおもちゃなど、簡単には変形しにくく薬剤でも溶けないような「固形物」でも、つまる場所によっては水位が下がることがあります。
それは、便器の排水路を超えた先の「フランジ」と呼ばれる排水口(便器と排水管とのつなぎ目あたり)に、固形物がガッチリとはまって密着してしまった場合、本来便器に戻ってくるはずの水が排水管内の負圧に引っ張られ、戻らなくなることがあるのです。
ですから、「水位が下がっているから、流せるものが原因だ!」と決めつけず、「流せないもの」が便器に入り込んだ可能性がないか、よく検討することをおすすめします。
流せる製品以外は決してトイレに流さないことも大事
トイレットペーパーがないからと、ティッシュペーパーで代用した経験はありませんか?ティッシュペーパーは、一見薄くて水に溶けそうですが、トイレットペーパーとの大きな違いは繊維にあります。
水に触れると繊維がほぐれ、水に溶ける仕様になっているトイレットペーパーと違い、ティッシュペーパーは、水に触れてもある程度の強度を保つため、繊維がほぐれにくい仕様になっています。
そのため、トイレットペーパーと同じような使い方をすると、つまりの原因になり得ますから注意してください。何より流せる製品以外は、トイレに流さないようにすることを心がけることが大切です。
地震や子どものイタズラによる「落とし物」に注意
全く身に覚えがなかったのに、プロに依頼したら思いも寄らないものがトイレから出てきた、というケースがあります。
特に注意が必要なのが、トイレにインテリア小物をディスプレイしている場合や、小さな子どもがいる場合です。
地震の揺れで小物や消臭剤のキャップなどが、便器に落下したケースもありますし、知らないうちに、子どもがおもちゃやクレヨンをトイレに流していたということも珍しくはありません。
トイレがつまる原因に全く心当たりがなくても、これらの条件に当てはまる人は、「流せないもの」がつまっている可能性も考慮することをおすすめします。
「落とし物」が見えているなら慎重に引き上げて!
薬剤では解けない固形物は取り出すしか、トイレのつまりを解消する方法はありません。
落とした後にうっかり流していなければ、封水の中に固形物が見えていることもあるでしょう。その場合はしっかりと長手袋を装着し、落ち着いて慎重に引き上げてください。
手を入れたくないからと、道具を使いたくなる気持ちは分かりますが、実は手を使うのが一番確実。
道具を使ったばっかりに、さらに固形物を奥に押し込んでしまったり、手近にあった割り箸などを使ったら、箸もろとも排水路に入り込んでしまったりするケースが少なくありません。
そのせいで便器を取り外すなどの復旧作業が必要になることもありますから、注意してくださいね。
タンクの故障で水の流入量が減っている場合
どう考えても、便器より奥のつまりが原因とは考えられない場合、単純に便器に流れ込む水の量が減っている可能性が考えられます。まずはタンクの蓋を外して中を見てみましょう。
陶器製のトイレタンクは蓋も重いので、うっかり落として破損しないよう、慎重に扱ってくださいね。
また、蓋にある手洗い用の金具が、内部の部品とつながっているタイプのタンクもあります。この場合は、タンク内部にナットが付いているので、それを反時計回りに回して外してから、蓋を開けてください。
タンク内が見えたら、まず貯める水量の目安を示すウォーターライン、オーバーフロー管に刻印された「-WL-」の表示を探しましょう。これが見当たらない場合は、オーバーフロー管の先端から2〜3cm下に水位があれば正常です。
もし水位がそれよりも下にある場合は、排水量が足りていないかも。下記の手順で不具合がないか点検してみましょう。
1.異物が混入していないか確認する
タンクの蓋に手洗いが付いている場合、その穴から異物が混入して、タンク内の器具の邪魔をしているかもしれません。
まずは異物が混入していないかを確認しましょう。
2.排水口にあるゴムフロートをチェックする
タンクの排水口を塞いでいるはずのゴムフロート(フロートバルブ)がずれてしまっていないかを確認します。
地震などで強い衝撃が加わると、ゴムフロートがずれてタンク内に水を溜めておくことができず、便器に水が流れ続けていることもあります。
この場合は、手で所定の位置まで戻せば修復完了です。
長い間使っているトイレであれば、ゴムフロートのゴムが劣化し、栓の役割を果たしていない可能性もあるでしょう。
その場合は、市販の新品に交換すれば解決します。ホームセンターやネットなどで購入できます。
3.水位調整リングや浮き球で水位の調整も
2までのチェックで異常がない場合、そもそもの水位調整がうまくいっていないこともあります。
ボールタップの付け根に水位調整リングが付いているタイプであれば、水位を上げたい時はネジを右に、水位を下げたい時は左に回して調整してみましょう。
水位調整リングが付いていない場合は、ボールタップの先に付いている浮き球の位置で水位を調整します。浮き球を取り外し、浮き球が付いていたアームにカーブをつけて調整してみてください。
水位を上げたい時はアームの先端が上を向くように、水位を下げたい時は先端が下を向くように少しずつ曲げていきましょう。
また、浮き球の形がアームの付いた球体ではない場合、浮き球自体に付いているネジ部分を回して水位を調整するパターンもあります。
水位を上げたい場合は、浮き球を上から見て左回しに、水位を下げたい場合は右回しに回して調整してください。
これらの作業をする前には、必ずトイレの止水栓を閉め、先にレバーを引いてタンク内の水を排水しておくと進めやすいですよ。
タンクレスの場合は電子部品の故障かも
タンクレストイレの場合、前途のような部品は付いておらず、電子部品で水量を調整していますから、その部品の故障というケースも考えられます。
初期設定からリモコン操作で水量を増やすことができますが、それでも状況が変わらない場合は、プロの業者か各メーカーに相談してみてくださいね。
便器が破損して漏水している場合
つまる可能性もトイレタンクの故障もない場合、便器が破損し漏水を起こしている可能性が考えられます。
便器のひび割れや漏水は、なかなか気付かないことも珍しくありません。トイレマットが水を吸い込んでいて発見が遅れることもありますし、水漏れは前面に起こるとは限らず、便器の後ろの方で水溜りができていることも。
軽度なひび割れであれば、陶器の補修用ボンドで直せることもありますが、水漏れがひどい場合は迷わず便器の交換を手配しましょう。
漏水は集合住宅の場合、階下の部屋に迷惑をかける可能性もありますし、戸建て住宅でも、思ったより床下に水が漏れていて、建材を腐らせてしまったり、カビの発生源になってしまったりと、想定外の被害が出るケースも考えられます。
不安に感じたら、一度プロに見てもらうことも検討してみてください。
心当たりがないのに気付くと水位が下がっている場合
これまで解説してきた可能性を探ってみても、全く心当たりがないのに、気付くと封水の水位が下がっているという場合は、便器の奥の排水管や、戸建て住宅であればその先の汚水枡などで不具合がある可能性が考えられます。
集合住宅の場合は、漏水で階下の部屋に浸水する可能性もありますから、早めに業者にみてもらうと良いでしょう。
原因が分からない場合は業者の診断が頼りですから、ぼったくり業者の被害に遭わないよう、注意することも大切。
そちらについては下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
まとめ
また、原因が予想つかない場合は、闇雲に触らずプロの業者を頼った方が早く解決できるかもしれません。
業者に依頼してトイレのつまりを解消するなら、費用の目安は20,000円程度です。慎重に状況を見極めつつ、適切な対処法を選んでくださいね。
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