本連載では、ネットワーク構築に必須となるLANスイッチについて、動作や仕組みを解説しながら実際の設定例を示し、ネットワークを身近に感じていただける事を目的としています。第四回では、スパニングツリープロトコルの概要と基本的な動作について解説しています。

第三回までに、LANスイッチの概要や種類、VLAN(Virtual Local Area Network)等について解説しました。第四回の本項では、ループ対策や冗長化の基本とも言えるスパニングツリープロトコルについて、動作や仕組み、スマートスイッチでの設定方法等を解説します。

1. スパニングツリープロトコルとは?

LANスイッチをループ構成で接続すると、フレームが回り続けます。MACアドレステーブルにより余計なポートには流れないようになっていますが、宛先が全てというフレームもあります。このようなフレームは永遠に回り続けて減る事がないため、すぐに輻輳状態となって通信ができなくなります。

これを防ぐ1つの方法がスパニングツリープロトコルです。スパニングツリープロトコルはBPDU(Bridge Protocol Data Unit)というフレームをLANスイッチ間でやりとりし、優先度が一番小さいLANスイッチをルートブリッジに決定します。この優先度をブリッジIDと呼びます。その後、ルートブリッジからの距離に応じてフレームを送受信しないブロッキングポートを決めます。この距離を決めるのがパスコストです。

パスコストはLANスイッチの各ポートに設定し、LANスイッチを経由する度に設定したパスコストを加算してBPDUを送信し、ルートブリッジからの距離を判断します。この加算した距離はルートパスコストと呼ばれます。ルートブリッジ以外のLANスイッチ間の接続では、ルートパスコストが大きいLANスイッチ側がブロッキングポートになるため、フレームが回り続ける事がありません。また、ルートパスコストが同じ場合はブリッジIDが大きなLANスイッチ側がブロッキングポートになります。

ブロッキングポートにならなかったポートはフレームを送受信するフォワーディングポートになります。フォワーディングポートで障害が発生して通信できなくなると、ブロッキングポートがフォワーディングポートになるため、通信を継続する事ができます。

つまり、スパニングツリープロトコルを利用すると、複数の経路を作りながらループを回避し、障害時には他の経路を使って通信可能な冗長構成を作る事ができます。

2. スパニングツリープロトコルの種類

スパニングツリープロトコルには以下のような種類があります。

略称名 正式名称 特徴
STP Spaninng Tree Protocol スパニングツリープロトコルとして最初にIEEE802.1Dで規定されました
RSTP Rapid Spaninng Tree Protocol 障害時のフォワーディングポートへの切り替えが高速に出来るよう改良されており、IEEE802.1wで規定されています
MSTP Multiple Spaninng Tree Protocol VLANをグループ分けし、グループ別にSTPを構成できます。IEEE802.1sで規定されています

STPはブロッキングポートからフォワーディングポートへの切り替えが数十秒等遅く、切り替え中は通信が途切れるため、小規模ネットワークでは一瞬で切り替えできる事も多いRSTPがお奨めです。中規模以上ではMSTPが有効な時があります。例えば、MSTPではVLAN10のグループ、VLAN20とVLAN30のグループで通信経路を別々にする事ができます。

これは、グループ毎にルートブリッジやブロッキングポートが異なるSTPを構成できるためです。

3. STP/RSTP設定例

今回はSTPとRSTPの基本設定を中心に説明します。MSTPの設定やスパニングツリープロトコルのオプション設定は第七回を予定しています。

ネットギア製品のスマートスイッチでは、ログイン後に「Switching」→「STP」→「Advanced」→「STP Configuration」を選択する事でSTPやRSTPを有効にできます。

赤枠部分で「Enable」を選択後、「STP」か「RSTP」を選択し、「APPLY」をクリックすると設定が反映されます。青枠部分はこのLANスイッチのブリッジIDで、緑枠部分はルートブリッジのブリッジIDを示します。つまり、2つの数字が同じであれば、このLANスイッチはルートブリッジです。ブリッジIDはブリッジプライオリティ + MACアドレスで決まるため、ルートブリッジにするかどうかの優先度は実際にはブリッジプライオリティを設定する事で調整します。

ブリッジプライオリティが最小であれば、装置固有に割り当てられたMACアドレスに関係なく、ブリッジIDは最小になります。ブリッジプライオリティは「CST Configuration」で設定できます。

赤枠部分にブリッジプライオリティを入力し、「APPLY」をクリックすると設定が反映されます。デフォルトは32768のため、ルートブリッジにしたいLANスイッチでは4096等数字を小さく設定します。

各ポートへの設定は「CST Port Configuration」で行います。

赤枠部分を選択すると全てのポートの設定が同時に行えますが、青枠部分のように設定したいポートだけ選択する事もできます。緑枠部分の「STP Status」でEnableを選択すると選択したポートでSTP、またはRSTPが有効になります。「External Port Path Cost」がパスコストの設定です。黄色枠部分でForwardingと表示されているポートがフォワーディングポートでフレームを転送します。「Discarding」と表示されたポートはブロッキングポート等、フレームを転送しない状態を示します。

4. おわりに

第四回では、スパニングツリープロトコルの動作や仕組み、STPとRSTPの設定を解説しました。スパニングツリープロトコルを利用すると、ループを防ぎながら障害時には切り替えを行う冗長構成が実現できます。

次回は、ポート関連の機能や設定をご紹介します。

のびきよ

2004 年に「ネットワーク入門サイト」を立ち上げ、初心者にも分かりやすいようネットワーク全般の技術解説を掲載中。著書に『短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本』、『ネットワーク運用管理の教科書』(マイナビ出版)がある。

(マイナビニュース広告企画:提供 ネットギアジャパン)

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