世界にはばたくクリエイターを支援していくことを目的に始動した「Kabukicho Creator’s Gallery Project」。同プロジェクトでは第一弾として、2023年4月14日に開業予定の「東急歌舞伎町タワー」の屋外ビジョン 「KABUKICHO TOWER VISION」にて放映される映像作品を募集していた。

数ある応募作品のなかから最優秀賞に輝いたのは、Tsumugiさんの作品。今年、高校を卒業したTsumugiさんはゲームが好きで、いつしか自身でゲームを作りたいと思うように。その後プログラミング教室に通うようになった彼は、映像制作にも興味を持つようになり、のめり込んでいったという。

マイナビニュースでは、Tsumugiさんにインタビューを実施。「まずは好きになることが大切」と言葉にする彼に、受賞作品や、これまでの歩みについてお話を聞いた。

「Kabukicho Creator’s Gallery Project」とは?

世界にはばたくクリエイターを支援する取り組み。デジタルの世界で表現をするクリエイターのギャラリー(表現の場)を作ること、歌舞伎町と東急歌舞伎町タワーをクリエイターエコノミーにおける象徴的な場所とすること、クリエイターの創作パワーを通して歌舞伎町をエンターテインメントシティにすることが目的だ。

第一弾として、アーティストと共に新しい景色を創り出すプロジェクト「CREATIVESCAPE」とコラボをし、2023年4月14日開業予定のホテル×エンタメ複合施設「東急歌舞伎町タワー1F」に設置される屋外ビジョンで放映する映像作品を募集。最優秀賞受賞者(1名)には賞金50万円と、副賞として本プロジェクトに賛同したワコムの液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq 16」などが贈られた。

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\インタビューしたのはこの方!/

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Tsumugiさん

2004年生まれ、東京在住の映像クリエイター。WurtS「SWAM」などアーティストのMVにVFXとして参加し、精力的に活動している。2022年には渋谷・名古屋で開催された昭和百年展で自主制作の怪獣映画を展示した。最近ではスチームパンクをはじめ、ファンタジーな世界観の作品にも挑戦している。好きなゲームは『モンスターハンター』。

分からないことは「まず、自分で調べる」

――最優秀賞にご自身の作品が選ばれたと分かったとき、どんなお気持ちでしたか?

ことしの3月まで新宿にある芸術系の高校に通っていたので、歌舞伎町はわりとなじみのある場所なんです。そんな場所に自分の映像が投影されるのが、何だか不思議な気持ちで。ただ、やっぱり嬉しい気持ちが強いので、映像が流れ始めたら友達を連れて見に行こうと思っています(笑)。

――その日が楽しみですね! 今回のプロジェクトを知ったきっかけは何でしたか?

高校の先生に「面白そうなプロジェクトがあるから参加してみないか?」と誘っていただいたのがきっかけでした。大きな画面に自分の作品が映る機会って、個人の活動ではなかなかないことだと思います。なので、こういうプロジェクトがあること自体がクリエイターのひとりとしてありがたいなと感じました。

――映像制作には、いつ頃から興味がありましたか?

もともとゲームが好きで、小学生の頃に「自分でもゲームを作ってみたいな」と思ったんです。ちょうどそのタイミングで、プログラミング教室のCMをテレビでやっているのを見て、「これなら挑戦できるんじゃないかな」と思ったのが、そもそもの始まりでした。そこから、映像制作にも興味を持つようになったんです。

――もともとはプログラミングを学びたいという気持ちからのスタートだったんですね。

はい。今回制作した3DCG系の映像は、3年前から主に独学で学んでいました。当時、ちょうど高校入学前だったのですが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で自粛を余儀なくされたんです。初めて通学したのは6月でした。それまでの2か月間、ずっと家にいたんですよね。その期間で何か新しいことを始められないかと思い、前々から興味のあった3DCG制作に取り組もうと思ったんです。

――プログラミング教室などに通っていたとのことですが、その他、スキルを磨くうえでどんな取り組みをしていましたか?

今の時代って、インターネット経由で色々な情報を得られるんです。分からないことや疑問点があったときにインターネットで調べると、同じような課題に直面している方がいて。そこから、解決方法を割と知ることもできるんですよね。まずは自分で調べるという一歩を踏み出すのが大事だなって思います。

――今の時代ならではですね。

そうですね。ただ、自分で見えていない視点を入れるのも大切だと思っています。4月から映像系の大学に進学するので、そこでは独学では気づけなさそうなことを徹底的に学ぶ予定です。

自分がどう思うかより周りからどう見えるかを意識した

――改めて、今回受賞した作品のご紹介をお願いします。

今回、映像が放映される「東急歌舞伎町タワー」のモチーフが「水」「噴水」だったので、映像全体を通してもそういう要素を取り入れたいと思ったんです。そうやって考えているうちに、サーフボードが頭に思い浮かんできました。

また、ネオンが光り輝いている歌舞伎町は、何だかサイバーパンクっぽさがあると感じて。そこで、歌舞伎町の街をそのまま使うのではなくて、サイバーパンク的な要素を入れて、未来に向かっていくような演出を魅せられたら面白いかもと思ったんです。そうして最終的には、サイバーパンク感のある歌舞伎町に新しく建ったタワーをサーフボードで駆け上っていくような映像が完成しました。

――そういう発想は、自身の経験のほか、これまで見てきたものや積み重ねがあったから生まれたもの?

そうですね。もともと映画、特にSF系が好きなので、そういう作品の影響はかなり受けている気がします。

――今回はどんなソフトウェアを使いましたか?

主にBlenderを使い、仕上げでPhotoshopを使用しました。

――作品を制作するなかで、苦労したことは?

「東急歌舞伎町タワー」やその周辺を3DCGで作る作業がいちばん大変でした。ふだん制作することが多いファンタジーや架空のものと違い、現実にある建物を映像で作るとなれば「その建物である」と認識していただく必要があると思うんです。それを意識ながら作るのが大変でした。

――その他、意識したことはありますか?

今回は大きなビジョンで放映されて多くの方の目に触れるため、自分がどう思うかより、周りからどう見えるかを意識しました。自分で作った映像って、話の流れや構成を自ら考えているんだから、自分が内容を理解できるのは当然じゃないですか。ただ、初めてその映像を見る方は、構想を知っていたり、制作過程を見ていたりするわけではないんです。何も知らない状態で見た方にも伝わるかどうかは、可能な限り意識していましたね。

――誰に見られるのかを考えるのも大事。

クリエイターなら、考える必要があると思います。自主制作であればある程度好きにしていいかもしれませんが、今回みたく多くの人の目に触れる映像では、特に意識したほうがいいんじゃないかな。それに、誰かに見てもらって講評してもらうのって、すごく重要なことだとも思っていて。ときには自分の作品に対して厳しい意見がくることもありますが、そういう指摘を受けて考えたり、修正したりするほうが次につながりますし、成長は早いと思います。

大切なのは「好きになること」

――今回、副賞として「Wacom Cintiq 16」が贈呈されますが、ふだんの制作で液晶ペンタブレットは活用されていますか?

Blenderでスカルプティングする際は筆圧感知できたほうがいいので、液タブを活用しています。また、キャラクターの形を作ったあとにテクスチャー模様の色付けをする際などにも使う機会がありますね。イラストを描くこともあります。

――絵を描くのは昔から好きだった?

そうですね。幼い頃から恐竜の絵をよく描いています。絵って、いまの映像制作の根幹にも関わっていると思っていて。映像を作るときに3Dモデリングなどを作りますが、実際に描いていなくても、絵を描く思考プロセスは使っているなと感じています。

――プロセスを知っている・知らないではぜんぜん違う。

違うと思います。イメージを具現化しようとするのって、すごく難しいんです。例えばふだんから目にしているものを作るときでも、意外と見ていない部分が多くて。そういうものを観察する力は、絵が好きで描いていたときに培われたかなと思います。

――アナログとデジタルでの制作を比べたときに、デジタルならではだと感じる部分は?

散らからないことですね。僕、片付けがすごく苦手なんです。高校ではアナログの絵もいっぱい描いていましたが、絵の具などが散らかっちゃって大変で……。パソコンや液タブで作業すれば、そういうことがないんです。

――作業スペースが散らかっていると、意識が散漫になっちゃいますよね。

そうなんですよ! 絵を描いているときに周りが散らかっていると、そっちに意識が取られて集中できなくて。パソコンや液タブなら道具が散らからないので、片付けるほうに意識を割かなくてもよくなるんです。もちろん、何でも綺麗に使うのがいちばんだとは思いますが、ズボラな人間としては、すごく助かっています(笑)。

――最後に、映像制作やプログラミングをこれから始めたいと思っている同世代の方々へメッセージをお願いします。

これは……責任重大ですね(笑)。うーん、自分の技術がどうとか、上手くなれるかどうかと悩むことがあると思いますが、まずは「好きになること」が大切だと思います。大変なことは多いですが、僕も好きだから制作を続けてきました。

――好きじゃないことや苦手なことを続けるのは、確かに難しいですよね。

それに、好きなことを見つけたら、他のことも頑張れるようになるんです。僕は学校の勉強が特別好きな訳ではありませんでした。ただ、3DCGの制作をしていたら数学で学んだことがたくさん出てきますし、映像系のソフトのコードは日本語対応していないものも多いので、英語の知識が必要なんです。結果、好きではなかったことも学びたい、学ぼうと思うようになりました。映像制作に限らず、好きなものを見つければ、嫌いなものが好きになる可能性もある気がします。実体験からも、やっぱり「好きになること」が第一歩になると思いますね。

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「Kabukicho Creator’s Gallery Project」で副賞として贈られた「Wacom Cintiq 16」

繊細なタッチ、精度、レスポンスを実現するペンセンサーWacom Pro Pen 2を搭載した15.6型の液晶ペンタブレット。画面への映り込みを軽減するアンチグレア加工のフルHD(1920x1080)解像度ディスプレイ、優れたペンの追従性で、紙のような自然な描き心地を体感できるのが特徴だ。

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