「自作PCとメーカーPC、どちらがいいんだろう……」

動画編集やデザインなどを様々な作業PCで行っているクリエイターは、仕事の相棒となるPC選びに悩むことも多いだろう。コストパフォーマンス重視で行けば、もしかすると自作PCの方が安上がりで高性能なマシンを仕立て上げられるかも知れないが、プロの現場で長時間酷使することを考えると、やはりちゃんとしたメーカーのワークステーションを選択した方がいい

しかも、同一スペックで複数台の導入を考える場合はなおさらだ。何か不具合が出た場合は、同じスペックのマシンで検証ができ、ソフトウェア側の問題か、ハードウェア側の問題かの当たりが付けやすくなる。これがそれぞれ仕様がバラバラの自作PCだと、混乱の元になる。

もちろんエンドユーザーが、プライベートでコンテンツを楽しむためにハイコストパフォーマンスな自作PCを構築することは楽しいことだし、価値も高い。しかし、複数のクリエイターが働く企業や制作スタジオでは、やはり信頼性の高いワークステーションを選んだ方が無難なのだ

point one
CPUに第9世代Core、GPUにQudaroを搭載で価格は25万円切り!

本稿で取り上げるのは3DCG制作、VRコンテンツ制作、映像製作に対応したグラフィックワークステーション「DAIV Z7-QR4」だ。

  • 「DAIV」は、マウスコンピューターが販売しているクリエイター向けPC/ワークステーション製品のブランドである

たまたまだが、筆者も個人的に「DAIV」シリーズの17インチノート型ワークステーションを所有しており、主に海外出張時のメインマシンとして使っている。今回取り上げる「DAIV Z7-QR4」はデスクトップ型のモデルになる。

なお、「DAIV Z7-QR4」には複数のラインナップが存在し、今回評価したのは、下位モデルの「DAIV Z7-QR4-Z390」。「Z390」は、インテルのチップセット名から来ているモデル型番であり、上位モデルの「DAIV Z7-QR4-Z490」も同様だ。

評価機のCPUには、Intel Core i7-9700 プロセッサー(8コア/8スレッド/3.00GHz/TB時最大4.70GHz/L3キャッシュ12MB)が搭載されていた。Coreプロセッサシリーズは、最新の第10世代がデビューしているので、こちらは一世代前のモデルとなるが、その分、価格はかなり抑えられており購入はしやすい。もちろん、CPU性能を重視したいのであれば、第10世代Coreプロセッサが選択できる上位モデル「Z490」を選択するのもいいだろう。

  • 本機のCPUクーラーはヒートシンクに電動ファンを組み合わせた空冷式。なお、オーダー時、今回の評価機よりも高性能なCPUを選択した場合には水冷クーラーなどが組み合わされることもあるようだ

GPUは、ハードウェアレイトレーシングに対応したTuringコア世代TU106コアの「NVIDIA Quadro RTX 4000」(8GB)を搭載。総シェーダープロセッサ数は2304基で、TU106コアを採用した製品としてはいわゆる「フルスペック仕様」となる。兄弟モデルとしてはGeForce RTX 2070に近い仕様だが、Quadro RTX 4000はGeForce RTX 2070よりも動作クロックが引き上げられており、理論性能値も4%強高い7.1TFLOPSとなっている。

Quadro RTX 4000がパーツ単体でも10万円ちょっとなので、このスペックで249,800円(税別)なら、コストパフォーマンスは高いだろう。

point two
現場でどこまで通用するのか、ベンチマークテストで性能検証

それではこのQuadroワークステーション、どの程度のパフォーマンスかを推し量るために、業界でよく用いられているベンチマークソフトを実行してみた。まずは、グラフィックスワークステーションの性能指標によく用いられるSPECviewperf13とV-RAY Benchmarkから見ていこう。なお、テスト実行にあたってはデフォルト設定を選択している。

SPECviewperf13
Viewset Composite Score Window
3dsmax-06 204.88 1,900×1,060
catia-05 273.13
energy-02 39.54
maya-05 292.59
medical-02 87.74
showcase-02 113.59
snx-03 337.97
sw-04 163.3

SPECviewperf13は、OpenGL系グラフィックスアプリケーションのパフォーマンス指標となる。スコアが大きいほど優秀なことを表す。どの程度の性能なのかについては、SPECviewperf13の公式サイトに実際のグラフィックスワークステーション製品の結果を集計したページがあるので、ここを参照して、本機の結果と見比べてみよう。概ね、しっかりと上位クラスのスコアをマークしていることが分かるはずだ。

  • V-RAY Benchmark

V-RAY Benchmarkは、2つのテストシーンをそれぞれCPUとGPUにてレイトレーシングを用いて描画した際のスコアを計測したものになる。こちらもスコアが大きいほど優秀なことを表す。CPUテストは、対応スレッド数が多いCPUほどスコアが高くなる傾向にあり、GPUテストはNVIDIA製GPUにのみ対応し、CUDAコア数が多いほどスコアが高くなる傾向にある。

V-RAY Benchmarkにおいて公式サイトでは実際のグラフィックスワークステーション製品の結果を集計しているので、気になる人は比較のためにチェックしてみて欲しい。

どちらのテストもQuadro GPUの性能は充分と見られ、搭載CPUがもう少し上位モデルであればさらにスコアは上がるのではないか、と考察する。(※「DAIV Z7-QR4-Z390」では、カスタマイズで Intel core i9-9900K プロセッサーへのアップグレードも可能だ)

これ以外に、ごく一般的なWindowsパソコンの性能測定によく用いられるベンチマークテストとしてPCMARK10、CineBenc R20も実行してみたので、参考までに示しておこう。

  • PCMARK10

  • CineBenc R20