2016年9月にDellとEMCが統合し、Dell Technologiesとして初めて開発されたストレージ新製品「Dell EMC PowerStore」が2020年5月に発表された。Dell EMC PowerStoreの魅力はどこにあるのか、ユーザーにはどのようなメリットをもたらすのか。本製品の検証に携わったノックスのエンジニアがDell Technologiesの担当者に気になる疑問をぶつけた。

  • ストレージ新製品「Dell EMC PowerStore」

Dell Technologiesとして初の新製品「Dell EMC PowerStore」の魅力とは?

Dell Technologiesの新しいストレージ「Dell EMC PowerStore」は、EMCがDell Technologiesの一員となり初めて世に送り出すストレージとして、世界中のパートナーやユーザー企業から大きな注目を集めている。

Dell EMC PowerStoreは、その名の通り、Dell Technologiesの基幹製品となるミッドレンジクラス向けの次世代ストレージプラットフォーム製品だ。NVMe-oFやSCMといった最新技術への対応はもとより、仮想マシンのアプリケーション対応(AppsON)、コンテナアプリケーションやDevOpsへのアプローチ、ビルドイン型機械学習エンジンによる自動配置、エッジからクラウドまであらゆる環境へのデプロイ、無停止でのスケールアウトとスケールアップ、市場をリードするデータ削減機能、追加コストや追加契約が不要なアップグレードプログラム(Anytime Upgradeプログラム)など、エポックメイキングな機能とサービス、プログラムが”ふんだん”に盛り込まれている。

このDell EMC PowerStoreの発表にあたって、実機を使ったβ検証を事前に行ったのがノックスだ。エッジの効いた製品をいちはやく国内で提供することに定評のある同社だが、このDell EMC PowerStoreについても、持ち前の技術力を活かしてさまざまな角度から検証を重ねてきた。また、Dell Technologiesのパートナーとして、ユニファイドストレージ「Dell EMC Unity XT」やスケールアウト型オールフラッシュアレイ「Dell EMC XtremIO」、HCIアプライアンスの「Dell EMC VxRail」や「Dell EMC vSAN Ready Node」など、ローエンドからハイエンドまでさまざまな製品を取り扱ってきた経験をもとに、既存製品との比較も徹底的に行った。

Dell EMC PowerStoreの魅力はどこにあり、ユーザーにどのようなメリットをもたらすのか。そこで今回は、ノックス 技術本部 プリセールス部の清家 晋氏と小島 和也氏にお願いし、ユーザー企業が気になる点をパートナー企業ならではの視点から、Dell Technologiesの担当者に率直にぶつけてもらった。


  • (右)ノックス株式会社 技術本部 プリセールス部 部長 清家 晋氏
    (左)同 技術本部 プリセールス部 小島 和也氏

質問に答えていただいたのは、Dell Technologies MDC事業本部SE本部長の森山 輝彦氏と、プリセールスエンジニアの古舘 良則氏および水落 健一氏、事業開発担当の羽鳥 正明氏、パートナーSE部の近藤 正樹氏の5名だ。

  • Dell Technologies SE本部長 森山 輝彦氏

    Dell Technologies SE本部長 森山 輝彦氏

  • 同 MDC事業本部 羽鳥 正明氏

    同 MDC事業本部 羽鳥 正明氏

  • 同 MDC事業本部 古舘 良則氏

    同 MDC事業本部 古舘 良則氏

  • 同 MDC事業本部 水落 健一氏

    同 MDC事業本部 水落 健一氏

  • 同 パートナーSE部 近藤 正樹氏

    同 パートナーSE部 近藤 正樹氏

いちばんの違いはコンテナベースのアーキテクチャを採用したこと

清家氏:まずは新製品を提供するに至った背景や新製品のコンセプトについてあらためて教えていただけますか?

森山氏:背景にあるのは、データの価値を引き出すためにITインフラをどうオペレーションしていくかという課題です。そのカギの1つとなるのがクラウドモデルをオンプレミスに活かし、新しいITインフラモデルを構築すること。従来の外付けストレージは、どちらかというとデータ保護やレプリケーションなど「データサービス」と呼ばれるような価値を訴求していました。しかし、これからはそれに加えて、いかにオペレーションを容易にし、アジャイルやDevOps、自動化、インテリジェンスといった新しい運用スタイルに対応しながら、データの価値を引き出していくかが重要になります。そのための新しいアーキテクチャを採用したのがDell EMC PowerStoreです。従来とのいちばんの違いはコンテナベースのアーキテクチャを採用したことです。

古舘氏:製品コンセプトとしては大きく3つあります。「データセントリック」「インテリジェント」「アダプタブル」です。データセントリックというのは、クラウドネイティブなワークロードを含めてすべてを取り扱うということです。従来のストレージが中心にしていたRDBMSやERP、ファイルサーバ、仮想マシンなどのデータだけでなく、ファイルやリポジトリ、コンテナデータ、コンテナアプリケーションなども対象です。2つめのインテリジェントは、プログラマブルなインフラを提供しながら、自動化やプロアクティブな分析ができるようにすることです。KubernetesやVMware、Ansibleへの対応がそうです。3つめのアダプタブルは、アーキテクチャやデプロイメントがきわめて柔軟という意味です。たとえば、ストレージでありながら、店舗などのエッジで使うサーバとして展開することもできます。

  • Dell EMC PowerStoreの製品コンセプト

水落氏:サーバからネットワーク、コンテナアプリケーションまで包含したオールインワン型のプラットフォームと考えるとわかりやすいでしょう。インタフェースもFC/iSCSI、NVMe-oF、NFS/SMBなど汎用的なものに対応し、アプリケーションもクラウドから仮想マシン、コンテナなどインフラとして求められるものすべてをサポートするというコンセプトです。

従来モデルとの比較で7倍の高速性能、遅延は3分の1に

清家氏:具体的な製品の特徴はどうでしょうか。我々の検証でも性能やレイテンシーが大きく向上していることを確認しています。

森山氏:性能面では、Unity XTと比較して7倍高速、遅延は3分の1を公式に発表しています。圧縮や重複排除の技術も刷新していて、UnityやXtremIOと比較しても高いデータ削減を実現しています。ハードウェアによる圧縮などを用いることで最大20:1まで実現可能です。保証という観点では、これまでUnity XTで3:1までのデータ削減効果を保証していましたが、Dell EMC PowerStoreは4:1まで保証します。

古舘氏:拡張性も大きな特徴です。2Uサイズのアプライアンスで最小2ノードのクラスターから構成できます。クラスターはアクティブ-アクティブのHA構成で信頼性を確保し、拡張する場合は、スケールアップ、スケールアウト、それぞれに対応できます。まず、スケールアップはアプライアンスに3台までの拡張シェルフを追加できます。またスケールアウトは最大8ノードまで可能です。シンメトリーである必要はなく、ノードの属性に応じてアタッチする容量やアプライアンスモデルをそれぞれ選択できることも特徴です。パフォーマンス、キャパシティをビジネス要件に応じて柔軟に拡張できます。

水落氏:ノードの拡張もオンラインで中断することなく実行できます。後ほど詳しく紹介しますが、アップグレードを柔軟に行うためのプログラム「Anytime Upgrade プログラム」も提供します。また、拡張性に加えて、可搬性が高いことも魅力といえるでしょう。オンプレミス、クラウドを選ばず、さまざまな環境でデータを同じように取り扱うことができます。また、さまざまな環境に対応するため、コンテナアーキテクチャをベースにしたユニファイドモデルと、VMware ESXiをベースにしたAppsONモデルの2つを用意しています。

データのマイグレーションがシームレスになり、アップグレードが不要に

清家氏:ラインアップは1000、3000、5000、7000、9000の5モデルで、1000ではCPU32コア/メモリ384GBで、9000ではCPU112コア/メモリ2560GBです。ミッドレンジということですが、どのあたりまでカバーできるのでしょうか?

森山氏:8ノードまでスケールアウトできますから、ミッドレンジだけでなくハイエンドの一部までをカバーすることができます。既存の製品モデルでいえば、Unity XTの上位モデルから、PowerMaxの下位モデルまで。ミッドレンジの下のほうは、Unityの下位モデルやSCシリーズでこれからもカバーしていきます。

小島氏:デプロイモデルやAnytime Upgrade プログラムの話がありましたが、もう少し詳しく教えていただけますか?

森山氏:管理者によるデータのバランシングやマイグレーションが不要になると考えるとわかりやすいと思います。まず、2つのデプロイモデルを活用することで、あらゆるワークロードを容易に統合できるようにします。統合できてもデータの性能や容量が不足することでスケールアップ、スケールアウトが必要になりますが、Dell EMC PowerStoreでは柔軟な拡張オプションで 自動的にクラスターを構築したり、クラスター間の負荷バランスを自動調整したりすることが可能です。加えて、コントローラのアップグレードや、次世代モデルへのアップグレートの必要性が生じた場合も、追加コスト不要でかつ、中断なし、データ移行無しでアップグレードできるようになります。それを行いやすくするのがAnytime Upgradeプログラムです。

古舘氏:Anytime Upgrade プログラムには大きく3つのパターンがあります。1つめは新しい世代が出たときに無償でアップグレードする場合です。たとえば、Dell EMC PowerStoreの新モデルがリリースされたときに、現行のモデルから新モデルへ1つ上の世代への移行が可能です。2つめはより性能の高い上位機種にアップグレードする場合です。3つめはノードを追加してスケールアウトする場合です。ノード追加コストなしでスケールアウトが可能です。この3つのうちのいずれかのアップグレードを利用できるのがAnytime Upgrade プログラムとなります。

コンテナベースのTモデルとESXiベースのXモデルを提供

清家氏:デプロイモデルについては、コンテナベースとハイバーバイザーベースの2つがあるということですが、それぞれはどのようなニーズを満たすことができるのでしょうか。

羽鳥氏:コンテナアーキテクチャをベースにしたユニファイド型を「Tモデル」、VMware ESXiをベースにしたVM型を「Xモデル」として提供します。Tモデルはスケールアップ/スケールアウトという特徴を活かすことで、ミッドレンジにおけるスケーラビリティという新しいニーズを満たすことができると考えています。一方、Xモデルは、HCIとは異なるアプローチでサーバ、ストレージ、ネットワークを統合できるという斬新さがあります。クラウドやエッジなど、これまでカバーできなかった領域をカバーできると考えています。

近藤氏:パートナーを支援する立場から見ても、TモデルとXモデルという2つの選択肢があることで、ユーザーへの提案の幅が広がると考えています。ユーザーインタフェースは両方のモデルで同じですから、操作に困るということはないと考えています。

小島氏:具体的にどのようなシーンで利用できるのでしょうか?

水落氏:TモデルとXモデルの違いは、ストレージOSがベアメタル上のコンテナアプリケーションとして動作するか、VMware ESXi上のVMとして動作するかの違いです。VMとして動作するXモデルの場合、さまざまなアプリケーションのVMもXモデルのストレージ上で稼働させ、ストレージでサーバの機能まで包括することができます。この仕組みを「AppsON」と呼んでいます。AppsONを活用することで、Xモデルを店舗サーバやIoTのエッジサーバなどとして利用きるようになります。データ中心のアプリケーションでの利用を想定し、特定用途の部門サーバ、センサーデータの機械学習、工場の生産ラインを撮影するようなビデオ監視システム、AI環境向けのストレージなど幅広い応用が可能です。

古舘氏:Xモデル上で稼働する仮想マシンはVMwareベースですから、エッジ側とデータセンターコア側でアプリケーションを連携させることも容易です。例えば、コア側ではVxRailでHCIの仮想環境を構築し、Dell EMC PowerStoreのXモデルをエッジサーバとして利用することでお互いを連携させることができます。さらにVCF(VMware Cloud Foundation)環境を用意し、VMware Cloud on AWSと組み合わせたハイブリッドクラウドもできるようになります。

コンテナアーキテクチャがユーザーにもたらすメリット

清家氏:UnityやXtremIO、SCシリーズなど既存のストレージからのデータ移行は可能なのでしょうか?

森山氏:可能です。それら製品からもシームレスに移行できるツールや機能を提供していく予定です。また、従量課金等を含めた様々な支払いオプションを提供していきます。

清家氏:パートナーとしてもDell EMC PowerStoreが新しい提案につながることは大いに期待しています。一方、ユーザーの目線で見たときにDell EMC PowerStoreがもたらすメリットは何だとお考えですか?

森山氏:コンテナアーキテクチャを採用したことでさまざまなメリットを生みます。コンテナは機能の修正や追加が非常に迅速かつ簡単に行えます。修正する場合には限られた範囲だけでよいため、すぐに影響を特定できます。追加する場合もコンテナ単位でアップグレードできます。アップグレード時間は早く、影響範囲も最小限に留められます。そのため、システムやサービスの品質が安定する効果も期待できます。スピーディーにアップグレードして、安定した運用を行う。これが最大のユーザーメリットだと考えています。そのほかにも、機械学習によるシステムリソースの最適化を自動化するインテリジェントな機能やクラウドベースの分析サービスCloud IQへの対応など、さまざまなユーザーメリットを提供します。Dell EMC PowerStoreを新しいプラットフォームとしてご採用いただきたいと考えています。

清家氏・小島氏:ありがとうございました。

【後編】を読む

β検証で明らかになったDell EMC PowerStoreの性能特徴

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