2019年11月15日に開催された「Red Hat Forum Tokyo 2019」に、NEC先端SI技術開発本部OSS推進センター エキスパートの影山 太一氏と、トランスポートシステム本部プロジェクトマネージャ 中西 俊之氏が登壇。「NECのデジタル変革への取組み『顔認証技術』と『OpenShift』による最新事例」と題した講演が行われた。この内容と、NECの展示ブースを紹介する。

NECが考えるデジタルトランスフォーメーションとは

AIやIoTなどの新しいテクノロジーが普及するなか、企業や社会のあり方も大きく変わろうとしている。近年では、こうした先端テクノロジーを活用してこれまでにないビジネスモデルを作り出したり、企業の事業基盤そのものを変革したりする取り組みのことを「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と呼び、多くの企業が取り組みを活発化させている。

そのなかでも、DXを単なるテクノロジーの導入や自身の変革に向けた取り組みとして捉えるのではなく、「企業・産業の事業活動や都市運営する面でより良い方向に変化させサステナブルな社会を実現していく変化の動き」と捉え、それに向けたさまざまなソリューション提供までを行っているのがNECだ。

影山氏はまず「NECの考えるDXは、デジタル技術を活用し、ビジネスや社会をより良い方向に変革するもの」と指摘。具体的な変革の姿について「『誰』の視点で変革するのか、『何』を変革するのかという視点から、エクスペリエンス、ワークスタイル、オペレーション、ビジネスモデルという、4つの切り口でお客様とともにDXに取り組んでいます」と説明した。

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    日本電気株式会社
    先端SI技術開発本部OSS推進センター
    エキスパート 影山 太一氏

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    NECが考えるデジタルトランスフォーメーション(DX)

IoTやAI、映像分析といった最新のデジタル技術を駆使して、たとえばエクスペリエンスの変革では、過去に例のない素晴らしい顧客体験経などを創出する。またオペレーションの変革では複雑で高度な現場業務の見える化、単純化などを実現する。

こうした変革の1つとして、顧客とともに取り組んだのが「成田空港One ID」だ。

顔認証技術でエクスペリエンスとオペレーションを変革

成田空港One IDは、2020年春から成田空港でスタートする新しい搭乗手続きサービスだ。空港でのチェックイン時に最初に顔写真を登録しておくと、その後の手荷物預け、保安検査、搭乗ゲート手続きなどで搭乗券やパスポートの提示などをすることなく、顔認証だけで通過できるようになる。

成田空港 One IDにも使われているNECの取り組み「FastTravel」

講演では、成田空港One IDでのDX事例を詳しく説明するにあたり、キーとなる2つの要素が紹介された。それが今回のDXの基点となるデジタル技術「顔認証技術」と、そのシステムを支えるプラットフォーム、NECがOEM提供する「OpenShift」だ。

まず、顔認証技術について、中西氏が詳しく解説した。

「NECの顔認証技術は、世界No.1の性能を誇ります。米国の国立機関『NIST』が2019年10月に発表した最新の顔認証技術のベンチマークテストにおいても認証エラー率0.5%。他社を大きく引き離し、5回目の1位を獲得しました」(中西氏)

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    日本電気株式会社
    トランスポートシステム本部
    プロジェクトマネージャ 中西 俊之氏

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NECの顔認証技術はエンジンが優れているだけではなく、実績を重ねていくことで得た、カメラの位置や照度、パラメータのチューニンなど、SI(システムインテグレーション)としての能力がセットとなって、顔認証によるソリューションを提供するという点が強みとなっている。

そして、このソリューションによって、成田空港One IDでは、エクスペリエンスとオペレーションという切り口で変革を実現へと導いた。

「成田空港One IDでは、顔認証技術を活用することで、搭乗前の煩雑な手続きの軽減や待ち時間の改善によりエクスペリエンスの変革を実現しています。また、手続き時間を短縮し、定時運航率の向上に寄与するというオペレーションの変革も実現しました」(中西氏)

成田空港One IDを支えるNECがOEM提供するRed Hat OpenShift

一方、OpenShiftは、成田空港One IDを運用するためのシステム基盤であり「可搬性」と「拡張性」が重要なポイントだったという。

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「今後の展開や連携を考慮して、オンプレやクラウドなど、どこでも稼動可能な可搬性の良いシステムを目指しました。また、今後、発生しうるさまざまなシーンを想定し、スモールスタート可能な構成から高トランザクションに耐える大規模構成までスケール可能な拡張性が求められました」(中西氏)

可搬性に優れ、更新しやすく、自動化するための技術として注目したのがコンテナ技術だ。ただ、コンテナ技術は、拡張させていったときに手順が複雑になるなど、運用面での課題があった。そこでコンテナオーケストレーションのKubernetesの採用を検討したという。

「Kubernetesはオープンソースということもあり、プロジェクトとして採用するには、長期的な保守やセキュリティ問題への対処などの観点で多くの課題がありました。 そこで商用版のディストリビューションであれば、これらの課題を解決してくれるのではないかと考えました。」(中西氏)

そこで採用されたのがRed Hat OpenShiftだ。OpenShiftは可搬性、拡張性に優れているだけでなく、長期的な保守や、セキュリティFixの提供も実現している。また長年のRed Hat とNECの協業により、NEC社内のOpenShift製品部隊の技術力は高く、サポートも万全であるということから、プロジェクトが抱えていたKubernetesに対する課題を解消できる選択肢となった。

影山氏は、OpenShfitには大きく3つの特徴があるとし、次のように解説した。

「1つ目は、可搬性の高いコンテナを実行する基盤であるという点、2つ目はインフラへの依存を減らして、オンプレやパブリッククラウドなど場所を選ばず、どこでも同じように運用可能な基盤であるという点、3つ目はシステムへの負荷に応じて自動的にスケール可能な基盤という点です。」(影山氏)

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    OpenShiftが持つ特徴が活かされた「成田空港 One ID」

ソリューション、SI、個々の製品サポートのシームレスな連携がDX実現のカギに

顔認証基盤にOpenShiftを採用することは新しい取り組みということもあり、苦労もあったという。まず、ミッションクリティカル領域においても採用できる可用性を確保することが課題となった。

「アプリケーションへ影響するコンポーネントが多く、ソフトウェアの構成が複雑になります。可用性を確保するためには、アプリケーションに影響するコンポーネントを洗い出し、影響範囲を特定する必要があります。実際にそうした洗い出しを行い、すべてのポイントにおいて可用性向上のための対策を行ったことが苦労した点です」(中西氏)

ポイントとなったのは、過去数多くのミッションクリティカルシステムに携わってきたSEのチームと、OpenShiftのサポートを提供するチームとの強固な連携だった。製品を外部から調達する場合、問い合わせや問題の切り分けに時間がかかるのが一般的だが、NECはOpenShiftを自らサポートしているため、このような連携によりNEC内で迅速な解決が可能だったというわけだ。

また、この新しいシステムは最新技術をふんだんに採用されていることもあり、運用スタイルが従来とは大幅に異なっていたため、既存システムのスタイルとどう連携させ、統合的に運用していくのかという点が大きな課題になっていた。

「ジョブ運用、ログの収集、システム監視、バックアップなどは既存の運用スタイルがあり、それと同じ体系のなかで運用したいというニーズがありました。そこで、NECが持つさまざまなノウハウやスキルを使い、既存システムの運用と同じようにOpenShfit環境を一元的に管理できるようにしました」(中西氏)

こうした課題の解消には、顔認証技術のソリューションチームと、SIチーム、および個々の製品をサポートするチームという総合力がキーになっており、NECではさまざまな製品を自社開発もしくはOEM提供しているため、連携できる部門・チームが社内に整備されていることがプロジェクトを進めるうえでの大きな強みとなっている。

OpenShift、顔認証技術活用の広がり

NECでは既存アプリケーションのモダナイズ化、自身が提供するミドルウエアのコンテナ化、OpenShiftをより便利に使うための製品やサービス、既存視システムとの連携に力を入れているとのことで、影山氏からOpenShiftに関連する製品やサービスの紹介があった。

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また、中西氏から、NECの顔認証技術を活用した別の事例である「税関電子申告ゲート」や、さまざまな場所での顔認証技術の利用シーンの紹介があった。そのひとつである南紀白浜のおもてなし実証では、顔認証技術によって手ぶら、キャッシュレスでの様々なサービスを体験できるとのことだ(2020年2月まで実施予定)。

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最後に中西氏は「NECの総合力によって、お客様のDX実現に貢献するベストパートナを目指す」と強調し、講演を締めくくった。

なお、展示ブースでは、顔認証や年齢別推定などが可能な「NEC映像分析基盤」、成田空港の事例やコンテナ技術を解説する「コンテナ・OpenShfit」、SoR領域で培った高信頼性基盤のノウハウを生かした「AIを支える高信頼性ソリューション」という3つの展示が行われていた。多くの来場者が足を止め、説明員や担当者の話に耳を傾けていた。

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[PR]提供: 日本電気