ストレスと戦う現代社会のなかで、うまく溶け込むことができず、心のケアを必要とする人がいる。医療の面からそんな人々の手助けをしているのが、「ストレスケア東京上野駅前クリニック」だ。

同院では様々な取り組みをしているが、中でも「アートセラピー」をヘルスケアに取り入れていることで知られており、最近では「デジタルアートセラピー」を採用したという。どのような内容なのか、直接話を伺う機会があったので紹介しよう。

  • 左から、ストレスケア 東京上野駅前クリニック 細川 大雅院長、同クリニック 緒方 優医師

「アートセラピー」ってどんなもの?

ストレスケア東京上野駅前クリニックは、心療内科、精神科のクリニックで、様々な疾患を対象としているが、中でも発達障害をメインに治療をおこなっている。薬物療法だけでは難しい思春期特有の問題や、発達過程における悩みを解決したいと、多くの患者が同院を訪れている。

カウンセリングや認知行動療法、薬物療法のほかにも、デイケアも治療の一環としておこなっている。これは、復学や復職へ向け、その第一歩として活用できる"日中の居場所"を提供するものだ。

  • ストレスケア東京上野駅前クリニックの受付風景

デイケアには10~30代のメンバー(※)が多く参加しており、ここではコミュニケーションやスタミナを向上させるカリキュラムのほか、集団療法なども取り入れられているが、「アートセラピー」もデイケアの中核を担っている。
(※)同院では、デイケアに参加する患者のことをメンバーと呼んでいる

アートセラピーでは、メンバーが絵を描くことを通して、ひとつのことに集中する力を高めたり、夢中になれるものを見つける。それにより、自己肯定感を持てるようにするという狙いがある。

カリキュラムとしては、キャンバスに色鉛筆やパステルで絵を描く「絵画教室ベーシック」、本格的な技法を使った水彩画などに挑戦する「絵画教室クラシック」、粘土やハーバリウムをおこなう「クラフト」などが用意されているが、ここに新しく加わったのが「絵画教室・デジタル」だ。

絵画教室・デジタルは、デバイスを使って、デジタルアートを作成するというもの。そのタブレットに使用されているのが、サードウェーブのお絵かきペンタブレット「raytrektab」だ。同製品は筆圧感知とデジタイザーに対応し、ペン入力に特化したタブレットだが、どのよう活用されているのか。百聞は一見に如かずということで、まずは教室の様子をリポートしたいと思う。

「raytrektab」を使ったデジタルアートセラピー

  • 絵画教室・デジタルで使用されているデバイス「raytrektab」

絵画教室・デジタルでは、「raytrektab」と「CLIP STUDIO」を活用し、メンバーが各々デジタルアートを作成する。基本的には思い思いに描いていくのだが、その日ごとに課題が出されており、取材日の課題は「〇〇〇という言葉を使って1コマ漫画を描く」といったものだった。他にはLINEスタンプを作る、キャラクターを作成するといった課題もあるという。

初めての人には、最初にスタッフが使い方を説明する。しかし、本格的なペンタブレットと違い、「raytrektab」はデジタルアートに詳しくない人でも直感で手軽に使えるので、PCに不慣れな人でもスムーズに描き進めていくことができる。

  • 単なる線画になりがちなタッチ入力ではなく、筆圧感知による立体感のある描き心地がメンバーのイメージを膨らませていく

また、メンバーからは時折「レイヤー」の概念や、ソフトウェアの操作方法など、様々な質問が飛び出してくるが、「きちんと教えるとすぐに覚えてくれるし、上達のスピードも速いです。なかには、いつのまにかスタッフよりも詳しくなっている人もいますね」とのことだ。

画力は個人差があって当然だが、その絵からは真剣さと楽しさが伝わってくる。中にはプロ級の筆力を持つ参加者も……。

また、セミナーの最後にはみんなで作品を見せ合って感想を共有するそうだ。

ストレスケア東京上野駅前クリニックとサードウェーブが語る
デジタルアートセラピーの可能性

上記で絵画教室・デジタルの様子を紹介したが、この取り組みが始まったきっかけ等を、クリニックの細川院長と緒方医師、そしてお絵かきペンタブレット「raytrektab」を提供する、サードウェーブの田中 基文氏の3名にお話を聞いてみることに。

  • 左から細川院長、田中氏、緒方医師

――デジタルアートセラピー(絵画教室・デジタル)を始めた経緯は?

細川院長
アートセラピーはもともと心の病気をお持ちの方に、心理状態を表現していただいたり、心理的に良い影響があることを期待して行われるものです。

当院ではデイケアにアートセラピーを組み込んでいますが、先ほどのような心理療法的な意味だけではなく、自分をうまく表現して、それが生き甲斐に繋がって欲しいという願いから始めようと考えました。
デジタルアートでは、表現の幅も発信力も更に上がりますので、より皆さんのニーズに合ったものになると考えて、新たにプログラムを開始しました。

ここに集まるメンバーが抱えている悩みの中には、薬を飲めば治るというものだけではありません。生き甲斐を見つける薬というものはないので、デジタルアートを通じて自分の価値を見つけ、生きる力に繋げられればよいと思っています。

――デジタルアートセラピーというのは、正直聞きなれない言葉でしたが精神科医療では広く使われているのでしょうか?

細川院長
そもそもアートセラピーを医療機関に取り入れているところも少ないですし、当院のように思春期の方を対象にしたクリニックも決して多くはありません。その中で、デイケアに力を入れているところとなるともっと少なくなります。ですから、タブレットを大量導入するという今回の試みもある意味チャレンジでしたね。

  • 緒方医師が「raytrektab」を使用し作成したイラスト。同クリニックのイメージキャラクターとなっている

――「raytrektab」を選んだ決め手はどのようなものでしたか?

緒方医師
いろいろなタブレットを見ていくうちに、筆圧感知やデジタイザーが備わっていて、サイズ感もちょうどよく、「CLIP STUDIO PAINT DEBUT」もプリインストールされている。このように、これ1台あればデジタルアートがすぐに始められるというところが気に入りました。また、サードウェーブさんが当院の理念に関心を持っていただき、最適なものをご提案頂いたことも要因のひとつですね。


田中氏
細川先生、緒方先生よりご提案をいただいたときに、若い世代を中心として抱えている問題を目の当たりにしました。また、その人数が年々増加しているということだったので、微力ながら我々が力になれることを考えたときに、最適な解決策のひとつが「raytrektab」でした。

こちらでは、導入以前にiPadやAndroidタブなど、様々なタブレットデバイスをお使いだとお聞きしましたが、そのような多様な操作を個別に実施するのは大変なので、Windows機で運用を統一化でき、しかもデジタルアートを作るのであれば、この「raytrektab」は自信を持ってご提供できました。

――実際に参加者からはどのようなお声が届いていますか?

緒方医師
デジタルアートをまったくやったことがない人から、プロ級の方まで実に幅広いスキルの人々が総じて違和感なく始めることができています。メンバーさんからは特に不満は出ていないので、それが答えになっていると思います。満足度は高いといえるでしょう。


細川院長
当院では若い世代が多いとはいっても、上は50代ぐらいまで幅広い年齢層の方々がいらっしゃいます。デジタル世代には受けが良いのではという意見もありましたが、実際にはすべての年齢層で受け入れてもらえています。

また、参加者は女性が多いので、特に大きすぎないサイズ感はちょうど良かったと思います。みんながテーブルや机の上で描くわけではなく、自由に好きな場所で描いてよいことになっていますから、モビリティの高さも重要でした。また、スタッフもWeb用の素材などを制作するのに空いている時間に、受付の隅で使うこともあるので、スタッフを含めて評判はすこぶるよいです。


田中氏
サイズ感についてですが、「raytrektab」は8インチモデルから提供し始めました。これは女性のハンドバッグに入れられるサイズであること、という考えがあったからです。女性が空いた時間にちょっと絵を描いてみたいと思った時に、スマートに出し入れできるサイズにこだわりました。
8インチモデルを扱い始めてからしばらくして、製品コンセプトが浸透してきたタイミングで、一回り大きい10インチモデルをリリースしました。こちらでお使いいただいているのも10インチモデルになります。

――10インチの「raytrektab」は、大きさや機能など、ニーズに非常にマッチするものだったんですね。また、このデジタルアートセラピーを通して、今後どのようにしていきたいか、展望があれば教えてください。

細川院長
本日はイラストや漫画を描くのに「raytrektab」を使っていますが、先日はLINEスタンプを作成するのに使いました。自分が描いた絵が、実際にデジタルの世界では使われるものになるというのが良いところだと思います。

YouTubeチャンネルで紹介できる絵を描こうとか、アニメを作ってみようとか、参加者を含めて夢が広がっているようです。デジタルの世界では絵を鑑賞するだけにとどまらず、様々な方向性に発展させやすいので、今後がとても楽しみです。


緒方医師
これまでのアートセラピーというと、作品は障害者アートという分類になり、それに興味がある人にしか見てもらえませんでした。しかし、デジタルアートの世界では、そうした枠を超えて様々な人に向けて発信できるのが強みだと考えています。当事者にとっては自己肯定感の向上や人生というものが有意義であることへの気づきを与えてくれるきっかけになると期待しています。

――今後の活動の広がりがますます楽しみですね。ありがとうございました!

photographer:田中 史彦

[PR]提供: サードウェーブ