セッション3:TIS
様々な改革手法を組み合わせるのが、今後の流れに

幅広い業界・分野でトータルSIerとして業務を展開、RPAを用いてアウトソーシングも手がけるTISからは、まずフリーランスの立場で同社の新規サービス起ち上げを支援している西村大輔氏が登壇した。同氏は、働き方改革にはダイバーシティや、テレワーク、ワーキングスペースの共有化など様々な手法があるが、RPAもそのアプローチ方法の1つだとし、「いくつもの手法の合わせ技で改革を行っていくのが、これからの流れになると思う」と述べた。

TIS 西村 大輔氏

TIS 西村 大輔氏

「業務のアウトソーシングも、働き方改革への1つのアプローチだと思います。今後は、単純に依頼した業務の速さや価格といったことだけではなく、アウトソーシング先でどのような手法・技術を採り入れているのかも、皆様が選定や評価をされる時のポイントになってくるでしょう。TISではお請けした仕事にRPAやAIを活用することで、より効率的、 効果的に、仕事を進めていきたいと考えています」(西村氏)

RPA導入工程でのTISの強みとは

西村氏の言葉を受けて、公共事業本部の有田拓真氏から、アウトソーシング先としてのTISの強みや、同社が公共機関向けに手がけたRPA化事例が語られた。

TIS インダストリー事業統括本部 公共事業本部 公共事業部 公共ITサービス第3部 有田 拓真氏

TIS インダストリー事業統括本部 公共事業本部 公共事業部 公共ITサービス第3部 有田 拓真氏

「TISには3つの強みがあります。第1にアジャイル型のスピード開発ができることです。RPAの導入当初には、仕様がなかなか決まらず、開発が進まないという問題が起こりがちです。そこで当社ではプロジェクトをいくつかに分割してロボット化していきます。それぞれの実装テストと修正を並行して繰り返しながら、徐々に大きな流れをつくるという手法を採り入れています」(有田氏)

こうしたアジャイル型の開発は、RPA化対象に選んだ業務が、本当にRPAに適しているのか否かを迅速に判断するのはもちろん、導入効果を迅速に刈り取るのにも有効だ。

第2の強みは、TISが数多くのプロジェクトに携わることで培ってきた、RPA開発フレームワークを持っているということ、そして第3はビジネスプロセスの適切な見直しが行えることにあるという。

「RPA化にあたっては現行業務の無駄を省いたり、RPAにマッチしたフローに置き換えたりすることが必要になります。当社では、そうした業務内容に関わるところまでコンサルティングできる体制を整えています」(有田氏)

他テクノロジーとの連携、稼働時間の工夫で効果が向上

TISが手がけたRPAの導入事例の中から、有田氏は適用範囲の代表的なものをいくつか選んで紹介した。まずはRPAとBIを組み合わせた例だ。職員ごとの勤務データを、勤怠管理システムからダウンロードしてBIツールにかけ、その結果を上司に送るという業務を、従来は担当職員が手動で行っていて、大変な労力を要していたという。RPA導入後は勤務データのダウンロードから分析結果の作成、さらに上司へのメール送信までが自動化された。

2番目はRPAとOCRの組み合わせ例で、研修受講者が書いたアンケートを講師が確認し、研修内容の改善に役立てるという業務の中で活用されている。手書きのアンケートをスキャンし、OCRでデータ化した後は、ロボットがそのデータを講師に送ると同時に、研修管理システムに転記する作業を担っている。

最後は、経理部門での活用事例だ。ロボットで自動化した作業を、就業時間前に終わらせておくことで、人間が行う作業は結果確認などだけに軽減され、所要時間も大幅に削減することができたという。

「このように、ロボットをうまく活用することで、コストの削減はもちろん、リードタイムの短縮という効果も得られるようになっています」(有田氏)

  • 経理部門における請求処理業務を自動化。営業時間内に最長65分かかっていた作業が10分まで短縮され、最大70%以上の工数を削減

    経理部門における請求処理業務を自動化。営業時間内に最長65分かかっていた作業が10分まで短縮され、最大70%以上の工数を削減

税事務の処理にAI OCRを投入、45%の作業時間削減を見込む

TISがアウトソーシングとして請け負っている業務でのAI・RPA活用例として、税事務処理でのケースが紹介された。税に関する事務処理は、まだまだ紙媒体での運用が多く、業務すべてを自動化する、抜本的な改革はなかなか難しい。そこでTISでは、事務処理の中の一部の作業に的を絞り込んで、AI OCRをもちいた自動化の取り組みを現在進めている。

従来型OCRとAI OCRとの大きな違いは、学習機能にある。AI OCRは学習を積み重ねていくことで精度を上げ、クセの強い文字や記入欄からはみ出して書かれた文字も認識することができるようになる。ある事例ではAI OCRに145万件の書類データを学習させたところ、数字は学習前が96.3%だった認識率が97.2%に、記号番号では62.2%が97.2%に、カナは78.3%から95.5%にまで向上したという。

  • 従来型OCRでは読み取り困難な文字を、AIの活用により高精度に読み取る

    従来型OCRでは読み取り困難な文字を、AIの活用により高精度に読み取る

TISでは先述の税処理工程に、このAI OCRを導入することで、約45%のデータ入力作業を削減できると試算している。これまでは入力の精度を維持するために、入力と確認の役割を受け持つ2人がデータ入力作業を行っていたが、AI OCRを導入すれば、確認役の1人だけで済むようになり、大幅な省力化につながると見ている。

さらに、AI OCRとRPAを組み合わせた例で、課税資料の内容とお客様のマスター情報を照らし合わせる業務での活用を見込んでいる。AI OCRで課税資料をテキスト化し、ロボットが表記ゆれの統一、照合作業を自動化する。例えば住所の場合、「1丁目2番地3号」や「1-2-3」と同じ住所でも表記が異なることがある。こうした表記ゆれにおいても、RPAの機能を用いて照合させることで、従来の目視による確認作業の時間削減や人的ミスの削減にも効果を発揮する。

働き方改革を進めるにあたっての考え方から、最新技術の具体的な導入事例まで、約3時間にわたって開催された本セミナーだが、登壇者の誰もが口にするのは、「AIやRPAは手段であって目的ではない」ということだ。民間・公共問わず、技術導入に関わる全ての人が、導入後に得られるメリット(時間やコスト)をどう活かしていくのか、しっかりと考えたうえで事を進めていく必要があるだろう。

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https://www.tis.co.jp/
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