ビッグデータをいかに活用していくかが、ビジネスの成否を大きく左右するようになったいま、クラウド化は必然の流れと考えるべきだろう。CPUやストレージを期間契約できるパブリッククラウドは、増減するデータ量・トラフィック量に合わせた適切なサイジングを可能にするだけでなく、インフラ調達やメンテナンスにかかる時間とコストの削減にも効果がある。ビジネスの規模が大きければ大きいほど、そこから得られるメリットもまた、大きなものとなる。

逆に既存ビジネスの規模が、クラウド化のハードルを上げてしまうこともある。ビジネスが育っていくなかでさまざまなシステム、サービスが追加されていき、複雑に絡み合っているようなケースだ。各所の連携を把握し、それらをクラウド上で再構築するのに膨大な手間がかかるとなると、気軽には環境を変えられないという現実もあるだろう。

本稿では、そうした課題をクリアして大規模環境をスムースにクラウドへ移行し、そのメリットを存分に活かしているふたつの企業を紹介する。共通するのはシステムの連携ツールとして「ASTERIA WARP」を利用しているという点だ。

オンプレミスサーバ300台の円滑なクラウド移行に成功

ゴルフ関連事業を展開する株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインでは、オンプレミスサーバ300台、Webページビュー1.1億/月間にものぼる大がかりな環境を、円滑にAWSへ移行することに成功した。移行期間は当初の予定通りの9ヶ月に収まったという。株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン インフラマネジメント室の清水 正朗氏は、これまでのシステムの変遷を振り返ってこう語った。 「『ASTERIA WARP』導入前の複雑なシステムのままだったら、クラウド移行はできなかったかもしれません。できたとしても時間は倍以上かかったでしょう」

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 経営戦略本部 インフラマネジメント室 シニアプロジェクトマネージャー 清水 正朗氏

同社の設立は2000年。ゴルフ場のオンライン予約サービス、ゴルフ競技速報コンテンツ、広告マーケティングサービスから事業をスタートさせた。以降、ゴルフ用品販売、クレジットカード発行、ゴルフ場向けシステム支援サービスなど事業の幅を広げ、システムにも機能追加を繰り返していった。データ連携機能は個別に開発されていたため、やがてシステムの全体像を把握することは困難になり、類似した機能が重複して開発されることもあったという。この事態を解決するために2011年に導入されたのがデータ連携ツール「ASTERIA WARP」だ。

「何と何がどのようにつながっているかが分かるような仕組みにする」という大命題のもと、同社ではまず、会員情報の参照やEコマースへの商品リンクなどすべての機能を洗い出し、連携に用いられているプログラムを「ASTERIA WARP」に置き換えていった。「ASTERIA WARP」はアイコンを並べプロパティを設定するだけで連携をノンプログラミングで実現でき開発の高速化を図ることができたため、新連携システムの開発はスクラッチ開発の約1/4の短期間で完了した。絡み合っていたシステムは疎結合化し、それに伴ってメンテナンスや新規開発にかかる負荷も激減した。「一時期はアプリやサーバの監視を含めて、20名近いスタッフを抱えていましたが、現在は2名で事足りています。コストは1/3ほどに削減できました。」(清水 正朗氏)

以後、同社では7年にわたって「ASTERIA WARP」を活用してきた。「ASTERIA WARP」が自動で書き出すHTMLの仕様書や、独自の開発ドキュメントを残すことで、事業が拡大してシステムやサービスが増えても、またスタッフが入れ替わっても、以前のような混乱はなく、その結果、今回のクラウド移行もスムースに完了させることができたと清水氏は語る。 「『ASTERIA WARP』でシステムの連携先を一元管理できていたので、AWS本番環境への移行時、通常数時間はかかるDNSサーバの切り替えも、10台を10分という短時間で完了することができました」(清水氏)

Amazon Aurora、Google BigQuryの恩恵を享受

同社がクラウド化に踏み切った目的のひとつに、AWSのリレーショナルデータベースエンジンAmazon Auroraの利用がある。ゴルフレッスン事業の拡大に伴い、オンプレミスサーバのMySQLだけではゴルフダイジェスト・オンラインが目指すパフォーマンスレベルを維持できなくなることが推定されたため、Amazon Auroraに置き換えることにしたのだ。Amazon Auroraは、低コストで「ハイパフォーマンス」「ハイスケーラビリティ」を実現するクラウドネイティブなRDBサービス。MySQLやPostgreSQLとの互換性もある。「パフォーマンスは申し分ありませんし、メンテナンスのことをほとんど考えずに済むのがAmazon Auroraの大きなメリットです。」(清水氏)

Amazon Auroraに保存したデータは顧客の行動分析にも活用されており、ここでも「ASTERIA WARP」が役立っている。フロントシステムから入ってくる顧客データはRDBMS向けに正規化されているが、それを顧客ごとの分析データに書き換えてAmazon Auroraに保存、さらに分析サービスGoogle BigQuery用に加工してファイルに出力するところまでを「ASTERIA WARP」で自動化している。 「出力されたファイルはロードして、キャンペーン施策やコーチのシフト作成に活用しています。Amazon Auroraと「ASTERIA WARP」の組み合わせでスピーディに分析データを作成でき、マーケティング部門からも喜ばれています」

株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインのシステム構成概要

サービスレベルのムラをクラウドで解消するために

事例のふたつめは、業界屈指のクルマ・ポータルサイト「グーネット」を運営する株式会社プロトコーポレーションだ。同社も「ASTERIA WARP」とAmazon Auroraを採用し、システムのフレキシビリティ向上、高パフォーマンス、低運用コストなどを実現している。

同社は、自動車関連・生活関連の情報を提供する情報サービス企業。クライアントである中古車販売店が中古車物件情報を登録すると、その情報が「グーネット」に掲載され、ユーザに告知される。これらのシステムはスクラッチ開発で、改修を繰り返しながら利用していたため、属人化、複雑化が深刻化していた。また中古車情報Webサイトへの即時掲載要求が高まるなか、データ加工、登録、反映に時間がかかり、ピーク時には掲載遅延が起きるなどサービスレベルにムラが生じていた。そこで同社はETL製品の導入に舵を切り、Amazon AuroraへのDB移行を踏まえて4製品を選びベンチマークテストを実施、なかでもAmazon Auroraへの書き込み処理が他社製品に比べ8倍もの速さを記録した「ASTERIA WARP」を採用することに決めた。

「ASTERIA WARP」の分かりやすさで、DevOpsが実現

AWS上に新システムを構築し(PostgreSQLからAmazon Auroraへのデータ移行にも「ASTERIA WARP」を活用した)、処理プログラムは「ASTERIA WARP」 で新たに開発したフローに置き換えた。「ASTERIA WARP」の開発はグラフィカルで簡単なため、経験のない運用オペレータでも開発に参加できるのが大きな特長だ。同社でも開発担当と運用担当の3名が協力して開発に取り組むDevOpsが実現し、200フローを6ヶ月足らずで完成させることができた。

新システムではAmazon Aurora本来の処理スピードに加え、「ASTERIA WARP」の並列処理機能を利用し8スレッド同時書き込みによる高速化を実現することで、物件登録が集中する夕刻でも遅延なく「グーネット」に中古車情報を反映できるようになった。また「ASTERIA WARP」を採用したことでシステム変更にも柔軟に対応できるようになり、Web項目追加に伴う開発期間は1/5以下に短縮できたという。

株式会社プロトコーポレーション ITソリューション1部 部長 山本 正博 氏(右)、同 主任 張 博 氏(左)

株式会社プロトコーポレーションITソリューション1部の張 博氏は「ASTERIA WARP」とAmazon Auroraの組み合わせについて、次のように語った。 「『ASTERIA WARP』は開発経験のない人がフローを作成できるようなシンプルさを持っているのと同時に、SQL文を直接書き込むこともできるため、DBAなどの専門職が使う場合にも煩わしさを感じさせないツールです。『ASTERIA WARP』とAmazon Auroraの採用により監視業務や障害対応の負荷削減が実現できますので、運用の工数を開発にシフトさせるなど、DevOpsを促進し、今後は積極的に新規開発に取り組んでいきたいと考えています」

株式会社プロトコーポレーションのシステム構成概要

クラウドで提供されている先端技術の恩恵を享受し、ビジネスの効率化やコスト削減を実現している先進事例をふたつ紹介してきたが、いずれもクラウド化に先立ち既存のシステム環境を見直し、整理しているという共通点がある。拙速にクラウド化を推し進めるよりも、現状システムを「ASTERIA WARP」のような連携ツールを利用しながら可能な限り整理・明瞭化させた後、クラウド移行することが結果としてクラウド化成功への近道になることをふたつの事例が物語っている。

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