ツールアプリは「十徳ナイフ」

―― では、いよいよアプリの部分についてお話をうかがいます。WSD-F10は、特徴的なアプリとして「ツール」が搭載されていますね。ツールには「高度計算」「気圧計算」「方位計算」「日の出・日の入り時刻」「タイドグラフ」「活動グラフ」の6つのアプリがありますが、どれもまるで計測機器のように感じられます。

この計測値だけを見ても、それが何を意味するのか、どんな行動に繋げればいいのか、アウトドア初心者にはわからないのでは?

今村氏「WSD-F10は、アウトドアのシーンでどなたにも快適にお使いいただける製品として開発しています。ただし、ツールに関してだけは、実はちょっと違います。たとえるなら、ツールは『十徳ナイフ』みたいなもの。研ぎ澄まされたシンプルな道具をさっと取り出して使うイメージです。それは凄く便利で使い勝手がよく、上質である反面、それぞれの刃物をどう使うのか知らない人には使えません」

十徳ナイフ。アーミーナイフともいう

今村氏「ツールアプリも同じです。仮に気圧が低下傾向にあるとします。これがツールから読み取れる『事実』です。トレッキングをする人なら、雨が降ることを予想してコースの変更を考えたり、雨具を用意したりするかもしれません。一方、フィッシングをする人なら、狙う棚(泳層)を変えるでしょう。これが『判断』や『行動』です。ツールはこの『事実』から『判断』をして『行動』に変えられる人のための機能なのです」

岡田氏「多くの人が、さまざまな環境情報をアウトドアに活用しています。ツールの計測機能は、その中でもよく活用されている環境情報を調査して、搭載するものを決めました。

ツールアプリの思想は、お客さまに何らかの行動を強制したり、アドバイスするものではありません。それは『モーメントセッター』(※)など、別の機能が受け持ちます。ツールは事実としての情報を提供するだけ。それをどう読んでどう生かすかは、お客さまの知識や判断に委ねようと。ツールという名の通り、これはあくまで『道具』なんです」

※「あと30分で日没」「フィッシングタイム(釣り時)まであと30分」「補給しましょう」などと知らせてくれる機能

ツールアプリの使用イメージ(写真左)と機能(写真右)

―― なるほど、そういうことだったんですね。「十徳ナイフ」のようなもの、といわれるとよくわかります。アウトドアに慣れてきたとき、本当に使いやすいのは、こういう機能かもしれない。知識と経験、スキルはどんどん増えていきますからね。

今村氏「ツールアプリは、小さなモニタースクリーンでも見たときにパッと直感的に情報が伝わることを重視して作っています。この小さなスクリーンで瞬間的に何かを伝えるなら、やはりフロントエンドの情報だと思うんですよ」

―― そもそも、時計そのものが時間というシンプルでプリミティブなものを表示するツールですよね。