2016年1月、米ラスベガスで開催された「CES 2016」でお目見えし、国内外で大きな話題となっているカシオのSmart Outdoor Watch「WSD-F10」。後編では、WSD-F10の中身や搭載アプリについてお話をうかがう。前編に引き続き、今村圭一氏、岡田佳代氏、大村明久氏にお付き合いいただいた。
マイクロUSBを充電端子に採用しなかった理由
―― では、WSD-F10の中身についてお話をお聞かせください。スマホとの接続にBluetoothを使用していますが、このサイズの筐体に各種デバイスとBluetoothのアンテナを納めるのは大変だったのでは?
大村氏「そうですね。MIL-STD規格(米国防総省が定める米国軍用規格)をクリアする耐衝撃性能を維持しつつ、バッテリーと各種センサーデバイス、Bluetooth、そしてWi-Fiのアンテナまでを同時に配置するのは苦労しました。シミュレーションをして、また実測してを、何度も繰り返しました」
―― 充電はマグネット端子式ですね。電子コンパス(磁気センサー)を内蔵しながらマグネットを使うというのは意外でした。
今村氏「時計の背面に端子類を置くと、あまりいいことがないんです。アレルギーや腐食などのリスクがあるからです。つまり、充電端子はケース側面に置くしかないのです」
大村氏「しかし、マイクロUSB端子を充電に使おうとすると、5気圧防水を断念しなければなりません。シーリング付きの蓋を付けても、蓋を開け閉めしているうちに、5気圧防水性能を維持できなくなるからです。
そこで端子数を充電用のものだけに絞って上下(の位置関係)をなくし、コード側の端子にマグネットを仕込んで、近付けるだけでパチッと吸い付くようにしました」
―― 非接触式充電は考えなかったのですか?
今村氏「非接触式充電は磁気センサーに影響が出ます。今回は、非接触式で充電できることよりも、コンパスが問題なく使えることを最優先しました。マグネット端子でも磁気センサーは影響を受けますが、充電完了時にできる限り早くキャリブレーションが終わるようにしてあります」
―― WSD-F10はGPSが搭載されていませんが、その理由は?
岡田氏「諸条件を考えて、現時点では搭載しないほうが合理的と判断しました。
というのも、WSD-F10はトレッキング、サイクリング、フィッシングという3つのアクティビティを使用ケースとして想定していますが、スマホをお持ちのアウトドア趣味の方へアンケート調査をしたところ、9割以上の方がスマホを携行し、また約8割の方が現地で実際に使っていることがわかったのです。
であれば、GPSを含むスマホの機能も活用することを前提とし、電力をセーブして実用性を高める方が重要と考えました」
今村氏「WSD-F10は、スマホがあってこそ真価を発揮しますから。ただし、スマートウオッチのGPS搭載については、試作も技術研究もしています。現時点ではスマホからのブリッジングで十分としても、将来については搭載も考えていく必要はあると認識しています」