「ここまでやるなんて、○鹿じゃないの?」

ところで、液晶電卓において、筆者が個人的に気になるのは描画速度だ。電卓の液晶ディスプレイは数字がパッと表示されるより「ふわっと出現する」感覚がある。そのせいで、どうしても長時間使う気になれない。それは改善できないものなのだろうか。

大平氏「どうぞどうぞ。ぜひ試してみてください」(不敵な笑み)

かつて連射が得意だったゲーム名人のごとく、できる限り高速にキーを連打してみると……。おぉ! 描画が速い! 途切れることなく数字が流れていくではないか。ほんの一瞬「数字が表れる」あの感じがない。ほんのちょっとのことなのに、操作の印象がまったく違う。

高速に打鍵してみる。ごくごくわずかな感覚的な部分だが、確かにストレスがない

大平氏「わかっていただけて嬉しいです(涙)。こういう感覚の部分って、写真やパンフレットではまったく伝えられないので、とにかく触って感じていただくしかないんです。でも、実際に触っていただくと、皆さんがいいねって言ってくださるので。苦労が報われた気がしますね」

この快適な駆動をソーラー電源で可能にしていることにも感心する。やはり、高品質なソーラーセルを使っているのだろうか。本格実務電卓に比べるとソーラーパネルも大きく見えるが……。

宇都宮氏「可能な限り、高性能なものを使っています。部屋がちょっと暗くなったら消えちゃった、では困りますから。あと、本当はソーラーパネルを見えないようにしたかったんですが、これはできませんでした。ソーラーパネルを保護するアクリルパネルを暗色にして、ソーラー部分が見えないデザインにしたかったのです。

S100に限らず、開発時にはそういう"一見無理なこと"をたくさん目標に設定します。そして、努力しながら最終的な着地点を探していく。最初から目標が低いと、いい製品は生まれませんから」

企画段階で製作されたモックアップ(液晶の数字は印刷)。ソーラーパネルが見えない外観仕様を目指していたことがわかる