1月半ば、"Kaveri(カヴェリ)"のコードネームで呼ばれるCPUの新製品「A10-7850K」および「A10-7700K」がAMDから発売された。AMDでは、CPUにグラフィックス機能を統合したプロセッサのことを「APU(Accelerated Processing Unit)」と呼んでいるが、KaveriはAPUの最新世代のモデルとなっており、CPUコア・GPUコアの両方が新世代のものに強化されている。

新たなプロセッサの登場に合わせて、BTO PC「eX.computer」を手がけるTSUKUMOも、いち早くこれを採用したデスクトップPCを発表しており、すでに販売を開始している。今回、ミニタワーPC「エアロストリーム」のKaveri搭載モデル「RM5A-B61/E」を、AMDの前世代(Richland)APU搭載機ならびにインテル製CPU搭載機とともに試用することができたので、性能とコストパフォーマンスを早速検証してみたい。

Kaveri、Richland、Haswellをそれぞれ搭載したTSUKUMO「エアロストリーム」

CPU、GPUの両方でアーキテクチャを刷新

Kaveriがどんなプロセッサであるかは、本サイトにもすでに多数のニュースや解説記事が掲載されているので、詳細についてはそちらを参照いただきたいが、簡単におさらいしておこう。

AMDでは近年APUの開発および市場拡大に力を入れており、2011年に最初のモデルが発表された「Aシリーズ」が最近の主力製品となっている。コードネーム"Llano(ラノ)"で呼ばれたAシリーズ最初の製品群以来、"Trinity(トリニティ)"、"Richland(リッチランド)"と世代を重ねてきたが、2012年のTrinityと2013年のRichlandではCPUアーキテクチャが共通だったのに対し、今回のKaveriでは"Steamroller"と呼ばれる新たなCPUアーキテクチャを採用しており、従来よりも一層の性能アップが期待できる。

そして、AMDはCPUだけでなくRadeonシリーズのGPUでも知られているが、このRadeonのパワーをCPUと同じチップの上に統合しているのがAMD製APUの特徴だ。Kaveriでは、単体のグラフィックスカードとして発売されているRadeon R7/R9と同じアーキテクチャのGPUコアを採用しており、CPU内蔵グラフィックス機能としては最高クラスの性能を実現した。もちろん、単体のグラフィックスカードとまったく同じパフォーマンスを得られるわけではないが、「PCゲームに興味があるけど、いきなりグラフィックスカードを買うほどお金は出せない」というライトゲーマーのニーズには十分応えられる水準の性能になっている。

このようにAMD製APU搭載マシンでは、CPUとGPUのバランスがいい性能をワンチップで得られることから、価格が比較的安く抑えられる。エンドユーザーにとってはこのことが一番のメリットといえるだろう。AMDはCPU市場においてインテルとの間でこれまでも熾烈な競争を繰り広げてきたが、近年のメーカー製PCでは、性能よりも価格を最優先したローエンド機種に採用されるケースが多く見受けられていた。しかし、最新のAシリーズAPUの搭載機については、単なるローコストモデルと考えるのは誤りで、グラフィックスを含めた実用的な性能を魅力的な価格で手に入れられる製品と見るべきだろう。

TSUKUMOから発売されたエアロストリームのKaveri搭載機種は、現在2モデルがあるKaveriのうち、上位モデルのA10-7850Kを標準搭載している。定格3.7GHzで動作するクアッドコアプロセッサで、マシンの冷却能力に余裕がある場合には、最大4.0GHzまでクロックアップする「Turbo Core テクノロジー」に対応している。BTOオプションで下位モデルのA10-7700K(3.5GHz、Turbo Core利用時最大3.8GHz)を選択することも可能だが、価格差が2,100円しかなく、CPU部分の動作周波数のみならずGPUの演算ユニットが25%削減されているので、おそらくほとんどのユーザーはA10-7850Kを選択することだろう。また、いずれも動作速度の倍率がロックされていない「Black Edition」のAPUであるため、あくまでメーカー保証外にはなるが、知識のあるユーザーはオーバークロック動作による、さらなる性能アップを楽しむことも可能だ。

今回のベンチマークテストの対戦相手としては、ひとつ前のRichland世代で最上位だったA10-6800Kと、ライバルであるインテルのCore i5-4670(Haswell世代)を搭載したエアロストリームミニタワーモデルが、TSUKUMOから提供された。いずれもBTO構成のため、まったく同じ仕様の製品が同社のWebサイトに掲載されているわけではないが、最新のAMD APU、前世代のAMD APU、そしてインテルのCPUを比較するには妥当な構成といえるだろう。

機種 RM5A-B61/E Richland搭載モデル Haswell搭載モデル
CPU A10-7850K Black Edition
4コア
3.7GHz~最大4.0GHz
(Kaveri)
A10-6800K Black Edition
4コア
4.1GHz~最大4.4GHz
(Richland)
Core i5-4670
4コア
3.4GHz~最大3.8GHz
(Haswell)
グラフィックス Radeon R7 Graphics Radeon HD 8670D HD Graphics 4600
マザーボード MSI A78M-E35 MSI FM2-A75MA-E35 GIGABYTE GA-H81M-D3V
チップセット A78 A75 H81
メモリ SanMax SMD-8G28C1P-16KM (8GB×1)
HDD Seagate
ST1000DM003
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WD10EZRX
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Core i5-4670でこの構成をオーダーする場合、今回のKaveri搭載モデルよりも3,500円ほど高くなる。インテルのHaswellと同等ないしやや低価格な構成で、Kaveriがどこまでの性能を発揮できるか、実際に確かめてみよう。