11月末にGIGABYTEから発売された超小型ベアボーンキット「BRIX」の新モデル。前回の記事では、製品の仕様と実際の組み立て方法、パフォーマンスについて詳しくチェックしてみたが、今回はこのマシンにどんな使い方があるか、考えてみよう。

手のひらにも収まる超小型ベアボーンキット「BRIX」の新モデル

手の上にも乗る約11cm四方のコンパクトなサイズ

エントリーモデルは低価格、ファイルサーバやVPNにも最適

まず考えられるのは、低消費電力という特性を活かした常時起動用のマシンだろう。モバイルPC用のパーツを利用しているBRIXでは元々かなりの省エネ設計だったが、新モデルではCPUが"Ivy Bridge"世代から"Haswell"世代へと刷新されたことでアイドル時の消費電力はさらに下がっている。使い方によるが、Windowsを起動していても操作を加えていない状態なら消費電力は10W程度と、小型蛍光灯1本と同水準に抑えられている。これなら24時間常に起動させたままにしておいても1日あたりの電気代はおおむね6円前後で、家計への影響もほとんど気にならない。

外付けHDDを使うという選択肢もそれはそれで悪くない

常時起動マシンの代表的な用途として挙げられるのがファイルサーバーだ。家庭内に複数のPCがあり、さらにはネットワークにつながったテレビやHDDレコーダーなどがある場合、BRIXに音楽や動画のファイルを保存しておけば、どのマシンからでもそれらのファイルを再生して楽しむことができる。BRIXはmSATA接続のSSDモジュールしか内蔵できないため、本体のみの場合格納できるファイルの容量は限られるが、新型BRIXのUSBポートはすべてUSB 3.0に対応しているので、増設した外付けHDDにも高速にアクセスできる。ストレージを外付けHDDにするとBRIXの"超省スペース"という特徴は若干スポイルされるものの、外出先へ大容量のファイルを持ち出したいときにはドライブだけを取り外して携帯できるというメリットもあるので、これはこれで悪くない。

また、常時起動しているBRIXでVPNソフト(例えばSoftEther VPNなど)やリモート操作ツール(TeamViewerなど)を動かしておけば、外出先からインターネットを通じてBRIXの操作や自宅LANへのアクセスが可能になる。セキュリティ面には十分気をつける必要があるが、出かけるときに持ち出すのを忘れてしまったファイルへ外からでもアクセスしたり、特定のアプリケーションでないと開けないデータをタブレットから編集したりと、便利な使い方が可能になる。自宅に1台いつも動いているマシンがあると、PCもモバイル機器も、利用の幅が大きく広がるだろう。

前回はBRIXのCore i5搭載モデルおよびCore i7搭載モデルを紹介したが、このような用途であればCPUパワーはそれほど重要ではないので、実売2万円台で購入できるCeleron搭載モデルでも性能的には十分だ。電気代の安さともあいまって、コストパフォーマンスの高い投資になりそうだ。

HDDレコーダーや音楽プレイヤーとしても

TVチューナーとの連携でも広がる利用方法。屋内でも屋外でも、大量の映像ファイルを楽しめるのだ

また、ファイルサーバーとしての使い方を発展させるような形だが、最近はUSB接続のフルセグTVチューナーも多数発売されており、BRIXをHDDレコーダー代わりに活用することも可能だ。録画と同時または録画終了後自動的に番組をエンコードし、モバイル機器で再生できる形式に変換・圧縮する機能を持つチューナーもあるので、そのような製品を利用すればBRIXにはいつでも外へ持ち出せる形式で動画ファイルが蓄積されるので便利だ。このような用途の場合はCPUパワーを要することがあるので、Core i5などの上位機種を選択しておくのが良いだろう。



"スピーカーを付け加える"という単純なアイデアでもスペースを取らないハイスペック音楽マシンへと早変わりする

BRIXの新モデルでは、本体に音声出力端子が搭載されたのも大きな特徴のひとつだ。夏に発売された初代モデルには音声出力がなかったため、HDMIまたはDisplayPortからスピーカー付きのディスプレイに接続するか、別途USBサウンドデバイスなどを利用する必要があったが、今回の製品では単体で音楽再生などを楽しめるようになった。この端子は通常のヘッドフォン出力と、デジタル出力であるS/PDIFの兼用となっている。最近は、ポータブル音楽プレイヤーの音声出力をより高音質で楽しむためのポータブルアンプがオーディオファンの間で人気商品だが、そのような機器と接続してリスニングを楽しむのもありだろう。

HD映像を飛ばすことも可能な時代。小型でハイスペックなBRIXに夢は広がる

(ワイヤレスで10メートルのレンジにフルHDを転送できるSkyVision WS100同社Webサイトより)


車載など家の外でも活躍

異色の使い方としては、車に乗せて車載エンタテインメントマシン、車載情報端末として使うという手もある。小型のマザーボードを使った自作PCを自動車に搭載するという使い方はこれまで多くのマニアたちによって試みられてきたが、マシンの設置スペースをどうするか、そして電源をどのように確保するかといった点が課題となっていた。

BRIXのサイズならば、シート下のわずかなすきまにも簡単に収めることができるし、車によってはセンターコンソールの空きスペースや、熱の問題さえなければグローブボックスの中にも設置できるだろう。また、省電力なBRIXならば、シガーライターソケットに接続するインバーターで電原供給も十分可能。短時間ならノートPC用の大容量モバイルバッテリーを使用するという手もある。

車内ではマウスを使用するスペースもないので操作をどうするかという問題があったが、OSがWindows 8となってタッチ操作にも最適化された今なら、小型のタッチパネルディスプレイを用意すれば比較的簡単に操作が可能だし、本体には直接ディスプレイを接続せず、タブレットからリモートデスクトップで接続して使うことも可能だ。スマートフォンやタブレットの普及によって、車載IT環境の改善は大きく進んだが、例えばWebカメラで撮影した映像を高画質でUSTREAMに流したいといったニッチなニーズを満たすには、やはりPCが必要になるので、場所を問わずにパワフルなマシンを設置できるというメリットは大きい。

BRIXほどマシンが小型・省電力になると、その利点は単に省スペースであるということだけでなく、これまでのデスクトップPCともノートPCとも違う使い方が可能になる点にあると言えるだろう。今回検討してみたのはあくまでBRIXの応用例のほんの一部であり、ユーザーの想像力で可能性は大きく広がる。活用法を考えること自体も楽しい製品と言うことができるだろう。

(マイナビニュース広告企画)

[PR]提供: