自作パソコンのへービーユーザーが、「不具合があったらまず電源を疑え」と語るくらい、電源というパーツは、数ある自作パーツの中でも重要なパーツのひとつだ。これは、実体験を伴って受け継がれてきた教訓のような言葉で、実際に、電源に起因する不具合というのは頻繁に起こりえる。不具合だけではなく、電源の供給状態の良し悪しが、肝心のパソコンの性能に直結するケースも存在しうる。
一方で、いざパソコンを自作しようとなった時に、CPUやグラフィックスカードを気にする度合いに比べれば、電源はその選定がないがしろになりやすいという現実もある。これは、店頭で入手できる電源が、同じワット容量だけで見比べた中でも、数千円~数万円まで価格帯が広く、さらに製品数まで大量に並んでしまっていて、しかも悪いことに、大抵の電源は、ワット容量さえあっていれば動くだけは動いてしまうことが多い、という、選び方の基準とすべき焦点がボケがちになってしまう現状のせいもあるだろう。
しかしながら、前述の用に電源は決して軽視してはいけない、むしろとても重要なパーツなのだ。高性能で高価なパーツや、こだわりのパーツを組み込んだ、大切な自作パソコンの中身、通電しうる全ての部位は、この"電源"の影響下にあるということを忘れないで欲しい。言葉は悪いが、電源は、まさに「安物買いの銭失い」にぴったり当てはまるパーツなのだ。本稿では、電源選びの一助となるべく、編集部がオススメする高品質な電源を紹介しておきたいと思う。
80PLUSへの準拠は最早あたりまえ
今回紹介する電源は、ENERMAXの「REVOLUTION87+」シリーズから、定格容量750Wのモデル「ERV750AWT-G」だ。ENERMAXは高品質路線の電源メーカーとしては古くからの定番メーカーで、現在の最新ラインナップでは、この「REVOLUTION87+」シリーズは、大きく分けて最上位の「Platimax」シリーズに次ぐ高性能電源として位置付けられている。容量別に下は550Wから、上は1000Wまで豊富なモデルを揃えており、今回は最新のPCパーツ構成をもっともバランス良くカバーできると考えられる750Wモデルを取り上げている。
ENERMAXの「REVOLUTION87+」シリーズから、定格容量750Wのモデル「ERV750AWT-G」を紹介したい |
「ERV750AWT-G」の製品パッケージ。5年間もの長期間ワランティのシールがついている時点で、品質に自信アリということだろう |
さて、本モデルでまず注目したいのは、「80PLUS GOLD」への準拠である。「80PLUS」とは、簡単に説明すると、電源ユニットの変換効率が「80%」以上であることを表していて、外部機関の認証プログラムを通して付与される電源の効率の良し悪しを示す証明書のようなものだ。詳しくはこちらの80PLUSプログラムのサイト(英語)が詳しいので、興味があれば確認してみるとよいだろう。
この認証には「80PLUS」「80PLUS BRONZE」「80PLUS SILVER」「80PLUS GOLD」「80PLUS PLATINUM」とランクがあって、PLATINUMを筆頭にランクが上位であればあるほど、電源としての品質が高いかどうかという目安にすることができる。効率が良いということは、交流入力に対して直流出力の損失が少ないということで、単純に省電力であると判断できるし、損失が少なければ、変換時の損失の大きさによって生じる発熱や、回路部品の劣化を抑える効果も期待できるからだ。
80PLUSの概要 | 負荷20%時 | 負荷50%時 | 負荷100%時 |
---|---|---|---|
80PLUS | 効率80% | 効率80% | 効率80% |
80PLUS Bronze | 効率82% | 効率85% | 効率82% |
80PLUS Silver | 効率85% | 効率88% | 効率85% |
80PLUS Gold | 効率87% | 効率90% | 効率87% |
80PLUS Plutinum | 効率90% | 効率92% | 効率89% |
ちなみにではあるが、実はERV750AWT-Gは、メーカーではGOLD準拠として製品化しているが、実は「80PLUS PLATINUM」認証を通った製品だったりもする。こちらの80PLUSプログラムの公式サイトのPLATINUM認証の項で確かに確認できるのだが、なぜ製品ではGOLDなのか、同社担当者に聞いたところ、その理由は上位モデル「Platimax」シリーズとの差別化のためなのだそうだ。ERV750AWT-Gは、認証からもわかるとおり品質は80PLUS PLATINUM準拠なのだが、80PLUSにPLATINUM以上のランクが存在しないため、同社ラインナップ上位でPLATINUM認証のPlatimaxシリーズと分けるために、マーケティング上の理由でGOLDにしているだけなのだそうだ。
独自の設計で実利のあるスペックを内蔵
さて、先に簡単に説明した80PLUSの話だが、80PLUSはあくまでも、定量評価で最低限の品質を実現できているかどうかの"目安"として見るべきものだ。例えば、同じ80PLUSクラスでも、製品によって販売価格が大きく違う例も、店頭ではよく見られるだろう。実際には、より高品質で安定した電源を選ぶには、80PLUSだけはなく、さらにその電源の細かなスペックも確認しておく必要がある。CPUを選ぶ際、例えば2GHzとか3GHzだとかいった動作周波数だけではなく、コアの数だったりIPCの違いだったりと、そのアーキテクチャの違いまで確認しておかないと、性能の高低の判断はできないのと似たようなことだ。
REVOLUTION87+(ERV750AWT-G)は、流石にENERMAXの最新製品ということもあり、電源としてのスペックが理にかなって優秀な内容となっている。ざっと紹介しておくと、まずは実装コンデンサだが、50℃の高温化でも安定した電圧を実現できる日本製の105℃電解コンデンサを装備し、大きな電圧変動を受けても劣化しない電極箔に加え、低抵抗電解液の採用により超低ESR・超低インピーダンスも実現している。同社独自のDHT技術による安定した出力や、万が一のトラブルでも内部パーツを守る各種豊富な保護回路の存在も魅力だ。最新CPUのC6ステートなどに対応できる出力0Aから立ち上がるZERO LOAD(0W)デザインも、もちろん採用している。なお、耐久性と安定稼動の実データとしては、50℃の環境下で24時間×7日間ノンストップ稼動が可能とされており、これは産業用電源クラスの水準とされる、厳しい基準にまで到達しているものだ。
使い勝手の面で見てみると、必ずつなぐ必要があるメイン24ピン等を除く、パーツ構成によって必要数が異なる出力系の各ケーブルが、着脱可能なモジュラー方式になっているというのが嬉しいポイントだ。ケース内のケーブル取り回しは、特に大容量電源になるとケーブル本数がかさみ、煩雑になりがちだが、このモジュラー方式のおかげでスマートな内部配線をしきやすくなっている。また、静音性の面でも、139mmと大口径の冷却ファンを、80PLUS GOLD(実はPLATINUM相当)の高効率低発熱の効果もあいまってか、550~1200rpmの低速で回転させているので非常に静かだ。
ERV750AWT-Gは、例えばCPUにIvy Bridgeプロセッサの上位モデル、GPUにKepler世代のGeForce GTX 680を搭載する現在最新の構成にぴったりのスペックと容量だろう。定格750Wは上記構成には少し大きめではあるが、将来GPUをデュアル構成にするとか、といったステップアップにも十分耐えられ、ERV750AWT-Gの耐久性の高さもあるので、数年は末永く使うことができるだろう。定格750Wといっても、これは許容できる最大の電力であり、実際の電力は変換効率を踏まえた上での"使った分だけ"しか消費しないので、定格容量が大きめの電源を買ったからといって電気代が増えるわけでもない。将来のステップアップで原電を流用できる分、多少初期コストはかさんでも大きめの容量の電源を買っておくと無駄が少ないことが多いだろう。1000Wクラスは結構な値段となるので、750W前後の電源は現在のパーツ市場ではバランスがいい容量帯だ。
オーバークロッカーなど極限を極めるなら
REVOLUTION87+のERV750AWT-Gシリーズは、一般的なパフォーマンスユーザーに幅広くオススメできる製品ということで取り上げたが、最後に、極限のパフォーマンスに挑みたいユーザー向けの電源も少しだけ紹介しておきたい。それが、REVOLUTION87+シリーズの上位モデルで、ENERMAXのフラグシップ電源シリーズである、Platimaxシリーズの「EPM1000EWT」だ。
Platimaxシリーズはどれもハイエンドなモデルがラインナップされているが、中でも特にEPM1000EWTは特徴的なモデルだ。定格容量は1000Wで、容量的にはさらに上のモデルもPlatimaxシリーズに存在するが、EPM1000EWTは唯一「SUPER OVERCLOCK EDITION」と銘打たれた特別モデルとなっている。
最大の特徴は1系統にまとめられた+12Vで、なんと1系統で83A(996W)の大出力が可能となっている。この+12系統の用途はもちろんオーバークロックだ。最新の高性能CPUや、ハイエンドGPUのデュアル構成をオーバークロックする際、このクラスの大出力を供給可能というのは大きな武器になるだろう。さらに、多重保護回路や整流回路で、大容量だけでなく安定・安全供給にも配慮した仕様となっている。一般的ではないモデルかもしれないが、一度は挑戦してみたいハイエンドな電源と言えるだろう。
・ENERMAX (クーラージャイアント)
http://www.enermaxjapan.com/index.html
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