これまでデザイナーに丸投げしていたWebサイトや広告物のバナー、販促チラシなどを、自分のセンスで、しかも簡単に選べるクラウドデザイン作成サービス「Canva」が日本に上陸した。

企業向け「Canva for Work」では有償デザインも一部利用可

Canvaはオーストラリア・シドニー発のWebサービスで、2013年より提供されている。5月24日にKDDIウェブコミュニケーションズと独占業務提携契約を締結し、日本語版をリリースしたことで全世界25カ国語に対応、1000万ユーザーがCanvaを利用しているという。

日本語版が存在していなかったにも関わらず、これまで5万人が国内で利用しており、日本語版の登場が待たれていた。デザイン作成は、プロが作成したテンプレート・デザインから好みのものを選択・編集できるため、誰でも気軽に、簡単にクリエイティブを用意できる。また、テンプレートもSNSの投稿サイズからポスター、年賀状まで、幅広い形状、縦横比にあわせて変更できることで、細かいニーズに対応する。

デザイナーではない人であっても、手軽に低コストで高品質なデザインを利用できる

Canvaは基本的に無料で、有償のデザイン、テンプレートなども用意されている。一方で企業向け管理機能を付加した有償版「Canva for Work」では、月額9.95ドルで有償デザイン、テンプレートの一部(30万点以上)が利用可能になる。50名以上のメンバーと利用するテンプレートの共有が可能になるほか、自社のクリエイティブを無制限でアップロードできる。

これに加えて、企業ではブランドカラーの統一が重要になることから、カラーパレットの共有設定が可能となる。現時点ではドル決済のみだが、「今後日本円での決済対応も予定している」(KDDI ウェブコミュニケーションズ 代表取締役副社長 高畑 哲平氏)としていた。

記者説明会で行われたデモンストレーションでは、通常のスクエア素材をTwitterやFacebook、Pinterestなどで最適に表示されるデザインタイプに変更する操作が行われた。また、直近でリリースしたというGIF動画化機能では、デザインにアニメーションを付け加えることで、日々流れる各SNSのフィード上で目を引くようにアクセントを加える様子が見て取れた。

Canva for Workで利用できるマジックリサイズは、SNS別に最適な形状にリサイズ・リデザインしてくれる

ほかに、面白い事例ではプレゼンテーションテンプレートが用意されており、高いデザイン性で他者との差別化を図るだけでなく、MacであればKeynote、WindowsであればPowerPointといったようなプラットフォーム間で利用するパワーポイントの差を埋めるべく、Web公開にすることで「Canva上で作ればWebサイトを見る感覚でプレゼンテーションができる。このお陰で、ファイルのやり取りに制約のある行政機関などを相手にするプレゼンテーションもスムーズに行えた」(高畑氏)。

またKDDIウェブコミュニケーションズでは、単なる日本語ローカライズだけでなく、「Print」機能や日本の商慣習に適したデザインレイアウトの拡充、日本語フォントの拡充を目指していくという。Print機能は、高品質な印刷業者にクラウドから直接発注できるようにできる機能で、パートナー契約は今後詳細を詰めていく予定だという。印刷後のロジスティクスや費用負担などの問題もあることから、しばらくかかる見込みだ。

Print機能

一方でデザインレイアウトの拡充は、「単純な和テイスト(縦文字など)にすればいいというわけでなく、日本は英語の混在、日本語だけなど、デザインのレイアウトに多様性があって最適化が難しい。スクラッチで作らなきゃいけないのではなく、テンプレートが自由に使えるのがCanvaの魅力であり、いかに最適なレイアウトをたくさん提供できるかが重要」(高畑氏)とのことで、年度内に1万件のレイアウトを用意する考えだ。

またこれに加えて、日本語フォントも現時点で28の日本語フォントが利用できるが、モダンで販促物などにもよく利用されている「モリサワフォント」も「協議中、できれば利用できるようにしたい」(高畑氏)とのことで、さらなるフォント拡充を目指すという。

国内向けレイアウトも年度内に1万点に拡充する

年度内に100万ユーザー目指す

KDDIウェブコミュニケーションズは、これまで130万人が利用するECサイト作成サービス「Jimdo」やクラウド電話API「Twilio」など、中堅中小企業向けの海外スタートアップサービスのローカライズ提供を続けてきた。

今回のCanvaについては「Jimdoは、Webサイトを簡単に作れるものの、そこに載せるクリエイティブが作れない課題があった」(高畑氏)ことから、Canvaに目をつけたという。同社の担当者は、Canva側から「日本への展開がまだ早い」という回答を受けていたものの、「今からオーストラリアに行く」と話し、実際に会うことで口説き落としたという。