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必要なのは主体性 - 従業員の個人事業主化を進めるタニタの狙い

[2021/10/18 09:00]末岡洋子 ブックマーク ブックマーク

「健康をはかる」をキーワードにさまざまな事業を展開している健康総合企業のタニタ。積極的な事業展開の背景には、同社が2017年に着手した働き方改革が関係しているかもしれない。単なる労働時間短縮とは異なり、「個人の主体性を高める」という視点で進めているプロジェクトはどのようなものか。

9月9日に開催されたTECH+フォーラム「バックオフィス業務改革 Day 2021 Sept.」に登壇したタニタ 経営本部社長補佐/合同会社あすある 代表社員 二瓶琢史氏は、「タニタの考える働き方改革~日本活性化プロジェクト~」と題し、同プロジェクトの詳細について解説を繰り広げた。

“自分で魚が獲れる働き手”になるには?

「社員が自分で魚を獲ることができる自立した個人になれば、会社と個人の関係は”抱え込み”から”惹き付け合う関係”に変わるのでは」――タニタの働き方改革プロジェクトの起点には、同社の代表取締役社長である谷田千里氏のそんな想いがある。これを受け、2016年に二瓶氏が体系化を進め、2017年にプロジェクトは始まった。

題して「日本活性化プロジェクト」。会社の経営は良いときも悪いときもあり、優れた人材は経営状態が悪くなると(家族のためなどの事情により、やむを得ず)去っていくことが少なくない。だが、もしその個人が”魚の獲り方”を知る自立した個人事業者ならば、苦しい状況を支え合う関係にもなり得るのではないか。一方、働く側から見ると、言われたことだけに取り組むのでは仕事はつまらない。やりたい仕事に自発的に取り組んでいくほうが、生き生きと働けるはずだ。

二瓶琢史氏

タニタ 経営本部社長補佐/合同会社あすある 代表社員 二瓶琢史氏

そこで、社員が一旦退職し、雇用関係を終了した上で個人事業主としてタニタと業務委託契約を結んで仕事を遂行する、というのがこのプロジェクトの趣旨だ。個人事業主なら、働く時間や場所の制約はなく、自分で効率を考えて仕事をすることになる。自由度は増すが、覚悟を持って自立することが必要だ。「このような仕組みが広がれば、日本全体が持続成長のスパイラルに乗るのではないか」という発想から、「日本活性化プロジェクト」と命名された。

日本活性化プロジェクトにより、「個人の主体性が高まることに加え、ライフスタイルに応じて働き続けることができる仕組みにもつながる」と二瓶氏は説明。ただし、「従来の雇用契約を否定するわけではなく、雇用契約に加えて業務委託契約という新しい選択肢を加えた」と言い添えた。

3年契約を毎年更新することで会社も個人事業主も安定

日本活性化プロジェクトに対しては、不安や懸念、もちろん反対もあった。社員からは収入や社会保障に関する不安の声、経営層からは組織が崩壊するのではという意見が出たという。

そこで、二瓶氏は緩やかにプロジェクトを進める”ソフトランディング”戦略で進めていった。そのポイントは、2つある。

1つ目のポイントは、初回の業務委託契約の業務内容と報酬設計だ。会社と個人の双方が安定するように、そのときの職務に基づいた委託業務の内容を「基本業務」とし、個人事業主に転じる直前の給与と賞与をベースに固定報酬となる「基本報酬」を定める。追加で業務をした場合は「成果報酬」としてその分の報酬が支給されるようにした。

会社側から見ると、これまで人件費としてかかっていた総枠にざっくりと収まるかたちとなる。個人事業主となった元社員は、これまで給与所得だったものが事業所得となり、自己研鑽や情報収集をはじめとする種々の支出を個人の経費として処理することもできる。

社会保障については、個人事業主なので厚生年金から離脱することになる。だが、代替となりそうな準公的な保険(国民年金基金や個人型確定拠出年金、小規模企業共済など)は存在する。報酬設計時に給与と賞与だけでなく、これらの保険を購入できる金額を上乗せしているという。同時期に、フリーランス向けの賠償責任保険、福利厚生などを用意するフリーランス協会が設立されたことも心強い要因となった。

「黙っていても保険に入れるということはなくなります。しかし、自分や家族、パートナーに必要な社会保障を自分で考えて組み立てるという意識も自立につながるものと考えます」(二瓶氏)

2つ目のポイントは契約期間である。会社と個人事業主となる社員の双方にとって安心できる仕組みとして編み出したのが、原則3年契約・1年更新というルールだ。毎年、業務内容と報酬額について合意して向こう3年の契約を交わしておく。これにより、ある年の更新協議で、どちらかが合意しなかったとしても契約期間は2年残っているため、個人事業主にしてみれば当面の仕事・収入を確保でき、会社側は現在の仕事の引き受け手が急になくなるというリスクを回避できる。

とはいえ、個人事業主となると住宅ローンへのハードルが高くなるなど、熟考すべき点もある。そこで、タニタでは個人事業主への移行を年に1回のイベント形式で進めているという。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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