今年7月に東京・浜松町に位置する本社オフィスの一部をニューノーマル時代の働き方を実現する「つなぐオフィス」としてリニューアルオープンしたコニカミノルタジャパン。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークをはじめ在宅勤務がコロナ以前よりは普及し、本来あるべきオフィスの定義について再考がなされ、実際にオフィス減少の舵を切る企業も少なくない。そのような状況下において、なぜコニカミノルタジャパンは”つなぐオフィス”を発表したのか。その意図と狙いについて話を聞いた。

コニカミノルタが感じたテレワークの実態とは

まずは、以下の動画をご覧いただきたい。コニカミノルタジャパンが7月にオープンさせた「つなぐオフィス」の動画だ。


同社では2013年から働き方改革の取り組みを開始し、最適なオフィスデザインやICTインフラ整備に加え、オフィス内に文書を保管しない「保管文書ゼロ化」などの施策を展開。2017年からはテレワークの運用を開始しており、新型コロナウイルス感染症の影響下においても速やかに在宅勤務へと移行したという。

2021年1月にテレワークの活用率を業務の生産性に関する全社アンケートを実施したところ、68%の社員が週の半分以上テレワークを活用し、82%の社員が「出社時より向上した、または出社時の業務生産性を維持している」と回答した。

一方で、2020年3月から出社規制を実施し、テレワーク開始から3か月後と同10か月後を比較すると孤独感を感じる社員が4%増加しており、オフィスならではの価値に気付いた社員も多いという。リモートでは感じ取りにくい人柄やその場の雰囲気、偶発的なコミュニケーションなど、心の距離を縮めたり、つながったりする場所としての価値をオフィスで高めていきたいと考えているということが浮き彫りになった。

テレワークにおける課題の概要

テレワークにおける課題の概要

首都圏では20%程度の平均出社率を維持しつつ、8割の社員が生産性を維持または向上できているという結果が出ているものの、オフィスに出社する価値については「円滑なコミュニケーションの実現」や「組織マネージメントの効率化」など、多くの社員がオフィスで働くことの価値を感じていることが分かったという。

これらの結果を受け、同社の空間デザイン部ではテレワークとオフィス出社のそれぞれのメリットを理解したうえで、どちらか一方に集約するのではなく、その日に実現したい業務目的に合わせて両方の働き方を柔軟に使いこなすハイブリッドな働き方を模索した。

テレワークでチャンスが減少している可能性も

現状において、同社は複合機にかかわるソリューションが主力となっているが、それ以外(ICT、ドキュメントコンサルティング、空間デザイン)のビジネスを成長させていくことにもフォーカスしている。

その一環として、空間デザイン部は自らが自社実践を通じて働き方を変えるためのオフィスデザインを手がけ、これまで得た知見、経験、失敗などを顧客と共有することで、同社の価値を提供。ただ、空間だけでは不足するため、紙に縛られない働き方やICTの導入などをワンストップで支援している。

コニカミノルタジャパン マーケティングサービス事業部 空間デザイン部 部長の宮本晃氏は「従来からのオフィスのみ、そしてパンデミックにより活発化したテレワークのみの働き方には課題があり、将来を見据えた取り組みとして、まずはつなぐオフィスを整備しました。テレワークの場合、若手・新卒社員はスキル習得への不安や評価への不安、孤独感・メンタルケア、コミュニケーションができないという課題を感じています」と指摘。

コニカミノルタジャパン マーケティングサービス事業部 空間デザイン部 部長の宮本晃氏

コニカミノルタジャパン マーケティングサービス事業部 空間デザイン部 部長の宮本晃氏

さらに、定型的な業務はテレワークでも可能だが創造的な業務の割合が少なかったのではないか、ということが宮本氏の見立てだ。実際に、同氏がテレワークしているときよりも、オフィスに出勤しているときの方が相談が多くなったほか、気軽なコミュニケーションが生まれ、それが仕事になる可能性も高かったという。

このようなことから、同氏は「8割は満足しているようでも、自発的に仕事を作るようなチャンスは減少しているのではないかと感じています。自分がやらなければならない仕事だけ、という側面もあるため8割なのではないかと思います。若手の不安やゼロイチを生み出す業務ができない、仕事を作る会話が不足するなど、そもそもそのこと自体を認識していないかもしれません」と危惧する。