中堅/中小企業などで見られる、情報システム部門が1人しかいない「ひとり情シス」。新型コロナウイルス感染症の拡大は各業界/業種に影響を及ぼしており、ひとり情シスもさまざまな判断や対応を迫られたはずだ。コロナ禍において、ひとり情シスはどのように動いたのか、そしてそのなかで見えてきた問題は何か。

8月20日に開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「ひとり情シスの在宅環境づくり」では、ひとり情シス・ワーキンググループの座長で『ひとり情シス』(発行:東洋経済新報社)の著者でもある清水博氏と『「ひとり情シス」虎の巻』(発行:日経BP社)の著者である黒田光洋氏が、ひとり情シスの現状や今後の行動指針について解説した。

78%のひとり情シスが「忙しくなった」

ITインフラの再構築やリモートワークの環境づくりなど、コロナ禍を受けてここ半年ほど多忙な日々を送っているひとり情シスの方も多いだろう。講演ではまず初めに清水氏がコロナ禍におけるひとり情シスの状況を説明した。

清水氏

ひとり情シス・ワーキンググループ 座長 清水博氏

清水氏が発起人となり座長を務めるひとり情シス・ワーキンググループは、今年2月に発足。事業継続やリモートワークの環境構築、売り上げ低減に伴うコスト削減/IT要員の減少/異動など、ひとり情シスたちが現在直面している課題を議論していくことがその目的だ。

一般的に300名以下の独立系中小企業では、ひとり情シスや専任担当者を設置しない「ゼロ情シス」となっているケースが多い。同ワーキンググループが実施した、従業員50名から500名の約11万社の企業の情報システム担当者に対する調査「ひとり情シス実態調査」(有効回答数1435名)によると、コロナ禍を受けて、社内のITが合理化/自動化されたことにより、100名以上の企業におけるゼロ情シスの割合は、5.5%増加したという。

この結果に対して清水氏は「こうした状況にある企業は、ITインフラを集約しなければならないなどのコロナ禍による課題への着手が遅れてしまっている。その場限りの対処療法になっており、潜在的な問題を抱えている」と指摘する。

ITインフラは社内にあるべきもので、社外に持ち出すことは例外として構築されてきた前提が、近年大きく変わりつつある。さらに、クラウドを継ぎ足すことなどによりIT環境が複雑化し、見えないリスクも高まっていると言える。特にローコストオペレーションが余儀なくされる中堅/中小企業においては、複雑なIT環境を抱えたままでは今後のコロナ対策は困難となる。

ワーキンググループの調査によると、老朽化未整理のITインフラや情報漏えいリスクなどが原因となり、リモートワークを本格導入できない企業数は83%にも上る。一方で、コロナ禍以降、78%のひとり情シスが以前より業務が忙しくなったと回答している。さらに、潜在転職希望のひとり情シスは42%。17%は実際に転職活動中だという。

「コロナ禍では転職意欲が旺盛で、企業の採用希望熱も高まっています。一方で、ひとり情シスを抱えた会社にとっては人材が流出し困ってしまう事態になるかもしれません」(清水氏)

調査結果

ひとり情シス・ワーキンググループによる「ひとり情シスの実態調査」結果