起業を成功させるには何が必要なのか。

5月31日に開催されたIT Search+スペシャルセミナー第117回「初代バチェラーにして元有名外資コンサルタント 久保裕丈氏による 起業&マーケティング 新戦略論」では、この問いに対する一つの答えが語られた。

登壇したのは、個人/法人向けに家具のサブスクリプションサービス「CLAS」を展開するCLAS社で代表取締役社長を務める久保裕丈氏。同氏については、恋愛リアリティ番組「バチェラー・ジャパン」の初代バチェラーとしてご存じの方も多いだろう。

番組のイメージから”イケメンセレブ”の印象が強いかもしれないが、久保氏は大学卒業後、経営コンサルタントとしてさまざまな企業の全社戦略策定や企業買収を手がけた後、女性向け通販サイトを運営するMUSE & Co.を設立。同社を2015年に売却した後は、個人で数十社の企業顧問を担当し、現在はCLAS社で家具のシェアリングという新しい領域に切り込む気鋭の実業家でもある。

そんな久保氏が自身2度目の起業にあたり、家具のサブスクリプションサービスを選んだのはなぜなのか。そして、それをどのような方法論で成功に導いたのだろうか。

なぜ「家具のサブスク」だったのか?

「家具は引っ越しなどの際に捨てられることが多く、そのたびに粗大ごみが増え、環境にも良くありません。家具を捨てない社会を実現することで、環境問題に対しての一助にもなります」

――久保氏が家具のサブスクリプションに着目した理由の1つは、「自分がそうしたサービスを欲しいと思ったから」だという。

CLAS社で代表取締役社長を務める久保裕丈氏

一度買った家具も、永久に使うわけではない。引っ越しや結婚などでライフステージが変化すれば、必要な家具も変わっていく。その都度家具を買い換えるのは想像以上にコストがかかるのはもちろん、高い買い物で失敗したくないという思いから、長い期間頭を悩ませるケースもあるだろう。

CLASのメリットは、そうした家具の購入や処分にかかるコストを下げられることだ。また、期間中に交換もできるため、模様替えなども気軽に行える。

上述のように、久保氏が家具ビジネスを選んだ理由の1つは「自分自身が家具レンタルサービスを強烈に欲していた」からだ。そして、もう1つの理由は、アンケート調査などで家具レンタルの需要をリサーチする中で明らかになった「興味深い結果」にある。

「アンケートの中で好きな家具のブランドやショップを聞いたところ、6割くらいが無回答だったのです。挙がったとしても、大手のインテリアショップ名くらいでした。それを見たとき、『このビジネスは勝ち目がある』と確信しました」(久保氏)

ファッションなら多くの人が好きなブランドを持っているのに、家具になると途端に少なくなる。これはつまり、家具業界に対する一般の人のリテラシーが極端に低いということを表している。

「ユーザーリテラシーが高い業界で勝負するのは簡単ではありません。例えばファッション業界はユーザーのリテラシーも期待値も高く、最初から高いサービスの完成度が求められます。そこで勝つためには相当な投資も必要で、ベンチャーには難しいのです」

家具、それもサブスクリプションサービスとなると仕入れや維持のコストが大きいため、企業は手を出しにくい。逆に考えれば、参入するプレーヤーが少ないということでもある。久保氏はそこに勝機を見い出したのだ。

ただし、超えなければならないハードルも高かったという。一般家庭において家具は買うのが当たり前であり、レンタルという文化はまだ形成されていない。これを乗り越えるためには、やはりある程度の先行投資が必要になる。

それでも久保氏が起業を決めたのは、これまでの豊富な起業経験から資金調達に自信があったこと、そして法人にはリースの文化があるため、スケールすると確信したからだという。

では、そんな久保氏は「家具サブスクリプション」という新しいサービスをどのようにブランディングしていったのだろうか。