お寺でAIは役に立ちますか? - 浄土宗善立寺 副住職 こうじりゅうじ氏(前編)

【連載】

知りたい! カナコさん 皆で話そうAIのコト

【第7回】お寺でAIは役に立ちますか? - 浄土宗善立寺 副住職 こうじりゅうじ氏(前編)

[2019/02/21 08:00]山田井ユウキ ブックマーク ブックマーク

ソリューション

本連載では、各回のテーマに沿ってさまざまな業界の最前線で活躍するキーマンを訪ね、本誌で連載「教えてカナコさん! これならわかるAI入門」を執筆するAI研究家の”カナコさん”こと大西可奈子氏(NTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部)がお話を伺っていく。ときに広く、ときに深く、AIに関する正しい理解を広める一助になることが連載の狙いだ。

今回、ご登場いただいたのは長野県塩尻市の浄土宗善立寺 副住職であり、寺院デジタル化エバンジェリストとしても活躍するこうじりゅうじ氏。QRコードやNFCを導入した御朱印ならぬ「御朱In」などユニークな取り組みの数々で話題の僧侶である。

テクノロジーと寺院はどう関わっていくのか。仏教界においてAIが役立つシーンはあるのか。今後の可能性も含め、見解を伺った。

浄土宗善立寺 副住職 こうじりゅうじ氏(左)と”カナコさん”ことAI研究家の大西可奈子氏(右)

結婚を機にエンジニアから僧職へ

大西氏:こうじさん、お久しぶりです! こうじさんとはこれまでイベントなどでご一緒させていただいたことがあるので、ITにも縁がある方なのは存じ上げているのですが、改めて簡単にご経歴を教えていただけますか。

こうじ氏:私は今、長野県塩尻市にある浄土宗善立寺の副住職を務めていますが、実はお寺の生まれというわけではありません。一般家庭に生まれ育ち、大学卒業後はエンジニアとして就職しました。その後、結婚を機に出家し、妻の実家である善立寺に入って僧侶になって今に至ります。

大西氏:こうじさんが数年前に作られた、QRコード付きの御朱印「御朱In」は元エンジニアならではのアイデアですよね。インターネットでも大いに話題になりました。そもそも御朱Inを作ろうと思ったきっかけって何だったんですか?

こうじ氏:お寺にいらっしゃった方が御朱印を集めておられたのですが、何百枚という数になると一つ一つのお寺や神社について覚えていないと言われるんですね。そういうとき、QRコードからいつでも善立寺のWebサイトにアクセスできるようになっていれば、「こんなお寺だったな」と思い出していただけると考えたんです。

浄土宗善立寺の御朱In

大西氏:QRコードと御朱印、一見すると違和感が出そうな組み合わせですが、デザイン的にも意外としっくりきますよね。

こうじ氏:QRコードが真四角だからというのもあるかもしれませんね。

大西氏:確かに、ハンコっぽくも見えますもんね。

こうじ氏:実際、最近はシヤチハタで同じようにQRコードを押している御朱印もあるようですよ。うちでは、色味をしっかり合わせたいので、Adobe Illustratorを使って調整して印刷しています。

大西氏:Illustratorで色味調整しているんですか! さすがのこだわりですね(笑)

お寺業界の運営事情とデジタル化の現状

大西氏:こうじさんが寺院のデジタル化に取り組まれているのは、元エンジニアだからこその発想があるからだと思うんですが、お寺ってほかにはどういうところにデジタル化のニーズがあるんでしょうか。

こうじ氏:ではまず、お寺の現状からお話しましょうか。全国にお寺がいくつあるかご存じですか? その数、約8万軒とコンビニよりも数が多いんです。働いているお坊さんは約30万人にも上ります。ただし、各お寺はそれぞれ独立した宗教法人として運営しているので、一つ一つはそれほど大きな組織ではありません。

大西氏:たくさん中小企業が集まっているようなイメージですね。

こうじ氏:はい。なので、各寺院のお坊さんがそれぞれのITスキルに応じて個別にデジタル化を進めているのが現状です。未だにFAXを使っているところも多いですよ。

大西氏:逆に言えば、こうじさんのようにITスキルが高ければやりたいことはどんどんできるわけですか?

こうじ氏:そうですね。ただ、一番の問題はやはり資本力です。それからほとんどのお寺は1~2人で運営しているので、B2Cのサービスを使うしかないのも課題ですね。例えば、うちのお寺ではグループウェアの「kintone(キントーン)」を入れているのですが、最小ユーザー数は5名からなんですよね。うちは住職と私の2名なので、アカウントが余ってしまっています。

大西氏:少人数組織ならではの悩みですね。それにしても、お寺とITって相いれないのかと思っていましたが、そんなことはないんですね。

こうじ氏:はい。仏教とITのユニークな試みもたくさんあって、テクノ法要とか、メディアアートとお寺のコラボレーションとか、マスコミで取り上げられたりもしています。

ただ、私としてはITを使ってバックヤードの仕事を効率化していきたいと考えています。そうすることで、本来やるべき「仏教を伝える」ということに集中できるからです。

大西氏:お坊さんの仕事と言うとお葬式や法事のイメージなんですが、お寺のバックヤードって、どんな業務があるんですか?

こうじ氏:一般の企業と同じように会計業務もあれば、広報業務もあります。なので例えば、(会計ソフトの)「MFクラウド」や「Freee」などを導入すれば会計処理から解放されますし、広報に関しては、これまで新聞などに多額のお金を払って広告を出していたところを、FacebookやTwitterにすればコスト削減できると思います。

「デジタルの力」の必要性

大西氏:仏教界にもデジタル化の波がやってきているのは、やはり徐々に(デジタルネイティブな)若い世代が増えてきているからでしょうか。

こうじ氏:世代交代もありますが、それだけではありません。現在、多くのお寺が存続の危機を迎えています。これからどんどん人口が減っていくと、お寺も収入が減りますから、やっていけなくなります。そうなると別の仕事に就く道を選ぶ人も増えてきます。ある調査によると、今後20年間で3割のお寺がなくなるとも言われているそうです。

大西氏:そんなにですか。

こうじ氏:後継者問題は深刻です。例えば、あるお寺で後継者がいなくなったとします。すると、近くのお寺のお坊さんが1人で2つのお寺の面倒を見るようになるのですが、これがすごく大変なんです。

宗教法人としては別の組織なので、会計なども別々に処理しないといけませんし、冬の雪かきなどの肉体労働も2倍になります。すると、本来やるべき「仏教を伝える時間」がどんどん減って、ただただ日々の作業に追われるだけになってしまうのです。

大西氏:少子高齢化が進んでいるので、お寺に限らずかもしれませんが、そうした状況は避けられなくなっていますよね。

こうじ氏:だからこそ、デジタルの力で効率化していくことがとても必要なんです。

>>後編に続きます。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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