3つの論点から考察! ビジネス領域における正しいAI活用のヒント

[2017/10/13 08:00]小池 晃臣 ブックマーク ブックマーク

AI活用推進のシナリオとは? 研究視点で浮かび上がる「3つの潮流」

舘野氏が2つ目の論点として提示したのが、「AI活用推進のシナリオ」だ。

「AIを活用するに当たっては、ソリューションを基点にするのではなく、研究を基点としてシナリオを考えたほうがいいでしょう」と、舘野氏は提言する。

研究という視点からAI活用を考えるとき、主流を成す3つの潮流が浮かび上がってくる。まず1つ目の潮流は、「データ統計・確率論の高度活用」だ。高度な予測を主な目的とするその応用例としては、レコメンデーションや価格予測、クレジット与信などが挙げられる。

2つ目は、「脳機能の一部再現」であり、知覚・運動系機能の実現を目的としている。これはディープラーニングの実用化領域となっており、応用例として画像認識やデータ生成、人型ロボット、自動運転などが挙げられる。

そして3つ目の潮流となるのが、知的な振る舞いの実現を目的とする「知識・自然言語能力の活用」で、パーソナルアシスタントや自動応答、チャットボット、機械翻訳などがこれに当たる。

「現状、AIに関わる技術開発もソリューションも、この3つの流れから発生してきます」(舘野氏)

こうした3つの潮流について、舘野氏は企業がとるべきスタンスを示していった。

第1の「データ統計・確率論の高度活用」に関しては、社内に眠っている各企業固有のデータを活用し、まずはAIを試してみるのが有効ではないかという。

「商用の機械学習クラウドサービスが各社から提供され、十分に利用可能なレベルになってきました。今社内にあるデータと、ある程度統計に詳しい人材がいれば、特にAIの専門家がいなくても高度な予測ができるようになってきています。『統計的な予想というのはAIではない』という声もあるかもしれませんが、そのような定義で切り捨てるのではなく、まずはやってみるべきでしょう」(舘野氏)

第2の「脳機能の一部再現」に関して舘野氏は、現状ではディープラーニングをすぐに活用するというよりも、「有望なプラットフォームとしてベンダーを見定めることこそ、企業がとるべきスタンスではないか」と指摘。それには、まず本当にディープラーニングでないとできないことなのか、従来型の統計分野の機械学習でもできないのか、といった判断が求められる。

「ディープラーニングは、まず画像や音声などルール化しにくい対象から使うのが一般企業にとっては有効でしょう。ただし、本格的に取り組むとなると、ハードウェアの進化が必要です。今は大規模なデータセンターで行っているような処理が、将来的にはPC上でも行えるようになるなど、大きな変化が起きるかもしれません」(舘野氏)

第3の「知識・自然言語能力の活用」では、人口減少やそれに伴う労働力の不足といった社会背景を踏まえ、大量の問い合わせなどを最初に絞り込むといったシナリオが考えられる。これに関して、舘野氏は「現場に密着した視点で、働き方改革との兼ね合いから考えていくと良いのでは」とコメントを寄せる。

例えばチャットボットによる顧客サポートは、既にコールセンターなどでかなり導入が進んでおり、今後はスマートスピーカーなども企業に普及することが予想される。

AIの3つの潮流と、それぞれについてのAI活用推進のシナリオを紹介した舘野氏は、「分野によっては既に技術のコモディティ化は進んでおり、手軽に試せる環境が整いつつあります」と強調した。

AI活用の推進者に求められる要素とは?

最後の3つ目の論点となったのが、AIの本格活用に向けて検討しておくべき課題である。まず、強く求められてくるのが、AI適用領域の見極めだ。これについて舘野氏は、「『実現可能性』『収益への貢献』『継続的なデータ集積』という3つの軸で評価することが推奨されます」と説明。ただし、「現実的に考えると、このうち2つでも見込める分野があれば、その分野でまず試してみるのも価値があるでしょう」と見解を示した。

また、AI活用の推進者に求められる要素としては、経営者とエンドユーザー、業務と技術トレンドのそれぞれの間に入り、調整役として機能することが挙げられる。

「経営者から『すぐに効果が得られない』と判断され、プロジェクトが終わってしまうケースが非常に多く見られます。一方、現場からは『自分たちの仕事が取られるのではないか』といった不安が生じやすいものです。そのため、推進者の役割としては、AI活用の効果が表れるまでにはそれなりの時間を要すること、そしてAI活用は人間の仕事を奪うような取り組みではないことを、コミュニケーションしながらしっかりと伝えることが重要となってきます。

業務と技術トレンドの相関で言えば、今は技術が日進月歩で進化しているので、業務側に少し寄って考えてみて、強みが出せる分野や効率化できる分野を見つけ、そこから技術トレンドに落とし込むというスタンスが理想かもしれません」(舘野氏)

最後に舘野氏は、今回の講演を総括し、「AIがもたらすシンギュラリティ(技術的特異点)には、楽観論と悲観論が交差していますが、シンギュラリティにとらわれすぎず、使えると判断したら、積極的にAIを使っていくべきでしょう」と強調して壇を後にした。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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