インターネットの発展によって未来はどうかわるのか。AI、IoT、ビッグデータの先にはどんな世界が待ち構えているのか――。

元Google米国本社 副社長 兼 グーグル日本法人代表取締役社長の村上 憲郎 氏が、東京都港区の明治記念館で開催された「富士通マーケティングフォーラム2017」に登壇。『IoT、ビッグデータ、人工知能が切り拓く、ICTの新地平』と題し、最新技術と今後の展望を紹介した。

本稿では、同講演の様子を簡単にご紹介しよう。

モバイル、ウェアラブルからインプランタブルへ

かつてデスクトップPCのものだったインターネットは、今やモバイルからのアクセスが主流になり、誕生当時には想像もつかなかったような形態へと変わっている。すでにウェアラブル端末を活用するユーザーも増え、今後はインプランタブル(埋め込み型)が席巻、さらには神経・筋肉系統との統合も果たされていく。

元Google米国本社 副社長 兼 グーグル日本法人 代表取締役社長の村上 憲郎 氏

――村上氏は、ICTの近未来をこのように予測する。

現在の主戦場は、モバイルとウェアラブルにある。スマートフォンの開発競争が激化する一方で、2世代目のGoogle Glass発売が噂され、スマートウォッチなどの生体信号を取得/表示できるデバイスも徐々に普及しはじめている。

さらに今後は、Google Contact Lensなどの体内に埋め込む型のデバイスが提供され、より詳細な生体データが取得できる見込みだ。その先には、「Googleによる眼球(スマートアイ)や耳(スマートイヤー)の提供が考えられる」と村上氏は説明する。

「Google Contact Lensは、あくまでコンタクトレンズとして眼球に接触しているだけなので、正式にインプランタブルと呼べるものではないかもしれませんが、この流れを考えると、身体障害者の機能回復を目的として眼球や耳を代替する埋め込みデバイスがGoogleなどから提供されることも容易に考えられます」

すでに「Brain Machine Interface(脳から機械に指令を出す技術)」、「Brain Muscle Interface(脳から機械を通して、脊髄を介さずに筋肉に指令を出す技術)」といった技術の開発が急速に進んでいる。脳で考えただけで義手が動く映像をご覧になったことのある方もいらっしゃるだろう。

現在は、触覚などの感覚を脳にフィードバックするBrain Machine Brain Interface技術の研究も進展しており、将来は視覚や聴覚を補う技術も登場すると見込まれている。

「例えば、Brain Machine Interfaceの優れた義手を手に入れた方でも、暗闇でコップを持ち上げるのは難しい。というのも、触覚がフィードバックされないので、そもそもコップがどこにあるのか、どの程度の強さで持てばよいのかわからないのです。そういった問題を解消するスマート義手もすでに発表されています」

そのほか、村上氏は、脳波を分析して足に装着したExoskeleton(外骨格)を動かし、下肢がまったく動かない障害者を歩けるようにする技術なども紹介。2014 FIFA World Cupにおけるキックオフの例なども挙げ、身体障害者の機能回復、あるいは健常者の機能強化に向けた開発が進んでいることを明かした。