ソフトバンクが初となるWindows 10 Mobile端末「SoftBank 503LV」を11月より発売した。iPhoneを主軸に販売戦略を立ててきたソフトバンクがなぜ、レノボ製のWindows 10 Mobileスマートフォンを発売したのか。ソフトバンク ICTイノベーション本部 モバイルES統括部 モバイルプロダクト部 部長の由本昌也氏と、同部プロダクト1課 課長の玉川秀軌氏に話を聞いた。

ソフトバンク ICTイノベーション本部 モバイルES統括部 モバイルプロダクト部 部長の由本昌也氏(写真左)と同部プロダクト1課 課長の玉川秀軌氏(写真右)

複数OS管理がスマホ導入の障壁に

ソフトバンクがWindows 10 Mobileに注目した背景には、情報システム担当者が「複数OSの管理」という問題を抱えていたことが挙げられる。由本氏は「企業環境にはWindows PCを中心にActive Directoryなどのインフラが整備されている。スマホ導入により、OSが複数に分かれてしまうと管理が煩雑になる」と指摘する。

そのため、大企業ではフィーチャーフォンを使い続けるケースが少なくなく、「スマートフォンはもっと急速に普及すると思っていたが、依然としてフィーチャーフォンは多く使われている」(由本氏)という状況にある。

ソフトバンクは2015年末よりWindows 10 Mobileの検討を開始。当初は安価な低スペック端末が先行していたものの、スマホをPCのように利用できる「Continuum」対応端末の登場で、見る目が変わったようだ。実際に商談の中でも、「テレワーク需要の高まりで、Continuumに関心が集まっている」(由本氏)とのことで、ノートPCでも同じことはできるが、PCを持ち帰らなくても、会社と同じ環境で簡易的にでも仕事ができるところがメリットになり得るとしていた。

そこでContinuum対応を条件に、複数の端末メーカーから提案を受け、候補を絞り込んでいったという。ハイエンド機の「HP Elite x3」も検討したが、「一部の管理職だけでなく、全社員に導入いただけるような価格帯を重視した」(由本氏)との理由で見送った。一方でレノボを採用した理由は「タブレット製品ではソフトバンクと協業してきたこともあり、協力関係にあった。PCのシェアはトップで知見もある。端末の提案も、当社の期待に応えるものがあった」(由本氏)というものだった。

グローバルではなくレノボ・ジャパンと開発

「SoftBank 503LV」は製品名の通り、ソフトバンクのスマートフォンとして販売する製品で、「グローバルのレノボではなく、レノボ・ジャパンが開発した端末」と玉川氏は語る。その背景として、日本マイクロソフトが中国のODM企業と連携を深めており、そのエコシステムを活用して実現したという。

SoftBank 503LV

ソフトバンクとして製品を投入する以上、「落下試験など、耐久性などの面でソフトバンク品質の検証をしている。また、ソフトバンクが自社製品としてサポートも一括して対応できる」と由本氏。こだわりという点では、画面サイズを「日常的なモバイル利用」の想定から、手に持ちやすい5.0インチを採用した。

「画面解像度は処理性能とのバランスを考えてHDにし、3GBのメモリーや32GBのストレージは、ミドルクラスとしては大きなものを搭載した。Continuumは2GBのメモリーでも動作するが、快適に使っていただけることを重視した」(由本氏)

本体前面と背面にはガラスを採用

本体デザインでは両面にガラスを採用しており、ビジネスシーンでも違和感のないスタイリッシュなデザインに仕上げた一方、指紋認証や防水といった機能は省いていることが分かる。USBポートは一般的なMicroUSBを採用し、Quick Charge 2.0による急速充電に対応した。Windows 10 Mobile端末ではUSB Type-Cの採用も進んでいるが、「充電器が対応していないことが問題だ。尖った商品を目指したわけではないため」(玉川氏)として採用を見送った。

ハイエンド端末とは異なり、有線接続でのContinuumには対応しないものの「想像していたより快適で、無線でも十分使えるという声が多い」(玉川氏)と説明する。ただし、OSのアップデートでContinuumが使えなくなる現象が発生しており、アップデートの配信を止めるなど対応に追われたという。

裏蓋の取り外しはできない構造だが、バッテリー交換のサービスも受けられる。SIMロックもその他端末と同様のルールで解除できるという。販売は法人限定ではなく、ソフトバンクショップでは個人にも販売している。

ソフトバンクとしてWindows製品の提案力が向上

今後のWindows 10 Mobileへの取り組みについては、「まだこの製品を発売したばかりなので、お客様の反応を見ながら検討していく」(由本氏)とした。タブレットでは「Surface 3」の販売も継続しており、「会社全体として、Windowsを提案するスキルが向上してきた。Office 365やIntuneなど、お客様の要望に応じて提案できる体制を整えている」(由本氏)とした。

一方で、Windows 10 Mobileのプラットフォームとしての将来性は、どう考えているのだろうか。「マイクロソフトと継続的に取り組んでいくという話はしているが、完全には分かりかねる部分もある。一緒にやっていくしかない」(由本氏)と語る。「Windows 10がなくなる、ということはないだろう。モバイルについてもWindows CEの頃よりは統合されている。今後、PCのOSがWindows 10になっていけば操作感の統一も期待できる」(玉川氏)と期待を語った。