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デジタルジャイアントに挑むなら、今決断の時 - Gartner Symposium/ITxpo 2016

[2016/10/11 10:24]星原康一 ブックマーク ブックマーク

バイモーダルを統合したリーダーシップが必要

以上のようにデジタルビジネスに対応したシステムは、ビジネス上のインパクトが大きいうえに迅速な改修・構築が求められる。それだけに、どのような方針で進め、どのようなメンバーを揃えるべきかが重要となるのは言うまでもないだろう。

米ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローのハン・ルホン氏

この点について一歩踏み込んだアドバイスを送ったのが、ソンダーガード氏に続いて登壇した米ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローのハン・ルホン氏と、同 マーク・ラスキーノ氏だ。

両氏は、ガートナーが提唱する「バイモーダル(2つの流儀)」の考え方を、リーダーシップという点においても取り入れるべきと主張する。

安定性重視のモード1、俊敏性重視のモード2

バイモーダルとは、ITシステムの構築・運用やビジネスの進め方などに関して、すべてに同じやり方を当てはめようとするのではなく、モード1とモード2の2種類に分けて考えようというものである。

このうちモード1は、安全性や正確性、安定性を重視したやり方。ITシステムで言えば、従前の基幹システムを構築するような場合にとる方法で、ある程度の時間をかけてでも安定稼動を目指していくことになる。

一方のモード2は、安定性よりも俊敏性を重視するやり方。コンシューマー向けのアプリケーションなどはこちらで作られるケースが多いだろう。短期に立ち上げて運用を開始し、不具合などが見つかれば随時改修を加えていくようなイメージだ。アジャイル開発を思い浮かべていただくとわかりやすい。

ガートナーでは、モード1、2はどちらか一方が優れているというものではなく、システムやビジネスの特性に合わせてどちらの流儀をとるのか考えるべきと提言している。

そして、講演の中でルホン氏とラスキーノ氏は、デジタルビジネス時代のリーダーは、このモード1とモード2の考えを組み合わせてリーダーシップを発揮すべきと説明した。

何にでも疑問を持つ、初心者の心も必要

具体的にはこうである。

リーダーシップにおけるモード1は、経験に基づくベストプラクティスを重視したものになる。安定したプロジェクト運営には不可欠な要素だが、デジタルビジネスのような過去に例のない世界に飛び込む場合、そちらの意識が強すぎてもうまくいかない。

対してモード2は、新しいユースケースに目を向けて、試行錯誤を繰り返すやり方になる。いわゆる未経験者・初心者のやり方で、失敗を恐れず果敢に挑むチャレンジ精神が大きな武器になる。

米ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローのマーク・ラスキーノ氏

ラスキーノ氏は、こうしたバイモーダルの姿勢を説明したうえで、「真のリーダーとは、モード1とモード2、すなわちベストプラクティスとチャレンジ精神を融合できるもの」と続けた。

「ある程度の経験を積んだリーダーは、どうしてもベストプラクティスを重視した行動をとりがちです。しかし、知識や経験は、ときに発想の妨げにもなります。安心できる知識の土台は大切な財産ですが、先入観につながることもあるわけです。一方、初心者は、何にでも疑問を持ちます。想像力を働かせながら、新しいことを理解しようとします。新たなことへのチャレンジにおいてはこの姿勢が重要になります。経験者は、初心者の心を取り込むために意識を変えていく必要があるでしょう」(ラスキーノ氏)

ベストプラクティスとチャレンジ精神の融合を生むためには、プロジェクトのメンバーにも配慮しなければならない。例えば、似たような特性のエキスパートで揃えれば互いの思考が読めてプロジェクトは楽に進められるかもしれない。しかし、固定観念に捉われたアウトプットが生まれる可能性もある。できることならば、「認識や思考の異なる人に囲まれる環境を作るべき」とルホン氏は主張する。

「多様な人材で組織することで、発想面においてはもちろんですが、何かを分析するシーンにおいても大きな効果が生まれることになります。ライバル関係にある人材を同じチームに入れるというのも1つの方法でしょう。心理面でも行動面でも競争原理が働き、俊敏性が高まるかもしれません」(ルホン氏)

デジタルジャイアントに立ち向かうのか、手を取り合うのか

もう1つ、両氏が力を入れて解説したのが、エコシステムの構築である。

ソンダーガード氏の解説にもあったとおり、デジタルビジネスの世界においてはエコシステムの活用が不可欠である。「”つながらない”という選択肢はなく、エコシステム主導型とも言える展開になる」(ラスキーノ氏)と予測する。

そうした波が迫る中で現在の選択肢としては、「デジタルプラットフォームを構築してエコシステムを先導するのか、それとも既存のエコシステムにつながって他社と同等の立場でビジネスに臨むのか」になるという。

もちろん先導する立場になったほうが得られる利益は大きいだろう。しかし、その道は決して楽なものではない。というのも、GoogleやAppleら、デジタルジャイアントと呼ばれる企業がすでに存在するからである。

「すでに大多数の消費者とつながり、デジタル技術で一日の長があるGoogleやAppleらは、今後さまざまな分野で顧客と事業者の間に入り込むでしょう。ガートナーでは、2020年までにデジタルビジネス全体の20%に彼らが絡んでくると予想しています。特に消費財の分野ではこの傾向が強くなるはずです。ユーザーの立ち場で見れば、既存のサービスが拡張されるようなかたちで利便性が向上するため嬉しいかもしれませんが、事業主からすると素直には喜べないでしょう。闘うのか、仲間になるのか、決断のときは近づいています」(ラスキーノ氏)

*  *  *

講演の最後にはソンダーガード氏が改めて登壇。一連のデジタルビジネスに向けた変動を振り返ったうえで、来場したCIOらに対して次のような言葉を送り、セッションを締めくくった。

「今、人類は、文明の変革期を迎えています。今後10年間でITは大変な偉業を達成することになるでしょう。新たな文明のインフラ構築に向けて、皆さんの歩みを進めてください」

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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