Evernoteに求められる進化

では、そんなEvernoteの現状はどうなのだろうか。Evernoteは現在、世界200カ国以上で利用されており、31言語に対応する。オニール氏によれば、ユーザー数は2億人に到達するが、その半数以上は英語以外の言語で利用しているという。上位を占めるのは英語、スペイン語、中国語、ポルトガル語、アラビア語だ。また、「ユーザーがEvernoteに記録した『ノート』の数は、50億を超える」とし、これはユーザーから信頼されている証でもあると強調。情報過多の現代において、ナレッジワーカーが有用なアイデアを捉え、育むためのツールとして、Evernoteの重要性はさらに高まるとしている。

だとすれば、Evernoteにも進化が必要だ。これについてオニール氏は「製品の完成度を高めるのはもちろん、組織としても成熟していくことが必要です」と語る。規模の拡大とともに増加するユーザーの存在も、おざなりにはできない。サービス開始時は、いわゆる”アーリーアダプター”を中心に利用されたEvernoteだが、その後サービスの普及に伴い、ユーザー層が拡大した。新たなユーザーからの信頼を勝ち得るには、あまりITに詳しくないユーザーでも十分に使いこなせるようなサポートが必要になるだろう。

さらに今後は、従来の「覚える」に加えて「アイデアについて考える」というところにもフォーカスしていくという。氏は「これまでに培ってきた資産をベースに、アイデアをアクションに結び付け、さまざまなかたちで世の中を変えていきたい」とし、その具現化に向けたプロダクト戦略を示した。

プロダクト戦略の概念図

氏は、今後の展開として「あらゆるアイデアを記憶する場所を提供するとともに、アイデアの整理・共有をサポートし、ユーザーが具体的なゴールを導き出せるようにする」と説明。これを実現するためのビジネス戦略として、法人向け市場への展開や、チームへの対応、AI・機械学習といった先端技術への投資などを挙げた。

日本、そしてアジアにおける今後の展開

日本・アジア太平洋地域代表 井上健氏

現在、Evernoteのユーザーの35%はアジアのユーザーであり、その割合は日々増加している。売り上げから見ても、トップ10のうち半分(日本、中国、オーストラリア、韓国、台湾)はアジアが占める。

オニール氏に続いて登壇した井上氏のミッションは、このアジアにおいて「成功も失敗も含め、日本の経験を展開していくこと」だという。

日本のEvernoteユーザーは約900万と世界第4位、売り上げでは2位に位置する。2010年のサービス日本語化、日本法人設立に始まり、NTTドコモとのキャリア連携、スキャナ・プリンタなどとのハードウェア連携とビジネスを展開し、2014年に開始したEvernote Businessリセラー制度は、現在国内14社に広がっている。

今後の事業計画では、この国内リセラー制度をさらに拡充する方針だ。また、リセラー各社との協力の下、国内教育機関への販売にも力を入れるという。加えて第3四半期には、APACでのアフェリエイト制度開始と、決済手段・価格の地域別最適化を予定している。

井上氏は、「これまでの日本の成功はEvernoteの歴史に頼っていた部分もありますが、今度は積み重ねた経験を基に、日本から世界に向けて貢献していきたいと考えています」と意気込みを示した。