初の試みの成果と、見えてきた今後の課題

――2017年度のミニキャンプは10カ所で開催されましたが、振り返ってみていかがでしたか?

佳山:印象的だったのは、いちばん最初に開催した神戸のミニキャンプで講師をしてくれた中村綾花さんですね。人前で喋るのが苦手ということだったのですが、地元の講師の方が事前に開いてくれた準備合宿に楽しく参加できたそうで。講義当日も最初は緊張していましたが、そこだけフォローしたら、後は和やかに進んでいました。

国分:もっとサポートしなきゃいけないかなと思っていたのですが、どの講師もしっかりできていて、これは安心だなと。僕らはやることないなと(笑)。

長谷川:若い人が講師をやるのって、ぜんぜん違う刺激があると思いましたね。参加者にとっても、2つ3つしか年が違わない人が講師で、しかも自分が理解できない世界を知っているというのはいい意味でショックを受けるみたいですよ。参加者は学校ではそこそこできる子たちが多いので、講師が同じくらいの年齢だと刺激も大きいようです。

国分:そこで刺激を受けて、全国大会に行ってみよう、という子もいますね。

長谷川:コアキャンプも面白かったですね。

――コアキャンプは修了生のステップアップの場として、2017年度から設けられたんですよね。

国分:そうです。全国大会自体は1度しか参加できないルールなのですが、そのなかで実施するかたちで、修了生が参加できる「コアキャンプ」を始めました。

佳山:ただし、手取り足取り教えたりしません。日本有数のエキスパートがただ目の前で自分の仕事をするので、それを”見て、盗め”という場です。

長谷川:最後の1時間くらいで、「自分がキャンプにかかわることがあったら何をやりたいか」というブレストをやったら、それぞれが興味のあることを積極的に言ってくれて。その参加者たちに佳山さんがものすごく軽い感じで声をかけて、次の講師にスカウトしていたでしょ(笑)。

佳山:2人、その後に開催したミニキャンプで講師をやってくれました(笑)

――そういう流れもあるわけですね。今、課題に感じられているようなことはありますか?

国分:過去の参加者が今どこにいるのかがわからないことですね。もっといろんな人がいるはずなのですが。

長谷川:最近は皆SNSをやっているので、Twitterなどをたどったりしているんですが、その辺りはやはりこの先の課題だと思っています。

それから、若い人に講師を任せるのは何の問題もないのですが、現場からすると有名な人のほうが集客がいいといったことを言われるんですよね。

佳山:いろいろな考え方の方がいるので、なるべく多様性を持ちつつ、尖らせるところは尖らせて行く必要があるというのがこれからの大きな課題になると思っています。

――今後の展望についても教えてください。

長谷川:もう少し小回りのきく取り組みがあってもいいのかなと思いますね。地方で自発的に開催される勉強会に、セキュリティ・キャンプから講師を送るとか。

地方では既にセキュリティ・キャンプの看板でイベントをやりたいという話もあるのですが、名前だけ貸してセキュリティ・キャンプの思想と乖離したものになってしまうのもよくないと思います。その辺りに折り合いをつけていくのは、今後の課題の1つですね。

佳山:こういった、少しずつ”分母を広げていく”という活動はベンダーニュートラルな組織であるIPAでないとなかなかできないことだと思います。僕たちが1つ1つ教えなくても楽しく学んでいけるような場にして、次につないでいくんだろうなと。2018年度のチャレンジは、セキュリティ・キャンプ、ミニキャンプをさらにより良い場として広げていくことだと思っています。