マクニカとマクニカネットワークスは7月12~13日、年次カンファレンス「Macnica Networks DAY 2018」を都内にて開催した。AIやIoTに関連するセッションが用意された2日目には、「リアル店舗小売企業のデジタルトランスフォーメーション挑戦事例紹介」と題し、トライアルホールディングス/ティー・アール・イーの西川晋二氏が登壇。

トライアルグループは、米Walmartに倣い日本型スーパーセンターを全国展開しており、昨今は「流通情報革命」を標榜して、小売業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。セッションでは、福岡市東区のアイランドシティ店を旗艦店とした、スマートレジカートやAIカメラの活用、デジタルサイネージの活用実験など、小売業の実店舗におけるDX挑戦事例が紹介された。

自社開発のデータ基盤で目指す流通改革

セッション冒頭、「変化の時代を生き残る企業となるよう、日々頑張っている」と強調した西川氏は、トライアルホールディングスが掲げる「3大フォーマット戦略」について説明した。

これは、大商圏のメガセンター(GMS:General merchandise store)と田舎/都会型のスーパーセンター(スーパーマーケット、ドラッグストア)、クイック小売圏(コンビニ)の3つのフォーマットで、現在216店舗で4,000億円上げている年商を、中期5~6年で1兆円にまで拡大するという挑戦である。

「これまで徹底したROI経営で急速に成長してきましたが、3大フォーマット戦略の実現のためには、従来のITによる流通の効率化だけではなく、ITの力で流通を『変えていく』という意気込みが欠かせないものと考えてチャレンジしています」(西川氏)

トライアルホールディングス/ティー・アール・イーの西川晋二氏

同社では日本と中国に300名の開発体制を整え、従業員専用モバイル端末の活用や、データ処理/分析/自動発注基盤「e3-SMART」の自社開発などに取り組んできた。e3-SMARTでは、10年以上蓄積されたID-POSデータと600万人に及ぶアクティブ会員のデータが管理されている。

このデータ基盤を中心に、データ活用による流通改革を目指している同社では、先進的なWeb-GISシステムを開発しており、売上/会員数/来店会員数/会員化率などさまざまなデータ分析の結果を地図上で町丁目に区分して表示している。

例えば、利用者数の増減を町丁目区分で表示したり、任意の距離設定による円商圏や時間/徒歩/自転車の移動時間に応じたドライブ商圏、売上商圏を表示したり、ドミナントエリア(集中出店エリア)において複数店舗を同時表示して”食い合い”の状況を確認したりといった具合だ。

「これからはもっとAIの活用をしていかねばと強く考えており、まずは出店戦略における新たな取り組みとして、出店最適候補地の自動探索システムを開発して活用しています」(西川氏)

出店適地探索では、これまでのように人間が歩き回るのではなく、システムが自動探索し、地図上に色分けして適正度合いを表示する。それを素に、最適地に物件がないかを探していくというアプローチをとっている。

「従来は物件ありきでそこから探していましたが、場所を基点に出店戦略が立てられるようになりました」と西川氏は説明する。

また、8TBの容量を持つe3-SMARTは、2007年から11年分の顧客ID付POSデータを140億件分蓄積しており、月間45,000件のリクエスト数を処理しているという。このe3-SMARTを核として、POSデータを基に製品の売り上げや分析などを行うサービス「MD-Link」を、カテゴリーに精通したメーカー(カテゴリーキャプテン)に公開している。

「こうしたデータをメーカーと共有し、改善/改革していく取り組みに注力しています。分析に留まらず、経営判断をしていく上で必要となるさまざまな情報を提供しています」(西川氏)