米Adobe Systems(以下、Adobe)は3月25日から29日までの5日間(現地時間)、米ネバダ州ラスベガスにおいて、年次カンファレンス「Adobe Summit 2018」を開催している。

デジタルマーケティングに焦点を当てた同カンファレンスは、回を重ねるごとに拡大。今年は世界約40の国と地域から、1万3,000人超が参加した。参加者も企業のマーケティング担当者やパートナー企業、広告代理店、メディア関係者と幅広い。なお、日本からの参加者は200人超で、「米国以外では最多人数の参加国」(Adobe関係者)だという。

会場となった米ネバダ州ラスベガスのホテル「THE VENETIVAN」には1万3,000人の参加者が集結した

今回、Adobeは「make experience your business(あなたのビジネスで体験を創造する)」をテーマに掲げた。近年、同社は「世界を動かすデジタル体験を提供する」ことを企業ミッションとし、「顧客体験」の重要性を説いている。2016年の「Adobe Summit 2016」では、「優れた顧客体験の提供が、ビジネスの成功を左右する」と力説した(関連記事:『差別化のカギは「優れた顧客体験」 - Adobe Summit 2016が開幕』)。

また、翌年の「Adobe Summit 2017」では、顧客体験ビジネスを具現化するクラウドサービスとして「Adobe Experience Cloud」を発表している。(関連記事:『Adobe Summit 2017が開幕 - 製品群を再編し、体験駆動型ビジネスを支援』

さらに今年は、参加者に対し、「Experience Maker(体験を作る人)になろう」と呼びかけた。Experience Makerとは、デジタルトランスフォーメーションをリードする人材をはじめ、体験を創造する組織を構築し、「体験駆動型ビジネス」の実現を目的として変革に取り組む人を指す。

3月27日の基調講演に登壇した米Adobe社長兼CEO シャンタヌ・ナラヤン(Shantanu Narayen)氏は、Experience Makerの重要性を強調。「以前はモノを所有することで、社会的ステータスや満足を得ていた。しかし、今、人々が時間とお金を費やして求めているのは、『素晴らしい体験による幸福の実感』だ。皆さんは顧客に対して素晴らしい体験を提供できるExperience Makerだ」と呼びかけた。

米Adobe社長兼CEOシャンタヌ・ナラヤン氏

体験駆動型ビジネスを実現する「Adobe Cloud Platform」

優れた顧客体験を提供しているブランドに共通するのは、一貫性のある顧客へのアプローチであるとナラヤン氏は説く。

「PCやモバイルデバイスをはじめ、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)デバイス、さらには音声に至るまで、デジタルインタフェースがあるものは、すべて顧客との接点(タッチポイント)になる。これらのタッチポイントで、最適なタイミングで、最適なコンテンツを、最適な顧客に対して配信することが重要だ」(同氏)

そのために必要なのが、顧客を軸にアプローチできるプラットフォームであり、素晴らしい(体験を提供する)コンテンツ・クリエイティビティである。さらに、最適なタッチポイントで優れたコンテンツを提供するには、データ分析による洞察が不可欠だ。

ナラヤン氏は、「体験駆動型ビジネスを実現するには、『データ』を分析によって『洞察』に昇華させるインテリジェンスが必要となる。そのためには一気通貫でデータをやり取りできるプラットフォームと、エンタープライズ用のアーキテクチャが必要だ」と力説する。

基調講演同日に大幅な機能強化が発表された「Adobe Cloud Platform」は、こうした思想を具現化するものであり、コンテンツとデータを統合するクロスクラウドの基盤アーキテクチャである。具体的には、「Photoshop」や「Illustrator」といったクリエイティブ分野の「Creative Cloud」、マーケティングソリューション群の「Marketing (Experience)Cloud」、文書管理ソリューションの「Document Cloud」を、単一の統合プラットフォームで提供する。

これにより、Adobe Cloud Platformにあるソリューション/サービスは、相互連携して利用できるようになる。ナラヤン氏は「デジタルマーケティングは、場当たり的にソリューションを導入するようなパッチワーク・システムでは失敗する。プラットフォームを導入するには、ある程度の投資が必要だが、(継ぎはぎのシステムは)解決すべき課題である」との見解を示した。