Facebookの年次開発者イベント「F8 2018」がアメリカ カリフォルニア州 サンノゼで開かれました。今年は、英ケンブリッジ大学の性格診断Facebookアプリに起因する個人情報の流出問題で注目を浴びているFacebookですが、同社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は冒頭に同問題について謝罪しました。

ただ、ザッカーバーグ氏は、フェイクニュース対策などを語りつつも、開発者イベントとあって、さまざまな新機能・サービスを公開。特に、以前にも増して強調していたのがVR/ARです。

Oculusを擁するFacebookですが、スタンドアローン端末の「Ocules Go」を同日より発売すると発表。米国では199ドル、日本では2万3800円(送料/税ともに別)でオンライン購入が可能です(店頭販売は未定)。

ザッカーバーグ氏はOcules Goを199ドルで発売することを発表

スタンドアローン端末のOculus Goは、スマートフォンと連携して利用するVR端末で、WQHD(2560×1440)の高解像度ディスプレイや3Dヘッドホンを備えています。

Ocules Goの主な特徴

現在市販されているVR端末は、その多くがヘッドマウントのアタッチメントにスマートフォンを組み合わせるものが多く、クオリティにばらつきがあります。Googleが品質を担保するプログラム「Daydream」などを用意していますが、対応端末はまだまだ数が少ない状況です。

Ocules Goの外観

Ocules Goのレンズ部分

日本で一番普及しているプラットフォームとしては、PlayStation VRがあります。高品質ながら安価なVR体験できる製品として、PS4プラットフォームの勢いを背景に勢力を拡大していますが、ゲームプラットフォームとして認知されているため、その他用途の広がりに課題があります。

一方でOculus RiftはPCをベースとしたVRデバイスの先駆けとしてプラットフォームの成熟に年月を費やしてきました。2014年にFacebookが約20億ドルで買収した後も、Facebookに偏ることもなく、さまざまなアプリケーションの開発ができるプラットフォームとして進化を続けてきました。

ただ、昨年4月には創業者のパーマー・ラッキー氏が退社するなど、市場が急速に拡大しないジレンマも垣間見えています。

サムスンのGalaxyシリーズと組み合わせていくぶん安価にVRを体験できる「Gear VR」も、Oculusと共同で開発するなど市場拡大を目指していますが、追加コストが必要になるため普及まで至っていません。

Oculus Goの存在は、やや停滞していたVR市場の環境を大きく変えたいFacebookの意思の表れであり、一般家庭への普及も期待できる価格帯での投入となりましたが、Gearよりも高価です。

エンターテイメントコンテンツも用意

今回Oculus Goの発表に合わせて、「Oculus TV」「Oculus Rooms」「Oculus Venues」の提供も発表しました。Oculus TVとOculus Venuesは映像コンテンツプロバイダーなどと組み、迫力ある映像体験を提供するものです。

「Oculus TV」「Oculus Rooms」「Oculus Venues」のコンテンツも発表

TVは、NetflixやHuluなどの映像配信サービスと提携し、仮想的な大画面テレビで映画などを体験できます。さらにその体験を拡張したものが、Oculus Venuesで、米大リーグ(MLB)やミュージシャンとパートナーシップを結び、映画館のような大スクリーンを仮想的に構築して、1000人以上のFacebookユーザーと同時にコンテンツを体験可能です。

スポーツや音楽ライブといった一体感あるコンテンツを、仮想的に同時に体験できるようにすることで、Facebookが目指す「どこでも、誰とでも」繋がれる世界を実現するようです。

スポーツの試合もVRで閲覧できるように

またFacebookは、昨年のF8で「Facebook Spaces」と呼ぶ、仮想の部屋で友達と楽しく遊べるVRアプリを発表していましたが、Oculus Roomsも同様に友達とゲームやテレビ鑑賞、音楽鑑賞が可能になります。

Facebook Spacesは、PCを必要とするOculus Rift向けコンテンツとして発表されましたが、今回はより安価なVRデバイス向けに提供されることになります。

ハードウェアにお金をかけても、コンテンツがなければ人々はデバイスを購入しません。これら3つのサービスをOculus Goとあわせて提供することで、ハードウェアの購買意欲に繋がるのか。そして、さらなるコンテンツの拡充に繋がるのか。

人と人、人と企業が繋がる体験を深めたいFacebookとして、今回の取り組みは重要な一歩と言えるのではないでしょうか。

忘れてはいけないARの価値

ただ、Facebookは何もVR一辺倒ではありません。むしろ現在多くのユーザーにとって身近な存在となっているARの方が、より現実的かつすぐに広がるテクノロジーでしょう。今回の発表では、FacebookとMessenger、Instagramと、主要アプリすべてで新たなアップデートがあると発表しました。

ARでもアップデートが

Instagramでは、Facebookが提供する開発者向けツール「AR Studio」を用いてARエフェクトの開発が可能になりました。開発者が自由に開発できることで、キーノートで公開されたNBAによるバスケットボールのエフェクトのように、企業が自然な形で消費者に宣伝できるようになることでしょう。