米PTCは2017年5月23日(米国時間)、同社のIoTプラットフォームであるThingWorxの最新版「ThingWorx 8」を発表した。2017年6月8日から提供を開始する。

米PTCのエグゼクティブバイスプレジデントでマーケティング戦略を統括するKathleen Mitford氏

新版は、インダストリアルIoT(IIoT)のコネクトビリティ、パブリッククラウドとのシームレスな連携、ロールベースの製造アプリケーションを迅速に導入できるのが特徴。

同社のエグゼクティブバイスプレジデントでマーケティング戦略を統括するKathleen Mitford氏は、「近年、PTCはThingWorxの機能拡充を目的に、複数企業を買収してきた。ThingWorx 8はそうした企業が持つ技術を1つに統合したものであり、製造業を中心とした顧客の迅速な意思決定を支援する」としている。

買収した機能をThingWorx 8で統合

ThingWorxは、PTCが2013年に約1億1200万ドルで買収したIoT向けアプリケーション開発運用プラットフォーム。ThingWorx買収以降、PTCはIoTのユーティリティ機能を提供する米Axeda、機械学習の米ColdLight、AR技術の米Vuforia、産業オートメーション業界向けソフトウェアの米Kepwareを買収した。

ThingWorx 8ではこれらの製品/を統合し、ネイティブな機能として提供する。

ThingWorxのプラットフォーム概要(画像提供 : PTC)

ThingWorx 8で追加/強化された機能は、「Native IoT Cloud Integrations」「Native Industrial Connectivity」「Native Anomaly Detection」「Native Microsoft HoloLens Authoring」の4つとなっている。

「ThingWorx 8」で追加/強化された新機能

Native IoT Cloud Integrationsは、「Microsoft Azure」「AWS(Amazon Web Services)」といったパブリッククラウドとのシームレスな連携を実現する。また、米GEの産業向けデータ分析クラウドである「Predix」や、米OSIsoftが提供する製造情報管理基盤の「PI System」といった、各分野に特化したクラウドにも連携していくという。

Native Industrial Connectivityは、Kepwareが擁していた「KEPServerEX」が基となっている。KEPServerEXは、工場のオートメーションデータ管理などに利用されるOPC(Open Platform Communication)サーバ。複数のデバイスやデータソース、異なるプロトコルとの接続を目的に、150種類以上のドライバに対応している。

Native Industrial Connectivityの活用が想定される環境。迅速な可視化も実現できるとのことだ

Native Anomaly Detectionは、IoTで取得した製造ラインや工場内のデータから異常を検知し、故障や誤作動によるダウンタイムなどを回避する機能を提供する。具体的には、電力消費、空調管理、生産ラインなどのデータパターンを学習し、通常と異なる値が検知された場合にはアラートを上げる。

米PTCのエグゼクティブ バイスプレジデントでThingWorx製品を統括するMichael M. Campbell氏

閾値ベースで行っていた異常検知が機械学習技術を活用したデータ分析ベースとなることで、これまで気がつかなかった“異常の予兆”も把握することが可能になる。米PTCのエグゼクティブ バイスプレジデントでThingWorx製品を統括するMichael M. Campbell氏は、「こうしたデータ分析は、これまで専任の担当者が行っていた。しかし、Native Anomaly Detectionを活用すれば、専任がいない企業でも、異常検知の環境が簡単に構築できる」と説明する。

Native Microsoft HoloLens Authoringは、マイクロソフトの「HoloLens」向けのAR(拡張現実)コンテンツを作成する機能を提供する。これまでARコンテンツを作成する場合には、3D CADデータを専用ソフトで加工する必要があった。同機能の基となる「ThingWorx Studio」は、旧Vuforiaの技術を踏襲している。

同社では、「ARコンテンツが、ステップ バイ ステップで簡単に作成でき、HoloLensのイベントも用意に連携可能だ」としている。