「HoloLens」とは、米Microsoftが開発した製品で、簡潔に言えば「頭に装着して使用するコンピュータ」です。2016年3月に、北米限定ながらMicrosoft HoloLens Developer Edition(開発者版)の出荷が開始されました。出荷開始当初は、申請して認定された開発者のみでしたが、原稿執筆時点(2016年9月初旬)では北米在住者であれば誰でも購入可能となっています(価格は3,000ドル)。現時点では日本での発売は未定です。

具体的にHoloLensって何?

ひとえに「頭に装着して使用するコンピュータ」と言っても、イメージしづらいでしょう。

「ARを実現したHMD」とも言われているのですが、AR(Augmented Reality)は「拡張現実」、HMD(Head Mount Display)は「頭に装着するディスプレイ」を意味します。つまり、現実の世界にデジタルコンテンツを重ねて表示し、頭に装着する眼鏡型の透過ディスプレイでコンテンツを見られるモノです。単純にディスプレイと言っても、HoloLens自体がWindows 10 PCになっているので、「頭に装着して使用するコンピュータ」と言えるわけです。

Microsoft HoloLens

HoloLens背面。左右にあるオレンジ色の部分がスピーカーで、音声が流れてきます

また、最近ではARと共に「VR(Virtual Reality:仮想現実)」という言葉も聞かれますが、こちらはHMDなどを装着し、コンピュータが合成した映像や音響の効果で、空間への没入体験を提供する技術です。

HoloLensの凄いポイントは、ARとVRの両者の”いいとこ取り”を狙った「MR(Mixed Reality)」を実現している点です。現実世界には存在しないデジタルコンテンツを、目の前であたかも存在しているかのように生成しています。制作したコンテンツによっては、上から眺めたり、下から眺めたり、背後に回ったりと、色々な角度から眺めることもできます。

電源は、外側に当たるリングの後頭部が切れていて、その切れた左端に電源ボタンがあります。また、充電したり、PCと接続するためのUSBも近くについています。起動させる場合は、電源ボタンを押し、終了する場合は、電源ボタンを長押しします

実際に装着した写真。眼鏡を付けていても問題はありません

HoloLensの構造

拡張現実の世界を作るために、HoloLensにはCG映像投写用の半透明なスクリーンやマイク、カメラ、各種センサーが組み込まれています。透過型ディスプレイのアスペクト比は16:9(横が約3cm、縦が約2cm)で、解像度は1280×720となっています。メイン基盤には、32bitのIntel製のプロセッサーと「Custom built Microsoft Holographic Processing Unit(HPU 1.0)」というカスタムプロセッサを実装しています。Wi-FiはIEEE802.11acに対応しており、Bluetooth 4.1も搭載しています。

メモリは2GB、ストレージは64GBで、空間認識、視線移動、ジェスチャー入力、音声入力などに対応しています。HoloLens単体でも利用できますが、Wi-Fi経由(※)でPCと接続することによるリモート操作も可能です。PCとの接続では、HoloLens上のポータル機能で、体験者が見えているものを動画として保存したり、スクリーンショットを撮影でき、高い親和性が垣間見えます。

(※)HoloLensのWi-Fiは技術基準適合認定を受けておらず、日本で使用すると電波法に違反することになりますので、注意してください。今回の連載では、PCとHoloLensをUSBケーブルで接続して、HoloLensにデプロイ(配置)するといった方法をとっています。

HoloLensのバッテリーの持続時間は、一般的なノートPCと同じで、普通に使用すれば5.5時間は持つようです。かなりパワーを要するゲームなどでは、約2.5時間に落ちますが、充電しながらの利用も可能です。重量は579gで多少の違和感はあるものの、極端に重量を感じることはありませんでした。

HoloLensの視野

HoloLensを装着せずに透過型ディスプレイを覗いてみると、視野の中心部分の液晶にホログラムが表示されています。

透過型ディスプレイを覗いてみた

HoloLens体験記事の中には「視野角の狭さはあまり気にならない」と書かれているものもありますが、筆者の場合はどうしても視野角の狭さが気になりました。画面の一部が欠ける(見づらい)ケースもあるのですが、スクリーンショットを撮影する限り、映像出力上は、画面欠けはないようです。

HoloLensを動かすには

HoloLensを操作するには手のジェスチャーを覚える必要がありますが、基本的なジェスチャーは下記の3点に絞られます。

  • Air Tap(エアタップ)

指を上げて素早く下ろす動作を指す。

  • Tap & Hold(タップアンドホールド)

エアタップと同じく指を上げて素早く下ろし、メニューやその他の情報が表示されるまで、つまんだような状態にする。

  • Bloom(ブルーム)

手のひらを上に向け指全体をすぼめて、全ての指を広げながら上に素早く動かす。つぼみから花が咲くような感じで広げる。この動作で、HoloLensのスタートメニューが開く。

ジェスチャー以外には、視線(頭の動き)でカーソルを操作する「Gaze」と音声で操作する「Voice」が用意されています。「Voice」はもちろん英語で話さなくてはならず、日本語は表示可能ですが、入力できません。

次回は、HoloLensの操作例と、アプリの開発環境について説明します。