5月19日、東京都千代田区の東京国際フォーラムにて、富士通が主催する年次イベント「富士通フォーラム 2016」が開幕した。

今年のテーマは「Driving Digital Transformation」。AI(Artificial Intelligence)やロボット、IoT(Internet of Things)など、デジタル革新(Digital Transformation)に寄与する技術が多数展示されているほか、新技術をベースにビジネスを再構築するためのサービスなどが発表された。

富士通フォーラム2016の展示会場には、運転手の視線を認識する運転支援システムや、オススメ商品などを表示するデジタルミラーなどが展示されている

本稿では、初日の基調講演の模様を簡単にご紹介しよう。

変化の激しいデータにも対応できるディープラーニング技術

基調講演に登壇した富士通 代表取締役社長 田中 達也氏

2日間にわたって開催される富士通フォーラム2016で、初日の基調講演に登壇し、開幕を告げたのが富士通 代表取締役社長の田中 達也氏である。

田中氏は冒頭、人類の歴史を簡単にたどったうえで、「現在は第4の変革が起きている」と説明。「10年後に振り返れば、大きな変革期にあったと誰もが気付くはず」と語り、AIやロボット、IoTなど、変革を支える同社の最新技術を紹介に入った。

AIの分野において、田中氏が富士通のアドバンテージとして強調したのが「メディア処理」だ。

「メディア処理は、人間で言ったら目や耳にあたる部分。カメラやセンサーなどを用いて周囲の変化や人の動きを捉え、解析技術とディープラーニングにより、対象が何なのか、どういう状況にあるのかを認識します。大量のデータを解析しておくことで、例えば、画像の被写体が犬や花であることを識別できるようになりますが、極端に変化するデータは識別が難しいという弱点もありました。富士通では、これを克服する新しいディープラーニング技術をすでに開発しています」(田中氏)

従来のディープラーニング技術では、画像や音声など、ある程度決まった構造のデータであれば対応できたが、ウェアラブルデバイスのジャイロセンサーが収集したデータのように時系列で大きく変化するようなものは解析が難しかったという。

「例えば、エレベータで1階から30階まで移動したことを従来技術では認識できませんでした。そうした常識が、新しいディープラーニング技術で覆ることになります」(田中氏)

新技術は、人の運動行動によるベンチマークテストで従来比25%増の85%、脳波の時系列データからの状態を推定するベンチマークテストで従来比20%増の77%の精度を達成しているという。こうした技術は、同社のAI技術「Human Centric AI Zinrai」に組み込まれており、今後増えてくるさまざまなIoTデータの解析にも対応できる環境を整えている。

セキュリティにもAIを活用

田中氏は、こうしたAIの活用例としてサイバーセキュリティやロボットなどを紹介した。

サイバーセキュリティにおいては、すべての通信ログをAIで解析しながら異常値を検知。攻撃や問題が発生した際に、迅速に通知する環境を提供している。

ロボット分野では、産業用に加えて、生活の中で利用するコミュニケーションロボットを提供する。「バーチャルリアリティと現実の世界をつなぐ存在」(田中氏)と考えており、人を認識して属性情報を解析、趣向に応じた提案を行うようなデモ動画が披露された。展示会場には、富士通研究所が開発したロボット「RoboPin」が数箇所に配備されており、来場者が持つタグから来訪ブースのデータを読み取り、各人にオススメの展示を紹介するデモも行われている。

富士通研究所が開発したロボット「RoboPin」。富士通フォーラムの会場で数箇所に設置されている。来場者のタグに蓄積された来訪ブースデータを読み取り、オススメブースを紹介する

そのほか、社会インフラにおいては、インドネシアの高速道路管理システムや、シンガポールの混雑緩和システムなども紹介。スポーツの分野では、体操競技の採点補助システムを取り上げ、センサーやマーカーを付けることなく技の難易度や精度を判定できることが説明された。

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