2025年に迫る保守期限!「SAP ERP 6.0」ユーザーにガートナーが示す対応策

[2019/03/19 08:00]冨永裕子 ブックマーク ブックマーク

業務アプリケーション

症状2:S/4 HANAのメリットが腑に落ちず、魅力を感じない

これは、会計と販売管理のモジュールしか使っていない場合に多い症状である。いかにSAPがリアルタイムアナリティクスやIoT、デジタル変革を訴えても、魅力的に聞こえない/ピンとこない可能性がある。この症状の場合の処方箋は、「もう一度、総合的なS/4 HANAのメリット分析を行うこと」である。

この処方箋について、本好氏はボトムアップとトップダウンの両方で攻略する必要があると訴える。ボトムアップで行うべきことは、パフォーマンス分析や新機能の検証などだ。例えば、データベースをHANAに変えれば、アーキテクチャが簡素化する可能性もある。また、経営陣が今までは見られなかったデータをより細かい粒度で見られるようになるかもしれない。

トップダウンでは、SAPの描く戦略やビジョンに経営陣がどのぐらい共鳴できるかを検証することだ。現在のSAPの投資重点領域は、AIおよび機械学習、IoT、アナリティクスに代表されるインテリジェントテクノロジーである。長期的に見ると、S/4 HANAでなければ使えない機能が出てくるであろう。そうなったときに、レガシーERPのままで良いのかどうかは疑問符が付く。

どうしても納得ができず、S/4 HANAに移行しないと決定した場合の処方箋は「サードパーティーサポートに移行すること」である。日本でも契約する企業が現れ始めており、引き受けられるベンダーもRimini Streetだけではない。「浮いた資金をデジタル変革に振り向ける例も散見され、単なるコスト削減の手段ではない使い方をする例も見られる」(本好氏)という。

ただし、コストに関しては上振れあるいは下振れする可能性もある。また、ごく短期間で移行できるというのは大きな誤解だ。ステークホルダーへの根回しを見込み、半年から1年程度の準備期間が必要になるという心づもりが必要である。

症状3:業務プロセス、機能、UIを変更できない

この症状は、現場が強い企業に多い。悩ましいのが不要なカスタマイズが温存され、投資の正当化が難しくなることだ。

処方箋としては、「データベースをHANAに移行し、インフラをクラウド化した上でS/4 HANAに移行する方法」「国内外の拠点で試験的にS/4 HANAを導入し、検証する方法」の2つの選択肢がある。

前者はもはや現実的な選択肢ではなくなりつつあり、これから考えるのであれば後者が主な選択肢だ。リスクを抑えて経験を積めるというメリットがある反面、本体の問題を先送りにすることは要注意である。

問題の先送りが望ましくないのは、人材不足の問題も関係する。本好氏は「2022年にかけて、SAP S/4 HANAの人材不足が続き、大規模プロジェクトの過半数ではパートナー候補の1社以上から辞退される」と予測する。

一部ではもうすでに起きているという声も聞かれ、かなり先までSAP人材の割り当てが終わっているパートナー企業もいるのだという。「行くと決めたら早く動くべき。迷っているならじっくり様子を見るべき」と本好氏は強調した。

症状4:そのまま再利用したいカスタマイズが多い

カスタマイズのリスクとしては、プロジェクト予算や期間の超過、負の資産の温存が挙げられる。この症状に当てはまる場合は、まずカスタマイズを減らすことができないかを検証するべきだ。処方箋としては、「カスタマイズやクラウドに対する自社の方針を踏まえ、適切な移行アプローチと展開モデルを選択すること」となる。

移行アプローチには、カスタマイズを残す「ブラウンフィールド」アプローチと負の遺産を一掃して作り直す「グリーンフィールド」アプローチがある。パートナーにRFPを出す前に、ある程度どちらにするかを決めておくことが必要だ。場合によっては、ブラウンフィールドとグリーンフィールドのメリットとデメリットをRFPで整理してもらってもいいかもしれない。「少なくともカスタマイズの見直しをしないまま強行することは避けるべきだ」と本好氏は警告した。

また、展開モデルの選択とは、オンプレミスとクラウドのどちらを選ぶかということだ。二者択一ではなく、マネージド環境でS/4 HANAを運用するハイブリッドモデルも選択できる。「展開モデルを選ぶときは、SAPの長期戦略と自社のシナリオを踏まえて最適なモデルを選ぶべき」(本好氏)だという。

適切な展開モデルを選択する/出典:ガートナー(2019年3月)

以上、4つの症状別に”処方箋”を示した本好氏は「方針を決めるときは熟慮を重ね、決めたら断行してほしい」と呼びかけ、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

もっと知りたい!こちらもオススメ

現在進行形でRPA導入プロジェクトに挑む楽天が率直に語った「実体験」

現在進行形でRPA導入プロジェクトに挑む楽天が率直に語った「実体験」

Blue Prismは2月27日、「RPA・デジタルワークフォースカンファレンス2019」を都内にて開催した。経営層はもとより、業務部門/IT部門、バックオフィス部門まで、RPA導入に関心を抱く全ての層を対象にした同カンファレンスでは、Blue Prismが考えるRPA活用のあるべき姿が語られたほか、RPA導入に取り組む企業の事例が多数紹介された。そのなかか…

関連リンク

この記事に興味を持ったら"いいね!"を Click
Facebook で IT Search+ の人気記事をお届けします

会員登録(無料)

注目の特集/連載
[解説動画] Googleアナリティクス分析&活用講座 - Webサイト改善の正しい考え方
[解説動画] 個人の業務効率化術 - 短時間集中はこうして作る
ミッションステートメント
教えてカナコさん! これならわかるAI入門
知りたい! カナコさん 皆で話そうAIのコト
対話システムをつくろう! Python超入門
Kubernetes入門
AWSで作るクラウドネイティブアプリケーションの基本
PowerShell Core入門
徹底研究! ハイブリッドクラウド
マイナビニュース スペシャルセミナー 講演レポート/当日講演資料 まとめ
セキュリティアワード特設ページ

一覧はこちら

今注目のIT用語の意味を事典でチェック!

一覧はこちら

ページの先頭に戻る