ビジネスのグローバル化が進む今、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化している。そうした変化に対し、迅速に対応していけるかどうかは、組織を構成する人材次第であることは間違いない。こと労働人口の低下が危ぶまれる日本においては、これまで以上に効率良く、戦略的に人材を管理・活用する必要に迫られている。

そこで注目を集めるのが、IT技術を活用して人事関連業務の効率化・高度化を図るHR Techである。積極的なHR Tech活用が進む欧米の後を追うかたちで、日本を含むAPACでも導入を検討する企業が増え始めた。その市場に大きな可能性を見いだしているのが、クラウド型人事ソリューション「Workday ヒューマン キャピタル マネジメント(Workday HCM)」を提供する米Workdayだ。

日本においては2015年に国内市場へ本格参入。2016年には日産自動車が全社規模で導入することを発表して話題を呼んだほか、2017年7月には日本IBMと共同で「Workday コンピテンスセンター」を開設し、導入コンサルティングサービスを強化するなど、精力的にビジネスを展開している。

日本のHR Tech市場が成長していく上で、課題はどこにあるのか。それに対し、Workdayはどのようにアプローチしていくのか。同社アジア太平洋地区および日本担当プレジデントを務める、デイビッド・ホープ氏にお話を伺った。

米Workday アジア太平洋地区および日本担当プレジデント デイビッド・ホープ氏

日本のHR Tech市場の「今」

――今、APACのHR Tech市場はどういう状況なのでしょうか。

ホープ氏:既にクラウドの導入が進んでおり、市場としての成熟度も高まってきています。我々も今こそAPACに投資すべきだと考え、グローバルなサポートセンターをニュージーランドに開設し、APAC全体をサポートできる体制を整えました。また、(APACで)直販に関わる人員も2倍に増やしています。

――そのなかで、日本をどう位置づけられていますか。

ホープ氏:日本の市場は非常に重要です。ガートナーの予測では、APACはHCM(Human Capital Management)だけに絞っても15億米ドルの規模になるとされています。さらに日本は、と言うと、15億米ドルの3分の1以上を占める見込みです。

個人的にも、日本市場は今まさにクラウドベースのHCMに取り組もうという機運が高まっているところであり、チャンスだと思っています。企業の既存システムは老朽化しつつあり、維持するのにもコストがかさんでいるのが実情です。日本でもクラウドの利用が主流になり始めていますし、さらにそれをグローバル化が牽引しています。企業にも、相応の変化が求められるでしょう。

とは言え、日本企業がイノベーションを取り入れるには時間がかかるので、粘り強く取り組んでいくことが必要だと思っています。

――具体的には、どういった部分で時間がかかるとお考えですか。

ホープ氏:日本企業の面白いところは、古く保守的な企業もあれば、世界レベルで見ても最先端を行っているような企業もあるところです。そうしたなかで、人材管理に関してはまだまだ終身雇用を守ろうとしている企業もあります。

しかし、日本の企業が終身雇用にとらわれている間に、海外の企業では従業員のパフォーマンス管理や有能な人材の探し方・生かし方に心を砕いているわけです。ビジネスにおいて、どちらが強い企業となるかは明白でしょう。

また、日本もグローバル化が進んでいますし、ミレニアル以降の若い世代は自分の可能性を広げ、柔軟に企業から企業へと渡り歩くことを求めます。そういった状況では、企業が従業員の力を引き出し、より良い経験を与えていくことが重要です。

そして、Workday HCMを使って従業員の力を引き出すことで、これまで裏方として管理に終始していた人事部門がもっと戦略的に経営に関わり、企業の成功に向けた発言権を持つことにつながります。これはまさに、当社が得意とする領域です。