スポーツの代表チームは、どんなデータを分析しているのか - Watson Summit 2017

[2017/06/07 12:30]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

データ分析

4月末に都内で開催された「IBM Watson Summit 2017 Tokyo」において「競技スポーツの現場におけるアナリティクス最新動向 - アナリティクスでスポーツをすべての人へ」と題するセッションが行われた。ショートトラックスピードスケートの五輪メダリストで筑波大学体育系准教授の河合 季信氏が行った講演の内容をお届けする。

マスターズ、テニスグランドスラム、五輪自転車競技のデータ活用例

日本IBM アナリティクス事業部 技術統括部長の大塚 知彦氏

講演に先立ち、日本IBM アナリティクス事業部 技術統括部長の大塚 知彦氏が登壇。アナリティクスやデータ活用の現場の課題について、「成果がなかなか出なかったり、誰のために分析しているかわからくなったりすることがよくあります。さまざまなツールが出てもどう使っていいか悩むこともあります。スポーツの現場で起こっているデータ活用からヒントをつかんでほしい」と挨拶した。

大塚氏によると、IBMがアナリティクスを進めるうえで重視しているのが「AAA」だという。「All」「Answer」「Accelerate」の頭文字をとったもので、“あらゆる”社員、場面、データから価値を享受すること、データから“答え”を自律的に出してくれること、アクションにつなげ、ビジネスを“加速”させることを指している。スポーツにおけるアナリティクスもこれと同様であり、実際にさまざまな成果を出してきた。

最近の例では、ゴルフのマスターズにおいて、2015年にはリアルタイムボールトラッキングを行い、2016年にはWatsonを活用してリアルタイムなトレンドの可視化を、2017年にはハイライト映像の自動編集などを行った。

テニスの4大大会では、予測分析ダッシュボード「スラムトラッカー」を提供し、データ解析からプレーヤーの意図や感情を可視化した。

自転車競技では、リオ五輪のチームパシュート競技で、米国チームをIBMのリアルタイム分析を使ったトレーニングが支えた。

IBMのスポーツにおける取り組み

スケート五輪メダリストが明かす3つの課題

とはいえ、競技スポーツにおいては、アナリティクス活用にはまだまだ課題が多いのが現状だ。そうした課題にどう対応しているのかについて、河合氏が自らの大学の研究成果を交えながら、展望を示した。

筑波大学 体育系 准教授の河合 季信氏。アルベールビルオリンピックでショートトラックスピードスケートの銅メダルを獲得している

河合氏は、1991年冬季ユニバーシアードで銅メダル(1000m、1500m)、1992年アルベールビルオリンピックで銅メダル(5000mリレー)を獲得し、日本のショートトラックスピードスケートの黄金期を支えた第一人者だ。現役引退後は、母校でもある筑波大学で、競技スポーツにおける情報戦略やパフォーマンス分析手法に関する研究を行っている。

現状の課題については、大きく3つを挙げた。1つ目は、トップスポーツでは試合シーズンが長くなっていること。2つ目はパフォーマンス分析が手作業に頼っていること。3つ目は、分析に精通した監督・コーチが一握りであることだ。

高橋/松友ペアは毎週試合、データ分析も短期化

1つ目の試合シーズンが長くなっていることは、アナリティクスのための測定・評価サイクルが短期化していることを指している。

競技スポーツでは、試合の結果を受けて、次の試合に向けた戦略を立て、戦略に沿ったトレーニングを実施していく。いままでは、オフシーズンの期間が長いために、こうした測定・評価サイクルは年に数回行うだけでよかった。

例えば、オリンピックに向けた伝統的なトレーニング計画は、本番に合わせて1年前から調子を上げていくためのスケジュールを組んでいた。しかし、現在は、オリンピック本番で有利な立場を作るために本番直前までにポイントを獲得し、ランキングを上げていく必要がある。

「オリンピック本番に向けてランキングレースを行うため、オリンピックレースなどと呼ばれています。

例えば、リオオリンピックで金メダルを獲得したバドミントンの高橋/松友ペアのケースでは1年前から毎週のように試合を行い本番直前まで試合を行っていました。ランキングに基づいて組み合わせシードが決まるためです。

こうした状況では、従来のような長期の測定・評価サイクルは通用せず、トレーニングと試合を何回も繰り返す中で、小さなサイクルを回していく必要がでてきます」(河合氏)

高橋/松友ペアのスケジュール。赤が試合、緑が強化合宿、黄色がオリンピック

モニタリングでわかるウサイン・ボルトの凄さ

アナリティクスの活用という視点でみると、オフシーズンにMRIのような機器で入念な検査を行って、コンディションを計測・評価するのではなく、トレーニングと試合の中で、運動負荷や身体コンディション、心理的状態、戦術分析といったことを、細かく連続的に行っていく必要が出てきたという。

それを支えるのがモニタリングだ。

「モニタリングはどこを改善し、どんなトレーニングをするかに直結します。陸上男子100メートルの速度の変化を見ると、ウサイン・ボルト選手は70~80メートルに毎秒12メートル弱のピークをむかえます。一方、日本人選手はいずれも速度のピークが早めにきます。速度の上がり方も落ち方も個人の特性によって異なります。

モニタリングの結果と個人の特性により、ピークをどこにもってくるか、速度を落とさないようにどうトレーニングするかがそれぞれ異なります」(河合氏)

こうした視点でパフォーマンス分析を行っていくことが大事だという。

陸上男子100m 主な選手のスピードの変化

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競技スポーツにおいては、アナリティクス活用にはまだまだ課題が多いのが現状だ。そうした課題にどう対応しているのかについて、河合氏が自らの大学の研究成果を交えながら、展望を示した。

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