Appleは、2015年にリリースしたOS X El CapitanとiOS 9で、標準アプリとして提供してきた「メモ」アプリの強化に乗り出している。iCloudによって各デバイス間で同期する機能は搭載されてきたが、アプリそのものの強化という面では長らく放置されてきた。

競合も多いこの分野において、Appleは何を狙っているのだろうか。

今回のテーマ、「Notes」。iOS 9で大幅に進化を遂げているが、その背景にある事情とはなにか。ちなみに日本向けには、「ノート」ではなく「メモ」と訳されている

筆者はMac、iPhone、iPadで「Evernote」を使用している。わりと初期から有料ユーザーとして登録し、言葉の断片からコンビニのレシートのコピーまで、片っ端からEvernoteにため込んできた。筆者の中でのコンセプトは「とりあえず、Evernoteへ」である。

例えば、この原稿のあらすじとなるアウトラインは、iPhoneのEvernoteから、タイトルと箇条書きで保存しておき、そこに関連する資料のURLやテキスト・画像のコピーを貼り付け、アウトラインを掘り下げて、愛用しているテキストエディタ「iA Writer」で仕上げている。Evernoteでは、複数のノートを1つに統合することができるため、断片的に集めた情報を1つにまとめる際にも便利だ。

Evernoteは、外部サービスとの連携も積極的で、例えばWebサービス「Pocket」でクリップしたニュースを、「IFTTT」を介して自動的にEvernoteに保存することもできる。また、最近のヒットとしては「ScanSnap Cloud」。イメージスキャナ「ScanSnap」をMacやiPhoneと接続していなくても、Wi-Fiを介してスタンドアロンで読み取りを行い、Evernote等に書類の種類ごとに自動的に保管できる仕組みだ。

非常に便利な環境を築くことができているEvernoteだが、それでも完全ではない。

写真やWordやPowerPoint、PDFといった文書を貼り付けるとサムネイルが展開されるが、URLリンクはそうはいかない。また地図を貼り付けたい場合はGoogleマップなどの地図をスクリーンキャプチャで切り出して、画像として貼り付けなければならない。

また、テキストエディタとしてのカスタマイズ性がないため、「とりあえずEvernoteへ」は可能でも、「すべてをEvernoteで」とはならない。つまり、まだまだ他のアプリにも、チャンスがある、ということだ。