10月25日~11月4日まで、衛星測位利用推進センター(SPAC)とソフトバンクテレコム主催による準天頂衛星初号機「みちびき」を利用した位置情報の測位精度についての実証実験が、鹿児島県・種子島で行われた。今回はこの実験に参加する機会を得たので、レポートしよう。

この実証実験は、経済産業省の2013年度「準天頂衛星システム利用実証事業」の補助金を受けて実施するもので、ソフトバンクモバイルが提供する位置情報を利用した情報配信サービスアプリ「ふらっと案内」と、「みちびき」の位置測位情報、さらに屋内でも位置情報を送信することができるIMES(Indoor Messaging System:GPS衛星と同等の信号を用いる屋内測位方式)を利用した測位実験だ。

実証実験のポスター

さらに、「みちびき」経由でショートメッセージを送信するL1-SAIF補強信号の受信実験を行うことで、位置情報受信技術の向上を図るとともに、正確な位置情報を観光などに活用する実用化に向けた可能性を探る。

東日本大震災直後は、携帯電話やメールといった通信インフラが利用できなくなった。そこで、今回の実証実験では、衛星を経由したメッセージ送信の実験も行われた

実際にスタンプラリー参加者に送られたメッセージ

今回は3回目の実証実験(11月2日~4日)に参加する機会を得たので、レポートしよう。

その前に、準天頂衛星「みちびき」について、簡単に説明する。

「みちびき」とは

準天頂衛星初号機「みちびき」が、種子島宇宙センターよりH-IIAロケット18号機によって打ち上げられ打ち上げられたのは、今から約3年前の2010年9月11日のことだ

準天頂衛星初号機「みちびき」(出典:JAXA)

測位衛星により位置を特定するためには、最低4機の人工衛星から信号を受信する必要がある。各衛星から送信される衛星の位置および信号を送信した時刻の情報と、受信時刻との差から衛星までの距離を算出し、自分の位置(緯度、経度、高度、時刻)を求める。しかし、日本国内の都市部や山間地では、高い建物、山などが障害となって4機の人工衛星からの測位信号が届かないことがあり、測位結果に大きな誤差が生じることがあった。

準天頂衛星システムは、「準天頂軌道」という日本のほぼ天頂(真上)を通る軌道を持つ人工衛星を複数機組み合わせた日本独自の衛星システムで、現在、広く利用されているGPSを補完する役割がある。準天頂衛星システムでは、4機のうち常に1機が日本の真上にいることで山や高層ビルに影響されず、全国をほぼ100%カバーする高精度の衛星測位サービスの提供を可能とする。さらには補強信号の送信等により、これまでの数十m程度の誤差だったGPSに対し、約1m程度と測位精度の大幅な向上が見込める。

みちびきの軌道(黄色の線)と受信可能エリア(出典:JAXA)

実際に東京・新宿でのみちびきの実証実験では、測位可能率がGPS衛星のみの28.5%から70%まで向上したという。

準天頂衛星が日本の天頂付近に常に1機以上見えるようにするためには、最低3機の衛星が必要で、準天頂衛星初号機「みちびき」により準天頂衛星システムの第1段階として技術実証・利用実証を行う。そして、その結果を評価した上で3機の準天頂衛星によるシステム実証を実施する第2段階へ進むことになっている。残りの3機は2018年までに打ち上げられる予定だ。

次は、実証実験の体験レポートだ。