種子島で行われた「種子島ランドマーク実証実験」は、一般募集したモニター計300名が2泊3日にわたって準天頂衛星「みちびき」の位置測位情報を活用して、種子島全域を観光した。
実験は、10月25日~27日、10月26日~28日、11月2日~4日の3回に分けて行われ、参加者はスマートフォンアプリ「ふらっと案内」の機能を利用したデジタルスタンプラリーに参加して、種子島の観光スポットを巡った。
今回のスタンプラリーは、Xbox 360、PlayStation向けの種子島を舞台としたアドベンチャーゲーム「ROBOTICS;NOTES」(MAGES.)とのコラボレーションとなっており、コース上に「みちびき」の正確な位置情報を活用した「ハイブリッド測位AR(拡張現実)」のポイントも用意され、「ふらっと案内」で案内されたチェックポイントに行くと、「ROBOTICS;NOTES」のキャラクター達が自身のスマートデバイスに現れる最先端AR技術を体験できる。
実験参加者は種子島総合開発センター(鉄砲館)で実験方法について1時間ほど説明を受けたあと、2泊3日の予定でスタンプラリーを行った。
説明を行ったSPAC Dプロジェクト推進担当部長 および ソフトバンクモバイル 情報システム本部 システムサービス事業統括部 新規事業準備室 観光立国・地域活性化推進担当 室長 永瀬淳氏。永瀬氏が持っているのは、スタンプラリーの成績優秀者に送られる記念品。実はこれ、H2Bロケットのフェアリング。実際に利用され、海から回収されたというかなり貴重なもの |
スタンプラリーは南北57km、東西12kmの種子島全島を使って行われるため、ほとんどの参加者は車を使って移動した。まわる順番は自由だが、次のチェックポイントまで車で20分以上かかることもある。
参加者には、横50mm×縦80mmの「みちびき」の電波を受信できるレシーバー(受信機)が貸与され、これをスマートフォンとBluetoothで接続して位置情報を取得する。この情報をソフトバンクモバイルが提供するスマートフォン向けアプリ「ふらっと案内」(無料)で利用して、デジタルスタンプラリーを行うのだ。
「ふらっと案内」は、現在地に近い観光スポットや散策コースのほか、飲食店、病院、コンビニ、映画館など、便利なお役立ち情報を提供してくれるアプリだ。
今回の実証実験では、アプリ内に地域別の10個のスタンプラリーコースが用意され、参加者は好きなコースを選んでラリーに参加する。各コースには6~14のチェックポイントがあり、すべて制覇する70スタンプとなるが、コース間で重複するチェックポイントもあり、実際のチェックポイントはもう少し少ない。なお、コースは複数選択できるので、1つのチェックポイントで複数スタンプを取得することも可能だ。1回目の実証実験の参加者の中には、すべてのポイントをまわって完全制覇した人もいたようだ。これは、主催者側もまったく予想していなかったことだという。
「ふらっと案内」のスタンプラリーコース。種子島観光ルート、北部中部観光ルート、東シナ海ルートなど10コースを用意。各コースの欄に示された距離はもっとも近いポイントまでの距離 |
アプリ内の各チェックポイントの情報。こちらは「みちびき」の受信機ではなく、iPhoneのGPSを利用して測位しているので、衛星の名前がGPSになっている |
スタンプラリーは、すべて「ふらっと案内」のアプリ内で行われるデジタル式だ。参加者がチェックポイントに近づくと、画面にスタンプ獲得ボタンが表示され、そのボタンを押すとスタンプが獲得できる仕組みだ。
ARのキャラクターが登場するポイントでは、ARアイコンを押してARのモードに切り替え、スマートフォンのカメラをかざしながら歩きまわり、キャラクターが現れるポイントを探す。ポイントから遠い場合にはヒントが表示されるほか、近いと画面左上にレーダーが表示され、ARキャラが現れる位置を示してくれる。
スタンプやARキャラクタを獲得する難易度はチェックポイントによって大きく異なる。範囲が数十メートルのところもあれば、数メートルの場所もある。近すぎても離れすぎてもだめで、角度も大きく影響する。実際筆者も雄龍・雌龍の岩で、15分程度歩きまわったが、結局ARポイントは発見できなかった。
永瀬氏によれば、実はこれも狙いなのだという。誰でも簡単に取得できてしまうと、ゲームとして面白さがなくなるほか、完成させたときの達成感も薄れるためだ。不完全燃焼のまま帰路につき、再び種子島を訪れてもらうといったことも期待しているようだ。
屋内ではIMES
今回は衛星の電波状態の悪い屋内において、IMESを利用した実験も行われた。IMES(Indoor Messaging System)は、屋内において「みちびき」の役割を果たす装置で、緯度・経度のほかフロアー数などを送信する。受信機は同じものが利用できるので、利用者は意識することなく屋外では「みちびき」、屋内ではIMESの電波をキャッチし、自動で切り替えはながら測位する。今回の実証実験で利用されたIMESは、日立産機システム製のもので、大きさは無線LANのAP程度の大きさ(71mm×125mm×38mm)。実際にIMESが設置されたのは、種子島総合開発センターと宇宙科学技術館の2カ所だ。永瀬氏によれば、今回使用した受信機は、屋外と屋内で切り替え速度が世界一スムーズなのだという。実証実験では、屋内・屋外シームレス測位精度向上もテーマになっている。