iOS 7では、UIのデザインが大きく変わる。その印象はシンプルで明快、ビビッドな色使いもあり新鮮な印象を受ける。iOS 6までのUIがリアルさを意識した「質感主義」――Skeuomorphism(スキュアモーフィズム)と評されることが多い―― だとすれば、iOS 7は「感覚主義」とでもいえるだろう。デモ機のiPhone 5がホワイトモデルだったことも手伝ってか、ポップな印象すら受けるほどだ。
立体的/重層的な構造へと進化
しかし、いくつかのレポートで見かけた「フラット」という表現には、多少の違和感を覚える。確かに、アイコンに使われている色はパステル調で色数が少なく、上部に光処理が施されたiOS 6までのアイコンと比較すると平面的な印象はあるが、それはアイコンやボタン類のみを見たときの話。実際には、半透明の「レイヤー」を複数枚重ね合わせそれを見下ろすような構造であり、むしろ立体的/重層的な構造へと進化したと言っていい。
基調講演で放映されたデモ映像を例に説明してみよう。たとえば、「天気」の画面。文字ベースの天気予報が表示される下には、雪が降るアニメーションを確認できるが、これは「文字」と「アニメーション」のレイヤーが重ねて表示されているためだ。親子の写真(壁紙)の上にフォルダを表示するシーンも、半透明なところが重なった部分がぼかし処理されていることで、2枚のレイヤーの存在を感じさせる。
反対にいえば、この「レイヤー」の使いこなしこそが、iOS 7におけるアプリ開発の重要なエッセンスとなりうる。もちろん、審査の折にはアプリとしての機能や完成度も従来どおりチェックされるだろうが、iOSとの一貫性・親和性も暗に求められるわけで、いきおいAppleの要求基準である「iOSヒューマンインターフェイスガイドライン」が重要になるということだ。