いよいよ10Gイーサネットが普及期に

10ギガビットイーサネット(以下、10Gイーサネット)というと、「データセンタや一部の大規模な企業ネットワークで使うもの」という印象を持っている方が多いだろう。
しかし、10Gイーサネットはそろそろデータセンタや一部の企業ネットワークだけではなく、SMB(Small Medium Business)環境でも当たり前のように使える普及期に入っていくと思われる。その理由は、ようやく10GBASE-Tが実用的になってきているからだ。

10Gイーサネットにもいろんな規格があるが、光ファイバを利用する規格(10GBASE-R)では光インタフェースのコストがどうしても高くなってしまう。同軸ケーブルを利用する規格(10GBASE-CX/SFP+ Direct Attached Cable)のインタフェースは比較的安価であるものの、ケーブルの最大長が短いという問題がある。このような問題を解消するために、比較的安価なインタフェースであり、扱いやすいツイストペアケーブルを利用する10GBASE-Tの規格が標準化されている。10GBASE-Tは、伝送媒体としてカテゴリ6A以上のツイストペアケーブルを利用し、最大のケーブル長は1000BASE-Tと同様100メートルだ。1000BASE-Tはカテゴリ5e以上のツイストペアケーブルなので、ケーブル自体は敷設し直す必要がある環境がほとんどだと思われるが、10GBASE-Tでは1000BASE-Tの環境と同等の機器の配置を実現できることになる。
10GBASE-Tの規格は、2006年に標準化されていて、製品も2008年ごろから登場している。ところが、これまでは消費電力が大きすぎるため、10GBASE-Tのスイッチはポートの集積度をあまり高められず、その結果、コストが高いものだった。10GBASE-Tはお世辞にも、普及しているとは言いがたい状況だった。それが現在では、半導体プロセスの微細化に伴い消費電力の問題が解消し、コストも下がり10GBASE-Tは、実用的なものになってきている。また、サーバ向けのマザーボードにはオンボードで10GBASE-Tを搭載しているものも出てきているので、わざわざ後からネットワークインタフェースを追加しなくても済む。

以上のように、10GBASE-Tを利用することで、

  • 高コストにならない
  • 既存のギガビットイーサネットと同等の機器の配置

の10Gイーサネット環境を構築できるようになっているのが現状だ。

ネットギア10GBASE-Tスイッチのラインナップ

そして、SMB環境向けに10Gイーサネットの普及を後押しするような以下の製品がネットギアから提供されている。

表1 ネットギア 10GBASE-T対応スイッチ

型番 ポート数 価格 備考
XS708E 8×10GBASE-T(1×SFP+) 199,500円 ProSafe Plusシリーズ
XS712T 12×10GBASE-T(2×SFP+) 462,000円 スマートスイッチシリーズ
M7100-24X 24×10GBASE-T(4×SFP+) 1,575,000円 マネージスイッチシリーズ

※各製品の製品情報URL
XS708E
http://www.netgear.jp/products/details/XS708E.html
XS712T
http://www.netgear.jp/products/details/XS712T.html
M7100-24X
http://www.netgear.jp/products/details/M7100.html

XS708E

XS712T

M7100-24X

XS708Eは、ProSafe Plusシリーズに分類されるモデルである。ProSafe Plusは、VLANやリンクアグリゲーション、QoSといった企業ネットワークに必要な機能をシンプルな設定で利用できるシリーズだ。XS708Eには10GBASE-Tのポートが8ポートあり、20万円をきる価格となっている。サーバやストレージ製品のネットワークインタフェースを手軽に10Gイーサネットにアップグレードしたいという場合に最適なスイッチになるだろう。
XS712Tはスマートスイッチシリーズに分類されるモデルだ。スマートスイッチは、専用アプリケーションではなくWebブラウザで設定や管理を柔軟に行うことができる。XS712Tは12ポートの10GBASE-Tポートを搭載している。また、プロテクトポートなどのセキュリティ機能も充実している。
そして、M7100-24Xは、マネージスイッチシリーズのモデルだ。マネージスイッチは、簡易的なレイヤ3スイッチとしてスタティックルーティングに対応しVLAN間ルーティングも可能となっている。M7100-24Xは、SFP+とのコンボポート4ポートを含む24ポートの10GBASE-Tを備えている。SFP+ポートで既存の光ファイバの10Gイーサネットとの接続にも使える。多くの10GBASE-Tポートを持つので、トラフィックが集中する場所に配置する集約スイッチとしての役割が適している。また、M7100-24XはiSCSIの通信を自動的に検出して、優先的に転送するiSCSIフローアクセラレーション機能もあるので、IP-SAN用のスイッチとしても最適だ。

ここでネットギアの10BASE-T対応スイッチを利用した簡単な10Gイーサネット環境へのアップグレードの例について考えてみよう。 図の【既存のギガビットイーサネット環境】では、L2SWやL3SW、サーバ、クライアントがすべて1000BASE-Tで接続されている。このようなネットワーク構成では、複数のクライアントが同時にサーバにアクセスすると、サーバのネットワークインタフェースがボトルネックになってしまう可能性が高い。また、サーバまでの経路上でもボトルネックが発生する可能性がある。リンクアグリゲーションで複数のギガビットイーサネットリンクをまとめれば、ボトルネックを解消することは可能だ。しかし、リンクアグリゲーションを行うためには、その分、余分にポート数やケーブルが必要となり限界がある。
そこで、サーバを接続するL2SWをXS708Eにアップグレードすれば、サーバのネットワークインタフェースのボトルネックを解消して、複数のクライアントがサーバに同時にアクセスしても、サーバのインタフェースはボトルネックとならない。さらに、一歩進めてL3SWをM7100-24Xにアップグレードして、サーバまでの経路上のボトルネックを部分的に解消できる。そして、将来的にクライアントが接続されているL2SWもXS708Eにアップグレードすれば、より高速な通信ができるネットワークに拡張できる。

図1 10Gイーサネットへのアップグレード例

ProSafe Plus XS708Eを触ってみた

ここまで紹介してきたネットギアの10GBASE-T対応スイッチのうち、ProSafe Plus XS708Eに触れる機会があったので、設定についても簡単に解説しよう。
ProSafe PlusシリーズはVLANやリンクアグリゲーションなどを利用しないのであれば、全く設定する必要はない。配線して電源さえ入れればよい。

VLANやリンクアグリゲーションなどを利用したいときは、専用の管理ツールである「ProSafe Plus 設定ユーティリティ」から必要な設定を行う。管理ツールでの設定は、直感的で特にマニュアルがなくてもたいていの設定はすぐにできる。たとえば、リンクアグリゲーションの設定では、次の2つの手順だけだ。

  • リンクアグリゲーションIDの有効化
  • リンクアグリゲーションIDに含めるポートの指定

以下のスクリーンショットは、リンクアグリゲーションID1にポート5とポート6をまとめている様子を表している。

図2 リンクアグリゲーションの設定 その1

図3 リンクアグリゲーションの設定 その2

その他のVLANやQoSの設定においても、特に迷うようなことはないだろう。これまでのProSafe Plusスイッチと同じく非常に手軽に管理できる。

まとめ

10Gイーサネットは10GBASE-T対応の製品によって、近い将来、当たり前になっていくだろう。かつて「コストが高い」とか「ケーブル長が1000BASE-Tよりも短い」といった問題で、10Gイーサネットの導入をあきらめていたネットワーク管理者の方も多いだろう。そういったネットワーク管理者の方は、ネットギアの10GBASE-T対応スイッチの導入を検討してみてはいかがだろうか。