小松電機産業が、クラウド型の上下水道遠隔管理システム「やくも水神」の新製品として、「やくも水神Gシリーズ」を発表。iPadやiPhone、Android端末を利用する環境を整えた。また、同システムを水平展開し、同社の主力製品のひとつである門番Gシリーズの販売管理システムとして活用することで、同製品の販売拡大を狙う。

松江市内の小松電機産業本社

やくも水神は、2000年に第1号製品を発売。NTTドコモのDoPa網を利用した上下水道の遠隔管理制御システムとして、これまでに国内38都府県190自治体、4,600施設に導入した実績を持つ。水源地、マンホールポンプ、水門、消融雪装置、流量観測地点などに監視端末をおき、これをNTTドコモのFOMA網を用いて24時間遠隔管理。水位の異常上昇、機器故障などの緊急時にはメールで複数の担当者に一斉送信する仕組みとなっている。

2003年にはプログラミング言語にRubyを採用したほか、松江市内の同社本社へのサーバでの管理に加え、東京・代々木のNTTドコモのドコモ代々木ビルにもデータセンターを設置。東西2拠点でのクラウド運用体制を構築している。「自治体の水関連施設管理は、従来型の中央監視装置の維持更新費負担や、市町村合併に伴い複雑化した監視システムの統合、嘱託監視員や専門職員の高齢化と退職、災害対策の重点化などが課題となっている。クラウド型のやくも水神シリーズの活用により、コスト削減をはじめとする諸課題の解決が図れる」という。クラウド環境で提供していることから、市町村合併などに伴う管理端末の拡張などにも、低コストで柔軟に対応できる点も、導入した自治体側からは高い評価を得ている。

新製品のやくも水神Gシリーズでは、従来からのPCと携帯電話を利用した管理に加え、iPad、iPhoneのほか、ソニー・エリクソンのXperiaなどのAndoroid OS搭載モバイル端末からも管理を可能とした。

さらに、Google Mapを利用することで、指定したエリアの水関連設備を地図上に表示し、上水道、下水道など水関連施設を一元的に管理できることから、これまでにはできなかった上下水をまとめた「水のエリア管理」が可能になるとしている。水道施設における機器の運転状況を時系列で確認し、水位、センサー計測値などの変動をグラフ化して見ることができるのに加え、遠隔地から機器の運転時の電流値の変化を確認することで、機器が正常運転していているかどうかを確認できるほか、日報、月報、年報、警報履歴といった日常管理に必要な各種帳表の利用を可能としている。

施設管理を行う多目的管理システムの各製品

iPadを端末として利用。Google Mapを採用し、多種多様な施設を同一システム上で管理できる

小松電機産業の小松昭夫社長

また、モバイル端末を活用することで、「これまでは、数多くの紙の資料を持ち歩いたり、PCで確認するということが多かったが、iPadやスマートフォンを現場に持ち込むことが容易になり、その場で情報を確認したりといった活用や、オフィスに戻って入力しなくてはならなかった作業が、現場で処理できるようになり、作業効率を高めることができる」という。

すでに複数の自治体から引き合いがあり、現在11%の自治体における導入シェアを、3年後には30%にまで引き上げる計画でいる。

小松電機産業の小松昭夫社長は、「やくも水神シリーズは、2003年にRubyを採用したことで、大幅な進化を遂げることができた。今回のやくも水神Gシリーズによって、iPadに対応を図ったことで、さらに大きな進化を遂げることができる。すぐに起動するというiPadの強みを生かすことで、現場での活用がさらに促進されることになるだろう」と、iPadの利用による導入促進に期待を寄せる。

一方、同社では、やくも水神をベースにした社内向け販売管理システム管理システム「門番ウェブ管理ツール」の運用を開始する。同社の主力製品であるシートシャッター門番シリーズ向けの販売管理およびメンテナンス管理システムとして活用。より戦略的な営業提案、保守提案につなげる考えだ。「門番シリーズはこれまでに12万台強の導入実績があるが、これらの稼働状況などがすべて把握できているわけではない。門番ウェブ管理ツールの導入によって、現場における稼働状況などを掌握し、保守を強化したり、複合提案を行ったりといったことにつなげたい」としている。門番シリーズの最新版である門番Gシリーズではグローバル展開を視野に入れており、その際にも、クラウドコンピューティングの強みを生かしたい考えだ。

今後、同システムの社内活用を通じて実績を蓄積し、将来的には外販も検討していくという。

シートシャッターの門番Gシリーズ。用途に応じてさまざまなサイズを用意している