現代のエデンの園で、禁断の果実を貪ることは許されるのだろうか。世界最大のソフトウェアメーカー米Microsoftの本社がある米ワシントン州レドモンドでは、ライバル製品のiPhoneを使用する従業員と、それに対して苦々しい思いを持つ上層部らとの間で日々激論が続いているという。その様子を米Wall Street Journalが13日(現地時間)にレポートしている。ある内部関係者のデータによれば、同社メールシステムにiPhoneでアクセスしているユーザー数は10,000人近くに上り、その割合は全世界の従業員の10%に当たるという。

繰り返されるiPhone問題

この人気商品を巡るライバル企業の複雑な心境については、WSJの「Forbidden Fruit: Microsoft Workers Hide Their iPhones」という記事に詳しく記されている。昨年2009年9月、本社近くのシアトルのスタジアムで開催された全社ミーティングで、米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏がiPhoneを使用する従業員の手から端末を取り上げ、それを地面に置いて踏み潰そうとしていたというニュースが話題となった。

だがこの件に限らず、MicrosoftにおけるiPhoneの存在はたびたび問題になっているという。前述のようにMicrosoft社内に10,000人近いユーザーがいる現状、すでに同本社キャンパスではさまざまな場所でiPhoneが利用されている様子を確認できる。一方で、問題の製品をリリースしている米Appleの本社では、iPhone以上に他社の製品を利用しているケースはまれということで、非常に対照的だ。

これを他のケースで例えれば、コカコーラ配送員がペプシコーラを飲みながらトラックを運転している様子を写真に収められるようなものだろう。後ろめたい気持ちがあるのか、上級職の従業員によってはカバーケースを偽装して、iPhoneに見えないような状態でこっそり利用しているケースもあるという。またBallmer氏との年1回のミーティングがセットされているある従業員は「誰が呼び出しをかけていようが、この間だけは絶対に電話に出ない」とコメントしている。

Microsoftも自社製品であるWindows Mobileの利用を喚起するためか、同社製OSを搭載した携帯電話以外の利用に関して、通話料などはすべて個人持ちにする社内通達を出したことが、昨年6月ごろに大きく報じられている。同社ではコスト削減策の一環としているが、ライバル製品排除が狙いの1つであったことはいうまでもないだろう。