AppleがiPadで採用したプロセッサ「A4」については、これまでにも何度もその全容を知ろうという試みが各方面で行われており、小誌も最も新しい記事では「秘密がないのが秘密? - Apple A4アーキテクチャの謎とは」というタイトルでA4の最新情報について紹介している。

A4の正体がARM Cortex-A8のシングルコアにPowerVR SGXとスリム化したI/Oを搭載したSoCであることはほぼ既定事実となりつつあるが、一方でAppleが最近になり申請した特許の数々から、A4が内包する数々の新テクニックや設計思想に触れた分析も出てきている。

先の記事で、Ars TechnicaのJon Stokes氏が周囲からの情報を基に予測したA4の特徴は下記のものとなる。

  • ARM Cortex-A8 1GHzのシングルコア

  • PowerVR SGX GPU

  • 30ピン用ドックコネクタと一部メモリインタフェース以外のI/Oを排除

  • 特別な加工のない標準仕様からスリム化されたCortex-A8のSoC

言い換えれば何の変哲もないARMプロセッサの派生品ということになるが、プロセッサの余計なブロックを省き、なるべく省スペースで低コスト、そしてパフォーマンスよりも省電力を優先した設計であることが読み取れる。ある意味で「Appleがプロセッサに必要なものは、Apple自身がよく分かっている」というApple COOのTim Cook氏の言葉通りのものだ。

だが、BNETの記事「Apple's A4 Chip: Patent Papers Suggest Secrets in Silicon」でErik Sherman氏が指摘するところによれば、実際にはA4にはより多くの工夫が凝らされており、それらは最近同社が申請した9つのプロセッサ関連の特許とPA Semiの買収との関連性から垣間見ることができるという。

Sherman氏はStokes氏の「AppleがPA Semi買収からA4発表まで新コア設計の時間はなかった」という意見には同意しているものの、PA Semiが得意としていたいくつかのテクニックはすでにA4に導入されている可能性があると指摘する。その根拠として挙げているのが下記の9つの特許だ。

プロセッサアーキテクチャに関する特許申請だが、これらを利用して最適化が行われたプロセッサが将来登場する可能性の他、A4内ですでに利用されている可能性があるとSherman氏は指摘する。そしてこれら申請用紙には、いくつか昨今のプロセッサアーキテクチャに関する共通の記述があるという。その記述とは、プロセッサの並列化に関するものだ。