日本アイ・ビー・エム 代表取締役社長 橋本孝之氏

日本アイ・ビー・エムは2月15日、2010年の方針に関する「社長プレスセミナー」を開催した。同セミナーでは、同社の代表取締役社長を務める橋本孝之氏が、2009年の成果に加え、2010年の方針とその実現のための具体策について説明を行った。

同氏は初めに、「年初からずっと顧客を訪問してきたが、昨年に比べて、一歩踏み込んだ予測を行うなど、前向きな企業が増えていると感じた。また、経営者の交代が多かったのも特徴的。経営者が交代することで、こんなにも企業は変わることができるのかと思った」と述べた。

2009年の同社のスローガンは「礎―"次代への礎を築く年に"」であり、方針は「新規ビジネス拡大とパートナーシップ強化」、「お客様への価値創造をリード」、「自由闊達な企業文化の醸成」、「良き企業市民としての社会責任」という4つの柱から構成される。

同氏は、「2009年は、当社の売上の3分の1を占めるアウトソーシングの更新と新規契約が堅調だった。数字を挙げると、大規模案件が6件、新規案件が5件あった。また、短期成果型オファリングも新規契約が250件と好調だった。7月まではコスト削減などのリターンが多いものを目的とした契約が多かったが、後半はビジネスの成長を目的とした契約が増えた」と、2009年の成果を説明した。

また自由闊達な文化な企業文化を醸成するために、クライアントファーストを達成した社員を表彰する「バリュープログラム」を全社に展開したが、全社員の30%が同プログラムにより表彰されたという。「上司が自分を見てくれているということがわかり、社員のモチベーションの向上につながったようだ」

日本アイ・ビー・エムの2009年の方針と成果

対する2010年のスローガンは「真のTrusted Partnerになる年に」である。方針を支える柱は2009年と同じだ。「2009年で達成された成果を2010年につなげたい」と同氏。

このスローガンの意味について、「新たな価値が生まれるなかで顧客を支援していくには、長期にわたって顧客をサポートしていく必要がある。また、スキルも重要。これらを満たすのが真のパートナーだ」と、同氏は説明した。

方針を構成する4つの項目のうち、「自由闊達な企業文化の醸成」を最優先していると同氏は語った。「社員が満足していなければ、お客様に十分なサービスを提供することはできない。だから、私は企業文化の醸成に力を入れている」

2010年はこの項目について、「リーダーシップの発揮」、「スキルの強化」、「ワーク/ライフ・インテグレーションの推進」というテーマの下、具現化していく。リーダーシップの発揮としては、若手社員の手を借りて新たなビジョンを作った。スキルを強化するために、これまで社員は「インダストリー」、「ソリューション」、「IBMのテクノロジー」の3分野のいずれかに属していたが、今年はこれらをすべてカバーしながら、1つの分野を深堀りするような形で、社員教育を強化していくという。

新たな価値をもたらすソリューションとしては、「クラウドコンピューティング」と「BAO(Business Analytics and Optimization)」、「Smarter Planetの具現化」に注力する。同社は今年1月、クラウドに関する新組織を設立しCTOを任命するとともに、BAOにかかわる体制を強化した。同社が掲げるビジョン「Smarter Planet」を具現化するために、業界特化型のソリューションフレームワークを開発するとともに、企業を超え都市を対象とする「Smarter Cities」の取り組みを推進する。

加えて、パートナーシップを強化するために、営業部門におけるインダストリーに特化した能力、事業開発の顧客支援体制を強化する。「真のパートナーとなるには、顧客のビジネスを熟知していなければならない。これまでインダストリーは5セクターで分けていたところ、1月に8セクターにした。最終的には、インダストリーを13の分類に整理し、これらに基づきソリューションを提供していきたい」

顧客との長期的な関係を構築するために、営業部門のスタッフについて、「15%を"攻め"の狩猟民族から"種を蒔いて育てる"農耕民族にシフトした」と同氏。

日本アイ・ビー・エムの2010年の方針

「クラウド」、「Smarter Planet」は昨年はどちらかと言えば、言葉が先に走っていた感があったが、今年はもっと導入する企業が増え、実用的なテクノロジーとして成熟していくことになるだろう。Smarter Planetの国内事例はすでに30件出ているという。また、「今年前半は景気後退の影響から企業のIT投資も回復しないが、7月以降は回復するだろう」と話す同氏。日本のIT業界を牽引する同社には、停滞している日本市場を打開するきっかけ作りをしてもらいたい。