2022年4月25日(現地時間)、アメリカの起業家イーロン・マスク氏によるTwitter買収のニュースが駆け巡りました。

マスク氏は電気自動車メーカー「テスラ」や航空宇宙メーカー「SpaceX」の創設者で、世界一の富豪とも呼ばれています。マスク氏は総額440億ドルでTwitterの株式を100%取得し、2022年中には買収手続きを完了させる予定です。この買収によってTwitterは上場廃止となり、非公開企業になります。

  • Twitterが買収されることでどのように変わっていくのか注目です。買収総額の440億ドルは、日本円にして約5.7兆円です(2022年4月末の為替レートによる)

買収後の展望について、マスク氏はTwitterの改善に意欲を見せています。これまで「Twitterは言論の自由が守られていない」と主張を繰り返してきたマスク氏は、アルゴリズムをオープンソース化することによって、Twitterが明らかにしてこなかった内部処理を誰でも見られるようにすると述べています。そして、ツイートの内容について規制を緩和し、アカウント凍結の基準についても見直しを考えているとのこと。また、ツイート公開後の編集機能も検討していると述べています。

オープン化や高機能化はTwitterの発展をもたらしそうにも思えますが、マスク氏の主張する「言論の自由」によって日本は独自のダメージを受ける可能性があるのです。

若者のユーザーが多い日本

Twitterがアメリカでサービスを開始したのは2006年。SNSとしては古くから使われている定番サービスです。しかし日本では、若者からの支持が高いという特徴があります。

NTTドコモ モバイル社会研究所が2022年2月に行った調査によると、Twitterの利用率(月に1回以上利用)は10代~20代女性で8割以上、10代~20代男性で7割以上と、ほかの年齢層よりもかなり高くなっています。投稿率についても同様に、10代~20代が高いという結果が出ています。

また、TesTeeが2021年10月に発表した「SNS利用に関する調査【2021年版】」でも、10代~20代の男女が利用しているSNSとして、LINE、InstagramとともにTwitterが上位の3位以内にランクインしています。

  • 10代、20代の男女がよく利用するSNS(出典:TesTee)(出典:TesTee

一方、マスク氏が在住するアメリカの10代は、あまりTwitterを利用していません。アメリカの独立系投資銀行、PIPER SANDLERが2022年4月に発表した調査によると、アメリカの10代が気に入っていると答えたSNSの1位は「TikTok(33%)」、2位は「SnapChat(31%)」、3位は「Instagram(22%)」となっており、Twitterの名前は出てきていません。

  • 「A collaborative consumer insights project」から一部抜粋(出典:Piper Sandler

つまり、マスク氏が考えるTwitterは、日本のように若者が多用しているサービスではないと思われます。

「言論の自由」でどこまで緩和されるのか

SNSでは、誰もが自由に発信できます。匿名で無責任に発信する人もいるため、デマやフェイクニュースが飛び交うこともあります。また、嫌がらせや誹謗中傷などで傷つき、時には命を絶つ人もいます。

そこで、Twitterを含めた各SNSは投稿を規制する動きを進めてきました。AIと人力による2重チェック体制を敷き、不適切な投稿を非表示にし、利用規約に違反するアカウントの凍結を行っています。Twitterに関しては、長く待ち望まれているツイートの編集機能に関して慎重な姿勢を保ち、実装していません。こうして、誰もが安心して利用できる健全なプラットフォーム作りを業界全体で目指してきました。

しかしマスク氏は「言論の自由」を守るために、Twitterの規制緩和を行う方向性を示しています。この緩和がどの程度なのかは現段階ではわかりませんが、特に若者が多く利用している日本においては、今後大きなリスクを抱えるプラットフォームになるかもしれません。Twitterがどのような変貌を遂げていくのか、そして日本の若者はどのように接していくべきなのか、大人の役割として注目していく必要があります。